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冬晴れの『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』


こんにちは、睫です。


このたび、市民劇『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』が無事に閉幕となりました。

お足元の悪い中ご来場くださったみなさま、少しでも関心を持ってくださったみなさま、本当にありがとうございました。

今回の舞台について、少しだけお話させて頂きたく、このエントリを書いています。


宣伝美術は今回も六感デザインさん


市民劇『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』(通称:雨夏)は、今年の5月7日に行われた、一般公募オーディションから始まりました。

睫は普段、福井県の「演衆やむなし」という劇団でお芝居をしています。

今回の市民劇では、演出、制作、照明といったスタッフのところにやむなしの最高最高最高なスタッフ陣が招集されていて、最初、個人的にはやむなしパッケージを市民劇に輸出するとか、やむなしパッケージで市民劇を作るとか。なんか、そういうイメージを持っていました。

ただ、約半年の稽古期間を経て、クリスマスイブとクリスマス当日に迎えた本番を思い返すと、そこにあったのはやむなしとは違う、儚いながらきちんとした、たったひとつのカンパニーでした。


私もやむなしとは違うかたちのパズルのピースとしてそのカンパニーにハマっていたし、私の凸凹にハマって隣に並ぶ誰かも、普段とはもちろん違う。それはこの舞台に関わっていた全員がおそらくはきっとそうで、とても新鮮で、とても面白い経験になりました。


ほんと〜に素敵だった舞台


今年の睫といえば、4月に『何処ぞの二人』の演出に呼んでもらい、5月には『今日、雨が止みました。』にて戯曲の翻案を務めました。


どちらもすごく素敵で、楽しくて、やりがいのあるチャレンジだったのですが、実のところ、もう、ほんと、役者をやりたい〜〜〜〜〜〜〜!!!という気持ちがすごく強くなって。笑

今回の市民劇の企画と、オーディションがあるという話を聞いたとき、もう、絶対に応募しよう!やるぞ!やるぞやるぞやるぞ!の気持ちでした。

そんな結果として、1年の締めくくりに舞台に立つことができました。
2022年はどんな年だったかと聞かれたら、迷いなく「いろんな人と、いろんなことができた1年」と答えるんですが、そんな1年の最後がこの舞台だったのは、すごく幸せなことだと思います。


えい、えい、おー(本番ではやらなかったね)


オーディションを経て、6月に、キャスト全員集合の顔合わせがありました。


集まったメンバーには、「はじめまして」の方はもちろん、よく知ってる人、ちょっとだけ話したことのある人、名前だけ知ってる人、知り合いの知り合い、みたいな、私目線で、本当に、いろんな人がいました。

全員顔馴染みだとか、逆に全員はじめまして、みたいな経験はあっても、バラ付きのある場所は初めてで、なんだかソワソワしたのを覚えています。

そして、人数が多かったのもあって、とにかく、名前を覚えるのが一苦労でした。毎回毎回稽古に来られる人ばかりでもないし、全員と一通り絡むわけでもない。

出番の多い、役に名前のある人はどうにかなっても、私を含む、『他ジュリエット役』は、少なくとも私の記憶力ではほぼ絶望的でした。

そんなときにあだ名ゼッケンシステムが導入され、みんなの距離感がギュッと縮まりました。

やっぱりみんなも名前を覚えることに苦労してたのかと安心しつつ、『名前(呼び名)が分かることの安心感』って凄かったです。


ゼッケンは〜大事〜坂東は〜英二〜


ちなみにみんなの距離が縮まったなと感じたタイミングはふたつあって、ひとつが『ゼッケンを身に付けた日』で、ふたつめは『ゼッケンを付けなくなった日』でした。

確か11月の後半辺りから、みんなゼッケンを付けなくなりました。

衣装選びが始まったというのがひとつの理由だったとは思うんですが、ゼッケンを外した状態でも、自然と、各自が任意で設定したニックネームで呼び合うようになっていました。

この辺からグッと、ひとつのチーム然としてきた印象があります。


黒マントでも誰が誰だか分かる!


