締めつけ感がなさすぎて裸足のままだと脳がバグる、ノンストレスな英国靴
古靴回収 2
実家から回収してきた革靴は、“オールデン”9901だけではなかったりするわけでして…
今回の主役は、イギリスはノーザンプトン“クロケット&ジョーンズ”の名靴、濃茶のボストンです。
この個体は、内側側面に書いてあるモデル名、サイズ、使用ラストなどの情報が『手書きスタイル』(現在は、スタンプで印字されている)のオールドモデルなので、かなり昔のものです(20年以上前に、購入した記憶)。
ちなみに、コインローファーとは切っても切り離せない意匠のモカはツイストモカ。
現在、かかとの小さな人の足に適した小型ヒールカップの376ラスト(木型)を採用した、次世代モデルのボストン2にバトンタッチしたようです。
さすが、他社のOMC製品を多数手掛けていたファクトリーだけあって、所有しているラスト数は200以上とバリエーションが豊富です。
この靴も前回同様に、
ホコリまみれだっただけではなく、あちこちが色抜けしているアッパーは、まるでミュージアムカーフ(とくに、うしろ方面)。
バネ式のシューツリーを入れていたので、テンションがかかりすぎてライニングとキーパーが圧着している…
無理やりひっこ抜くと、キーパーにライニングの色が移っていたのですが、“クロケット&ジョーンズ”の純正ツリーは、コーティングされたブナ材を使用しているので、雑巾で拭けばいくらかはきれいになりましたけど。
『皮革フェチ』だから、とりあえず匂いを嗅いでみる。
「あああああ、古靴特有のオイニーがする〜」
(これと、おんなじニオイ↑)
保管場所が一緒だった9901はムシューなのに、ボストンはなぜに?
考えられるのは、9901の靴のなかには10円玉が3枚ずつ入っていたけれどボストンには入っていなかったので、雑菌が繁殖している可能性が…
(入れていた10円玉は、どれも魂を吸い取られたかのようにドス黒く変色していた)
① さっそくブラッシングをして、中も外も入念にステイン リムーバーで洗浄。
② 乾燥していたはずだけど、デリケート クリームは2塗りくらいしか受けつけず。
③ ダークブラウンの1909シュプリームクリームで仕上げ。
で、おわりのはずが…
アクシデント
決めのブラッシングで、右足の履き口にかぶせてある革パーツの表皮がはがれて、ヌバックレザーのようになっているのを見つけるのです。
「げっ!」
その幅、3cmほど。
そこは靴を履くときに、ちょうど靴べらが当たる場所。
そのままにして脱ぎ履きしてたら、いずれ革が破れる。
こういうときのための、“コロンブス”アドベースやアドカラーだったりする(それを持ってたりする)のですが、
下地処理に砂消しでこすると…思ったほど表面がなめらかにならない。
ユーチューブチャンネルを観て気になっていた靴修理店に電話をして相談すると、「見てみないとわからない」という前置きがありながら、「修理ができないことはない」と…なんとも歯切れがわるい。
サンドペーパーを数番手そろえて素人作業でやるか?はたまたプロに依頼をするか?まよう。
パートナー
ボストンはコバの張り出しもあまりなく、グッドイヤーウェルト製法なのに『マッケイ然』としたフォルムがスマートで、まさにオトナが履くローファーといったカンジ。
若者のあいだで流行っている『ドカン』みたいなワイドパンツや、『ニッカポッカ』みたいなパラシュートパンツとは『水と油』の関係で、双方がマッチングしないのは至極当然。
そんな、現在のトレンドとは真逆のクラシカルな靴だけれど、おろした当初から変わらずシンデレラフィットして、なんの干渉もしてこない『放任主義』の靴なので手放せないのです。
(とか言いながら、ずいぶんと長い間ほったらかしにしてましたけど…)
フランスの某ブランド靴のように、ローファーを足に馴染ませるための『修行』でよろこんでいる、マゾヒスティックな嗜好とはべつの世界線。
(314ラストが、自分の足に合っていただけという説もある)
素足感覚でイケるので、どこにでも履いていきたい気持ちはあるけれど、履いていくところがない『非リア』の現実は変わらない。