とあるオーダースーツ屋の社長が、「変な金具ついてるやつ」とディスる靴
ビットローファーヒストリア
1953年のイタリアはフィレンツェ。
馬にかませるハミから着想を得たホースビットを配した革靴は、ルーツが馬具屋のラグジュアリーブランド、“グッチ”の手によって生まれました。
創業者グッチオ・グッチ氏が亡くなった年でもあります。
そんな1953年は、“グッチ”にとってメモリアルイヤーであり、1953を掲げるビットローファーのコレクションを今もリリースしています。
1985年にはメトロポリタン美術館で永久所蔵され、工芸品だった革靴を美術品へと昇華させたのが、老舗革靴企業ではなくメゾン系の“グッチ”だったのが、なんとも言いがたいところです。
ホースビットローファーは、“グッチ”がオリジンだというのはまぎれもない事実で、他ブランドのビットローファーではけっして“グッチ”に勝てない。
『二番煎じ』じゃないかもしれない、あのシューズファクトリーを除いては…
“グッチ”のビットローファー、じつは靴の製作を“エンツォ ボナフェ”が裏で手がけていたといわれています。
エンツォ・ボナフェ氏が、ボローニャで自身の名を冠した工房をスタートさせたのは1963年。
“グッチ”のビットローファーが誕生した10年後?
当時の“ア テストーニ”の就業規則に、副業禁止の条項があったかどうか?は知るよしもありませんが、サラリーマンだったエンツォ・ボナフェ氏が今でいうところの複業として、“グッチ”の依頼を受けたのかもしれませんし、かかわったのが1stモデルではなかったのかもしれません。
もしくは、この話自体がガセネタorそもそもホースビットローファーのデビューが1953年ではない。
つじつまが合わないのは、ひとまず置いといて…
そういわれてみると、『0→1』をつくった本家“グッチ”のビットローファーと、製作にたずさわった(とされる)元祖“エンツォ ボナフェ”のビットローファーは、おなじイタリア産というのを差し引いても雰囲気が似ている気がします。
その、唯一“グッチ”と肩をならべることができる可能性がある靴が、ヤフオクに現れたのです。
買い物の神さま
元祖“エンツォ ボナフェ”のビットローファーART.2695のことは、暖かくなってくるとどこかしらのメディアが記事にしてきます。
これは、アパレル関係者だけでなく一般ユーザーでもおなじことで…
ある雑記ブロガー(といっても、記事数は5つしかありませんが)は、『買い物レビュー』で“ビームス”別注ART.2695のことを、ハンドソーンウェルテッド製法と記しておりますが、
いくら“ビームス”でも製法までは口出しをしておらず、別注のビットローファーも履き口からのぞくと、ハンドソーンにはないステッチが見えると思うのです。
https://www.beams.co.jp/item/beamsf/shoes/21320169302/
“エンツォ ボナフェ”はトゥボラーレ製法、“グッチ”はマッケイ製法と、イタリアならではソールの返りがいいつくり方を採用しているので、『修行いらず』で履けるはずです(耐久性と、トレードオフになりますが…)。
そんな“エンツォ ボナフェ”ART.2695、アッパー革の種類や色は数あれど、その仕様はゴールドビットにレザーソールと相場は決まっていますが、ヤフオクに出品されていたコイツは…なんと!シルバービットに“ビブラム”製のタンクソールを装着していたのです。
以前なら、ラバーソールのローファーになんの魅力も感じずスルーしていたはずなのに、なぜか?意識しはじめたこのタイミングでのタンクソールART.2695。
これ、神さまが買うように誘導してるでしょ。
定価が10万円を超えてくるノーマルの、“”エンツォ ボナフェART.2695がヤフオクに出品された場合、かるく外履きされている自称「目立った傷や汚れなし」のレベルで即決7万数千円での出品が多いなか、この靴は未使用で6万円台(保存袋しか付属してないからかも)と、なにか見えない力で仕組まれたような展開は、神さまが「よかけん、買え」とつぶやいているとしか思えません。
とはいえ、見たことがないこの“エンツォ ボナフェ”の亜種ART.2695って、実際ホンモノなん?
《つづく》