ところで、『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』は清水邦夫の戯曲です。

清水邦夫の本は一見難解なのに、声に出してみるとポップで、動いてみればユーモラスで、ところどころズシンと重く、日本海側らしい湿り気もあるくせに、夢みたいに美しい、すごい戯曲です。


11月20日に宣伝のため出演者揃ってイベントに出演し、そこでちょっとしたお芝居とダンスを披露する機会がありました。

宣伝のためのお芝居……ということで、そこで使う台本は睫が書かせて頂きました。今回の活動の中で清水邦夫の二次創作ができるとはさすがに思っていなかったので、すごく楽しく書きました。

そして、これは『今日、雨が止みました。』で柴さんの戯曲を翻案した時にも思ったのですが、誰かの文章を模倣して戯曲を書くと、自分で何かを書くときには絶対に出てこないような一文が自分の中から飛び出してきて、いつもギクリとさせられます。

自分の中の、自分でも知らない隠し扉を知らぬ間に開かれて、そこから透明な布を引っ張り出されるような感覚というか。まだまだ成長できる予感かもしれません。

飛び出したものがどこかいかないように、強く握りしめていたい、です。握力、13くらいしかないけど……。


楽しかった ╲宣伝イベント╱


そして、イベントが終わったあとは、もう、濁流のようなスケジュールで稽古をして。

直前に大雪の警報が出たり、なんたり、いろいろありましたが、どうにか無事に、幕を開けることができました。

全然話変わるんですけど、私、お化粧をすると、全然別人だとよく言われるんですが、自分ではあんまりそう思ってないんですね。たぶんそれは変化の過程をずっと見てるからで、たぶん他のことでも、過程をきちんと追っていたら、『突然の変化に驚く』ことってあんまりないんじゃないかなと思うんです。

でも中埜さんの演出ってなんか、ほんとに、急に、全てが変わるんです。昨日までこうだったことをやっぱりこうして、ってなるってことじゃなくて、なんか、急に、訳わかんないんですけど、なんか、気づいたらできてるんですよね。

たまにしか稽古に行かなかったわけでもないし、ちゃんと過程は追ってたはずだし、なんなら途中、自分がどこにいるのか、どこへ進めばいいのか、なにも分からなくなることだってあるのに、気づいたら目的地に着いてる。


私は毎回それに驚かされて、今回は特に、自分が舞台の上のひとつであったので、「ほあー」と思ってばかりでした。

いつも考えもしないほど美しい場所に連れてきてくれる中埜さんですが、今回は特に、中埜マジックを痛感させられました。
私のまわりには魔法使いみたいな人ばかりいて、いつもとても心強いのです。


今回の完全なフルメンバー✌️


私、たぶん、いわゆるホールの舞台に立ったのは、高校生ぶりとかでした。

ただ、高校生のときは、県大会のためにそういう舞台に立っていたので、ホールでやるのに適した芝居をやっていたかと言われるとそうではありません。


ただ、今回の雨夏は間違いなくホールに適した、ホールでやるべき芝居でした。
舞台装置も、照明も(照明が本当マジ信じられないくらい凄かったと思う)、衣装も、なにもかもとっても豪華で、目にも鮮やかな、そんなお芝居になっていたと思います。


ドーン


なにより、なにより!踊りました!!ダンス!

振付は柴田桃子先生♡
稽古の最中、ずっとハッピーで、前向きで、ハッキリしていて、そして最高にカッコイイ、素敵な素敵な先生でした。

ジュリエッツ(ジュリエットの複数形)として、ほんとに、ほんとにお世話になりました。


人生で、ラインダンスをする日が来るなんて、そんなことを考えたこと、ある?!!?

