「少子化に耐えられる社会」はどうすれば実現するか
少子化対策が叫ばれるようになって、かれこれ30年になります。最初に少子化が問題視されたのはなんと今から29年も前の1990年のことでした。僕くらいの年齢の人はよく覚えていると思うのですが、この年には「1.57ショック」というのがあったのですね。1.57ショックとは、前年(つまりちょうど30年前の1989年)の合計特殊出生率が1.57と、丙午(ひのえうま)という特殊要因により過去最低だった1966年の合計特殊出生率1.58を下回った衝撃を的確に捉えた表言葉でした。
現在の特殊合計出生率はやや回復して1.44人ですが、人口を維持するのに必要な2.1からは程遠く、日本の少子化は当分の間止まらないであろうことが予想されます。
昨年の人口減少が44万人となかなかショッキングな数字になったことも受けて、政府もついに少子化対策に本腰を入れ始めた印象を受けますが、あまりに遅きに失したとした言いようがありません。
なお、日本の育児制度って世間で言われるほど立ち遅れているわけではありません。産休は非常に長いですし、保育園はなかなか入れないという難しい問題はあるものの、かなり安価に抑えられています。
しかし、それでも子供は増えないのです。もちろん制度的にはまだまだ色々と改善の余地があるとは思うのですが、多分ずれているのはそこではなく、発想そのものが大きく間違っているのだろうと思うのです。
こちら、元衆議院議員で元厚生省児童家庭局企画課長の大泉博子氏が書いた記事です。政府の少子化対策の実情がよくわかって非常に興味深いです。
少子化対策はなぜ効果をあげられないのか ―問題の検証と今後の展望―
結婚した人は子供を産んでいる
なお、出生率の話になると必ずこの「合計特殊出世率」というものが用いられるのですが、これは、未婚、既婚に関わらず、1人の女性が生涯に産むことが見込まれる子供の数を示す指標です。具体的には母数を出産可能年齢(15~49歳)の女性とし、各年齢ごとの出生率を足し合わせ、一人の女性が生涯、何人の子供を産むのかを推計しています。
つまり、現在の1.44という数字には、まだ結婚していない女性も、今後結婚する予定がない人も全て含まれているのです。
では、すでに結婚している人の出生率はどんな具合かというと、実は1000人あたり79.4人と、今の方が1980年よりも高いのです。こちらは、有配偶出生率のグラフですが、こちらをみてみると、結婚している女性の出生率は、1990年以降、ほぼ一貫して上昇し続けていることがわかります。
21世紀政策研究所「実効性のある少子化対策のあり方」より。
つまり、問題は結婚しない男女がどんどん増えていることなのであって、女性が子供を産まなくなったことではないのです。無論、育児をしやすい環境を整えていくことは重要ですが、そもそも人々が結婚しなくなった以上、未婚のままでも子育てをしやすい環境を作るか、結婚しやすい状況を作っていかない限り、少子化問題は解決しないのです。
ただ思うに、僕はこれ、日本の政治家は解決できないと思うのですね。政治家が心配するのは選挙の得票だけですが、生まれたばかりの赤ん坊が投票するのは18年後のことだからです。なので、残念ながらこのままズルズルと少子化が継続するのだろうな、と予想しています。
少子化対策が根本的に間違っている
ただ世界を眺めてみると、少子化のトレンドは間違いなく世界中で始まっています。無論、現在でも人口の爆発的な増加で悩んでいる国もたくさんありますが、その一方ですでに合計特殊出生率が人口維持ラインの2.1を下回っている国が87カ国もあるのです。
なお、世界人口がどの程度まで上昇するかは学者によって見解がまちまちですが、今後30年で減少に転じるという説を唱える学者も少なくありません。世界人口が50億人から60億人になるのには12年かかったのに対し、60億人から70億人に達するのには13年かかっており、人口増加率は明らかに鈍化しつつあるからです。また、1960年から2009年の間に、メキシコの合計特殊出生率は7.3人から2.4人までに下がりました。インドでも6.0から2.5人にまで低下しています。ブラジルも6.15から1.9まで下がり、すでに人口維持ラインを割っています。
つまり少子化は世界的なトレンドであって、おそらく避けようがないのです。ですから少子化対策の定義を根本から見直す時期に来ているのです。「少子化対策=子供を増やす政策」という位置付けはやめにして「少子化対策=子供が少なくても耐えるる社会を作る政策」と、定義しなおすべきなのです。
冷静に考えてみても、この地球上にはあまりにも人間が多すぎなのです。ですから、減っていくのは決して悪いことではありません。ただあまりに急激に減ると、社会保障制度などが破綻してしまって国が立ちいかなくなってしまうことが問題なのです。
そこでこの記事ではどうやったら子供が少なくても平和に回っていく社会を築けるのかを考えてみたいと思います。
※この文章は単品で100円ですが、1000円でこのマガジンを購入すると、1ヶ月20本くらい読めるので1本50円です。
子供が少ないことに耐えられる社会
ここから先は
¥ 100
もしこの記事を気に入っていただけましたら、サポートしていただけると嬉しいです!