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よいアニメーテッドMVをじわじわ紹介する ドリュー・タカハシ🌤Prince『Raspberry Beret』

宣伝☄️ 2019年12月1日(日)発売(web販売中)の批評誌『エクリヲ vol.11』「ミュージック×ヴィデオ」特集で、アニメーテッドMVについて寄稿しています。
その執筆時に色々なアニメーテッドMVを見たので、自分が知らなかったり、あらためてよいな〜と思ったりしたものを紹介したいと思います。エクリヲ本誌とは関係ないので、この文章があれでもvol.11への関心は維持されますよう…

PCでMVを見続けるのって結構つらいというか、途中で別のことに気を取られたり、スクロールバーを触りたくなったりするものだけれど、そんな気持ちが微塵もよぎらなかったMVが、Prince『Raspberry Beret』(1985)だ。


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序盤からコンスタントに、何そのヴィジュアルという映像が繰り広げられ、そのバラバラなイメージが全体の音頭を取る手拍子でまとめあげられていき、ついに引きの画で渾然一体と化す。

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一体なにが始まるのか全然わからないけれど、人の動きとリズムの一致が気持ちよくて最高だ。

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人心を鷲掴みにする演出


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プリンスのスーツの青がブルーバックで抜けてるのもかっこいい。とにかくずっとかっこいいのだが、じゃあいったいこのアニメーションを作ったのは誰なんだ、という話になる。


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それはドリュー・タカハシ。彼はディズニー・チャンネルやMTVから仕事を請けていたコロッサル・ピクチャーズが誇る日系アニメーターだ。

燃えているスーツ姿の男性がMTVを宣伝するやつや、


あの『イーオン・フラックス』にも参加している。つまりレジェンドだ。


youtubeに大量にある、ミッキーの一人称視点のIDシリーズもほとんど彼が手がけていたようで、こんなものばかり作ってたら、燃える男のプロモーション映像も作るだろうという気持ちになる。

FPV(First Person View)ならぬ、MMV(Mickey Mouse View)


そんなレジェンドが勤めていた、コロッサル・ピクチャーズの会社紹介ビデオは、80sのサークルノリでかなりリラックスできる。


さて、Princeの『Raspberry Beret』に戻ると、この曲は、ラズベリー色のベレー帽をかぶっていた女性との逢瀬についてのもので、それが特定の女性というよりも、そういう女性たち(街で出会ってそして別れるような関係性)の存在に思いを馳せるという、対象となる主体がわりに広い歌である。

プリンスと彼のバンド、ザ・レボリューションズを中心とした雑多なコスチュームの皆で、その友達の友達的な「ラズベリー色のベレー帽をかぶっていた女性」の存在を慈しむ賛美歌を歌うみたいな結構独特な時代感でもある。

しかし特定の名前も忘れられ、そういう人がいたな、という存在感のみとなっていく人について、集団の記憶を混ぜ合わせながらヴィジュアルを作っていくようなアニメーション映像になっている。空とプリンスが溶け合い、ブルーバックをこんな風に扱う自由さを思い出させてくれる、よいアニメーテッドMVである。

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🌤Prince『Raspberry Beret』(1985)


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追記:ドリュー・タカハシがインタビューを受けている「The Animators」では、1982年にサンフランシスコで活動していたアニメーターを公共TVのPBSが特集したもので、ヴィンセント・コリンや、サリー・クラックシャンクも取り上げられている。


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