気まぐれ兄貴のジャイアニズムに、否応なし従わされる弟の気持ちが分かるか?
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革靴の『履き初め』は、靴とのイニシアチブを賭けた争いだと思っております。
グッドイヤーウェルト製法の靴は、インソールとアウトソールの間に詰めているコルク(“スコッチグレイン”のようなスポンジを詰めている場合は別)が履いているうちに沈みこみ、またアッパーの革も若干伸びることによって、履いているうちに靴のサイズが少々大きく感じるようになることがあります。
それでグッドイヤーの靴は、わざとサイズがキツめの新靴を履きながら時間をかけて自分の足に合わせていく工程を踏むのですが、この馴染んだときに足回りがどれくらい大きくなるのか?は、試し履きの時点では分かりません。
ブランドに精通している店員のアドバイスを基に、その履いた感覚でサイズやウィズ(選択肢があるのなら)を上げるも下げるも決められるので、試着した方がいいのは百も承知。
でもそれは、実店舗がある可能性が高い東京や大阪などの大都市近郊に住んでいる人間のポジショントークなのです。
1度、沖縄に住んでみたらいい…
靴を買うためだけに、わざわざ飛行機に乗りますか?って話です。
大都市に住んでいるわけではなく移動時間がもったいないので、これまでの経験と勘を頼りに、ネットで「今はなんとかガマンできそう」なサイズをギリギリ攻めて選ぶようにしています。
もちろん、予想を外すこともありますよ。
基本、アッパーの革がまだ硬い状態で外羽根式の紐靴でもなければ、たいていは開かない履き口にファーストコンタクトの『足入れの儀』でビビります。
「本当に足が入るのか?」
革靴の調教
足が甲高の典型的日本人なので、欧米産のモンクストラップを履くのに一苦労します。
甲の革が引っ張られて、パッツンパッツンになるのです。
予定どおりキツくて羽根の付け根に変なシワが入ったのですが、ストラップを留めるのは以前登場した“J.M.ウエストン”のダービーバックルよりもラクでした。
あの靴はバックル部分が革の直づけで、伸びないうえにベルトの穴も1つしかなかったので、最初にデリケートクリームでベルトを伸ばさなければ話になりませんでした。
それに比べたら、ピカデリーは同じモンクストラップでもバックル付け根はゴムだし、ピンホールは3つあるので助かりました。
73ラストはウエストが絞ってあるショートノーズ気味で、『捨て寸』が短いとはいえサイズさえ合えば履きにくくもなく、アーモンドトゥのシルエットは古くさくもありません。
グッドイヤーウェルト製法でレザーソールの新靴を持っているなら、靴をひっくり返してソール面を上にして、大工の棟梁がカンナの歯の出具合を目視しているみたいにソールを見てみてください。
靴の両端に比べて、真ん中が少し盛り上がっていませんか?
そういう靴は多いのですが、ピカデリーの盛り上がり方はハンパなく、『プリンプリン物語』アクタ共和国ルチ将軍の後頭部並みに張っています。
靴を床に置くと、中央部が盛り上がっているためにぐらぐらして安定しません。
アウトソールが張っているということは、コルクがたくさん入っているということです。
コルクがたくさん入っているということは、沈みこむ数値も大きいということです。
そして、こういう靴は面ではなく点で地面と接地しているので、つま先やかかとと共に真ん中のソール減りが早い。
コルク増量キャンペーンは、正直いりません。
予想が的中すれば、1日1時間1週間も室内を歩き回ると、最初はキツかった靴も革が柔らかくなって、ずいぶんと足に馴染んできます。
自分の足をストレッチャー代わりに使うということです(ストレッチャーじゃ、コルクを沈み込ませるほどの負荷はかけられない)。
チャーチ>チーニー
1873年 “チャーチーズ”創業
1886年 “ジョセフ チーニー”創業
1966年 “チャーチ”が“チーニー”買収。
1999年 “プラダ”が“チャーチ”買収。
2011年 チャーチ一族が“チーニー”買収。
こういったややこしい経緯から、同じイギリスはノーザンプトンの“チーニー”は、“チャーチ”の弟分的ポジションで見られています。
なんか、名前も似てるし…
“チャーチ”の純正シューツリーはイギリスの州名を冠していて、これまでのサフォークは廃盤になって今はノーフォークが現行品になっていると思われます。
こういうところのパブで、真っ昼間から外の景色を「ぼーっ」と眺めながら、シングルモルトでもグダグダ飲んで過ごせたらサイコーでしょうね。
堕落した生活がおくりたい…
そんなノーフォークですが、1万2千円程度で買えるその名が付いたシューツリーの形状が、どうも好きになれません。
「どうしたものか…」
そういえば、英国靴御用達の“ダスコ”シューツリーを“J.エドワーズ&サン”(旧チーニー)に入れていたな、と。
ピカデリーに入れてみたら、これがぴったし。
取っ手とネームプレートが、金色の真鍮製というのもそそられます。
「お前のものは俺のもの」
パワハラで兄のキーパーは決まったものの、今度は弟のキーパーを探しなおさなければなりません。
仕方がないので、“J.エドワーズ&サン”のキーパーを選ぶ際、候補になったあるシューツリーを見てみることにしたのです。
ブリティッシュ メイドは、各イギリスブランドの輸入総代理店渡辺産業が運営しているショップで、『アニ散歩』でアニキがよく訪れています。
ちなみに、アニキとは同じ歳です。
ここんちのオリジナルシューツリーが6千6百円(送料別)で売っていますが、あのときは売り切れでした。
センタースプリットのよくあるタイプ(“無印良品”もそう)で、サードパーティーでなくても“オールデン”や“リーガル”の純正ツリーも似ています。
かかと周りの作りが小さく、テンションも上手くかかって綺麗に収まりました。
材料もよくあるシダーではなく高級部材のブナと、“チャーチ”や“チーニー”オーナーで純正ツリーは価格が高いと思う人には、オススメです。
それでも、人目につかないキーパーごときに7千円は高いと言うなら、シューケアブランド “サフィール”の日本総販売代理店、ルボウが展開している“スレイプニル”のシューツリーでも入れとけばいいんじゃないですか。
こちらは、シダー製です。
ただ難を言うなら、サイトに会員登録をするメリットがあまりないので、出店している楽天市場でも売ってほしい(楽天は¥3,980-以上の商品を送料無料にしようとしているので、それを避けるためだと思う)。
ともあれ、靴がクーポンを使って5万円、キーパーが7千円と…想定内で買えたので、今回のドーパミン放出は83%とまずまずでした。