私はダンスを習ってたとかはほぼないんですが(本当に小さい頃にバレエはやってた)、ほんと〜〜に楽しかった。楽しくて楽しくて楽しかった。

不思議なもので、あの瞬間だけは、自分がなにか底知れぬパワーを持っていて、それを見ている人に伝えることができるというようなことを、心から信じられる気がしました。

反省点がないわけじゃないんです。ぐらついたし、タイミング間違えたし、気をつけようと思ってたことは全部飛んでっちゃったし。
でも、とにかく新鮮で最高な経験で、あの空気感と、自分の中の感情を、味わえてよかったなって。そんなふうに思っています。


ジュリエッツ構成員(の一部)と桃子先生


あとは、今回もまたヘアメイクのあたりをいろいろやらせてもらってました。
おおよそのジュリエッツについて、程度の差はありますが、大体は睫の手ないし声が入っています。

以前の、『さよならの書き方』についてのエントリの中でも書いたんですが、ヘアはさておきメイクに関して言えば、まあ、その人のまぶたに赤が乗っていようがオレンジが乗っていようが、実際、そんなに大きな差はありません。

もちろん、色味以外の部分で、目が大きく見えたり、鼻が高く見えたり、唇がぷっくり見えたり、そういう、スッピンとのバランスの変化を出すことはできますが、それだけなら、それだけのメイクをしたっていいんですよね。

でも今回はそんなことは度外視して、できる限り色味もわけて、まぶたに置くラメの大きさから考えて、一人一人が『石楠花少女歌劇団』の一員として、自信を持って舞台に立てればいいな、ということを念頭に、それぞれが1番素敵に見えるプランを立てました。

お化粧は人のテンションをあっさり変えてしまう、変えることのできる、そういう魔法だと思っています。
ゲネプロ入れて計5回、今回も無事に、魔法使いになるための研鑽を積めました。


ハーフツインしてたょ


ただ、本番日は両日とも、本当に本当に、笑っちゃうぐらい時間がなくて!!!

私ひとりだったら絶対に間に合わなかったんですが、おこげとごろちゃんという、かわいいかわいい2人がお手伝いしてくれました。どうにかこうにか、無事に全員が舞台に上がることができたのは、本当に2人のおかげです。

2人とも私とはほぼ一回り年齢が違うんですけど、頭と要領と記憶力が良くて、誰に対しても気遣いもできる、本当に最高のメンバーでした。
今回ばかりはパーフェクトなメイク班だったと思います。

本当に本当にありがとうね♡



ほんとはね、オーディションの結果が届いたとき、もう、ほんとうにほんとうにほんとうに悔しい気持ちがあったりもしたよ。

なんかいつもだったら「あー、ダメだったかー」くらいなのに、今回は名前のある、台詞がこう、ドッとある役に選ばれなかったのが、なんかもう、ほんと〜〜〜に悔しくて。

当時はわりとずっといじいじしてました。

でも、蓋を開けて終わってみたら、それもよかったんじゃない?って、そう思うことができるようになりました。

出来上がった舞台について、私は外からは見られないけれど、たぶん、雨夏はいい出来だったと思っています。

で、その『いい出来』の中には、私が「他ジュリエット」というポジションだったこと、本番前に自分以外のヘアメイクをやったりする余裕があったこと、みたいなことが、ある程度は含まれてるんじゃないかなって、雨夏は、そんな気づきを私にくれました。


最初の方で『私はやむなしとは違うかたちのパズルのピースとしてそのカンパニーにハマっていたし、』って書いたんですけど、そもそも、私が自分のことをパズルのピースだと思えたのは、今回が初めてだったように思います。

今まではトランプの1式の中に入ってる真っ白な予備カードとか、なんか、そういうところに自分の意識を置いてしまう、悪い癖があって。
でも今回はそうじゃないって、初めて、そんなふうに考えることができました。



千秋楽の日、空は綺麗な冬晴れでした。

私たちはもう日常に戻っていて、これまで通りの毎日を、これまで通りの顔をして過ごしています。

でも、あのキラキラした世界の中に、間違いなく自分がいたこと。そうして、自分はそこに、いなければならない存在であったこと。

そんな記憶が、どこかで世界を変える大切な魔法になるように、あたたかい毛布にくるめておこうと思います。

もちろん、観に来て下さったみなさまの中にも、このお芝居が、そんなふうに残っていてくれたらいいな。いいな。いいなーーー。


さてさて、次はどんな場所に行けるのでしょう。

私は私のそんなことが楽しみだし、ここまで読んで下さった方がいらっしゃったら、睫と一緒に楽しみにして頂けたら、私はとっても嬉しいです。

またどこかで、きっと会いましょうね。

それでは皆々様、何卒よいお年を!

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