転職したいけど退職できない友人の話
突然ですが私にはちょっとした特技、というか、暴走モードがあります。
人生の節目に立ってたり、何かを悩んでる友人の相談に乗ったりする機会が多いのですが、話を聞いてるうちに本人よりも鮮明に未来の状況や可能性というのが頭の中にぶわわわわ、と具体的に想像することができちゃうんですね。
なので、頭の中で「いや、もうそれ絶対いいことないじゃん」という結果が見えてしまうと、結構な勢いで正論や自論を捲し立てて、相手を諭しにかかってしまう、というまさに暴走機関車モード。
もし、私が周りにそんな奴いたら徐々に疎遠になるか、そいつがいない飲み会とかで「大体あいつなんで偉そうなん?」ぐらいはグダを巻いてしまいそうなんですが、私の周りの友人たちはそんな私を「本当にありがたい」と慕ってくれる人間ができた子が多くて、本当にわたしは周りに恵まれているのです。涙が出る。
まあ、それは置いといて。
そんな暴走機関車相談室に、先日中学生の頃からの親友のEさんが「職場ですごく嫌なことがあったから話を聞いてほしい」と依頼がありまして。私にはなかなか理解しがたい内容だったのですが、もしかすると世の中ってこういう状況の人の方が多いのだろうか…と思って、今回まとめてみることにいたします。
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前提条件として、詳細は避けますが、Eさんはとある国家資格を持っており、それに関連する仕事をしています。
月給はサラリーマンの平均より少ないぐらい。有休は基本的に消化できない。いつも人が少なくて多忙。
そんな環境の中でEさん自身、将来は別の業種で起業したいと考えていて、そのために貯金も兼ねて働いていたことは知っていたのですが、「経営者にあたる人物にきつめのパワハラを受けたので、もうこれを理由に退職しちゃおうかな」と考えているとのこと。
ずっと転職を考えていたことは勿論知ってるので、私も「いいんじゃない?給料安いし。別にやりたいことあるんだから、辞めちゃえよ。いつ辞めんの?」と聞いたら「うーん、再来年の春かな?」と。
え?
再来年???
再来年の春つった???
再来年の春って、お前この状況でオリンピック迎えんの????は??????
暴走機関車に燃料が入れられた瞬間である。
「え? なんで再来年??」
「同僚に再来年って言っちゃったし」
「再来年って言っちゃったって、『やっぱり今年やめるわ』って言えばいい話じゃん?」
「でも、ちゃんとみんなが『私が辞めるのは仕方ない』って思ってくれる環境で辞めたいんだけど」
「???」
彼女の言いたいことを要約すると、
「今の職場は好きだし、同僚たちとは仲がいいので、『Eさんに非はないし、辞めても仕方ない』と悪い印象を持たれない辞め方をしたい。あと会社の規則で、来年の春に辞めるには今年の7月までに退職希望を伝えておく必要があり、それも鑑みると仕事がひと段落する再来年の春だと思っている。退職後も失業保険とか、いくらでもお金をなんとかする方法あるのはわかるけど、ボーナスほしいから、それまでは働きたい」
ということらしい。暴走機関車は大いに吠えた。
「そもそもEさんにはいつでも会社を辞める権利があるし、『7月までに申告しないと辞められない環境』は普通じゃないんだよ。あと、パワハラ受けて辞めた人に対して『あの人は急に辞めた』って悪い印象持つ人が仲良い人な訳ないじゃん。そこで縁切れる相手なんだよ。そう思ったらどう思われてもよくないか? あとパワハラを理由に辞めようと思ってて、同僚のことも考えるなら尚のこと今すぐ辞めるべきなんだよ。Eさんと同じような立場にいながら、同じように規則を理由に辞められない人にとって前例作ってくれるってすごい大きな偉業ですよ??」
と、ざっくりこのようなことを考えうる最悪のパターンケースとともに伝えてあげたところ、Eさんは大いに私に感謝をし、近々パワハラを受けた経営者と話し合いを持って、来年の春までに退社する覚悟を持てたようだった。
その時に彼女が言っていた「目が覚めた」という言葉は非常に私の印象に残った。
Eさん曰く、日々忙しく、またお金がない環境にいるとどんどん思考が停止していき、「辞めたいけど、この先ただでさえない収入がなくなって、本当にやっていけるのだろうか」「未来のあるかわからない次の仕事を探すよりも、今この環境でがんばった方が自分の為にいいのではないか」と考えるようになっていた、と言っていた。
Eさんは、とてもしっかり者の(勉強ができるとかそういう意味でなく人として)かしこい子だ。私にとって深く信頼のおける友人の一人だし、彼女自身も2年ぐらい前から、次の夢に向かって着実に歩を進めている最中だったはずなのだ。パワハラについても詳細は避けるが、「すぐには何が起きたか理解ができないぐらい頭が真っ白になった」レベルに傷付いたのだ。
なのに彼女は「お金がない」という漠然とした不安感と「職場の人間関係に波風を立てたくない」という心配心から、1年以上もの大切な時間をその職場に明け渡そうとしていたのである。そして、それを私という第三者に(かなり激しく)指摘されるまで気づかなかったのだ。
ある意味私はこの時初めてブラック企業と呼ばれるものの恐ろしさに気づけたのかもしれない。仕事が忙しいということは、それだけ職場にいる時間が長いということで、そこで育まれる仲間意識や責任感が場合によってはこんな恐ろしい形で足かせになる事もあるのだ。
Eさんは早速、前から気になっていた会社に履歴書を送ってみたそうだ。返事はまだだが、「明らかに一歩進むことが出来てるし、これから先のことを考えるのが気楽になった」と連絡があった。
頑張り屋さんな彼女の未来が幸せなものでありますように。