埃をかぶった玉手箱を開けてみると…そこには、あの頃の思い出が詰まっていた
長い眠りから覚めた革靴
先日手に入れた“パドローネ”サイドジップ ショートブーツには、シューキーパーが入っていません。
買ったときのまま、丸めた紙を中に押し込んであります。
“チーニー”の古靴出現により、“パドローネ”は後回しになっていたので思い立ったが吉日、予備のシューツリーがなかったか?クローゼットをゴソゴソ漁ってみると、なにやら見たことがあるような?ないような?靴サイズの箱が出てきました。
開けてみると、カビの生えた革靴が入っています。
ダークブラウンのコブラヴァンプです。
遠い記憶をさかのぼると、まだ地元の九州にいた頃に友だちが働いていたセレクトショップでオススメされて買ったものの、試し履きをしただけで『お蔵入り』をしていた靴でした。
ソールに値札シールが貼ってあり、「¥28,000- 税込¥29,400-」と書いてあります。
消費税がまだ5%だった21世紀初頭の良くも悪くもくたびれた靴です。
買った当時からどこのブランドかも知らなかったので、中敷きに書いてある“ジョイックス”銘を頼りにググっても詳しい情報にたどり着けません。
数店のセレクトショップが、細々と取り扱っているだけでした。
靴とキーパーは相性があるのを再確認した日
クローゼットから出てきた靴は先芯も入っていないナッパレザー製で、ソールが薄いマッケイ製法ということもあり裸足感覚で履ける靴です。
本来はイタ靴にありがちなウィズ細めのスマートな革靴でしたが、ないよりはマシと入れといた“無印良品”のシューツリーが合わなくて、ツヤ消しのこげ茶色といい威嚇しているコブラというよりも…車に轢かれたウシ蛙のように変わり果てた姿が、いと悲し(涙)
横へのテンションに耐えられず広がっているうえに、現行型とラストが違う『無印ツリー』は甲部分の縦幅が薄いシューツリーで、アッパーにはテンションが利かず益々ペチャンコになっています。
同じマッケイ靴でも“パドローネ”のサイドジップブーツは作りが頑丈なのを横目で見ながら、物は試しに抜いたツリーを入れてみると…これがドンピシャ。
アッパーがドレープになっているので、甲が低いツリーは革を伸ばさずに好都合です。
なんか…このサイドジップブーツのためにある、シューツリーのような気がしてきました。
ということで、サイドジップブーツのミッションはクリア。
残りは、かわいそうなカエルヴァンプ…なんとかしてやりたい。
アルコールでカビを除去して、ステインリムーバーで今までの罪ほろぼしをしながら、ふと思うのでした。
“チーニー”シューツリーの件であら探しをした、“サルトレカミエ”のシューツリーを深掘りしてみるか…
訳あり品好きがポチった訳ありすぎ品
“サルトレカミエ”のシューツリー材料は、主にバーチBHとブナEXの2種類。
ラスト(木型)は、英国靴のグッドイヤーウェルトに合うSR100、ウィズ狭めでイタ靴用のSR200、米国靴や国産靴向けのSR300、モカ縫いのローファーやボリュームのある靴にはSR400。
説明文を読むかぎりは、ざっとこんな感じです。
シリーズを通してかかとのシャープな作りにこだわっているのがこのシューツリーのセールスポイントで、かかと周りが小ぶりなこの靴とは相性がよさそうです。
これらとは別に、中田靴木型製作所に発注をかけた3万円するラスボス兄弟がいます。
ラスボスは日本の職人が作っていますが、それ以外は中国の工員が作っています。
以前に大手企業のサプライヤー工場で働いていたので、一般的な国内工場の品質管理がどれだけ厳しいものなのかを身をもって知っています。
多くの日本人は真面目なので、「えっ!これだけで?」レベルの規格外でも不良は不良です。
赤パレットに直行です。
そして、一度決まった規格はそう簡単に変えられません。
“サルトレカミエ”メーカーの注意書きにこんなことが書いてありました。
つまり…製品の規格が、改良の名の元にコロコロ変わることがありますよ。
と、予防線を張っているわけです。
ダメでしょ?品番が同じ工業製品の規格にブレがあったら。
どうりで、同じ製品を再度購入したリピーターからクレームが出るわけです。
ロットで差があるのなら、手にするシューツリーはせめて左右で同じロットであることを願うばかりです。
ラスボスは別として、良否の意見が真っ二つに分かれる“サルトレカミエ”のシューツリーを褒める人はベタ褒めするので、きっとアタリは高品質なのでしょう。
ネガティブな意見が多いのは安価なバーチ材ばかりで、これを避ければ地雷を踏むリスクは下がるハズです。
SR200にするか?SR300にするか?を迷ったのですが、“ジョイックス”のコブラヴァンプはウィズ狭めでタンが反り上がっているので、細身で甲高のSR200が最適だろうと。
満足のいく可能性が高いSR200EXに賭けてみることにしました。
9千9百円です。
“サルトレカミエ”シューツリーはあちこちのネットショップで売っていますが、ECサイトに出店している公式ショップではネームプレートが付いていないSR200EXのB級品が5千5百円で売っていました。
《販売元より転載》
B級の理由が見た目上の問題だけで機能的にA級と何らそん色がないのなら、“サルトレカミエ”のブランドタグに4千4百円も支払うのが得策とは思えません。
“訳あり”で十分でしょう。
ところが、これがまちがいの始まりでした…
結論から言うと、ひさびさにハズれの商品を引いてしまいました。
つま先に芯材の入っていない柔らかいスリッポンに入れるには、縦方向のテンションがかかりすぎです。
そんなことの前に…
右足用は、サイドスプリットパーツの穴開け位置がズレていて、無理やりツリー本体に取り付けてあるので可動部がスムーズに動きません。
左足用は、かかとのパーツがまっすぐ取り付けられていないので、靴に入れたときかかとに上手くフィットしません。
5千5百円だけど…これはないでしょ?
フツーの世間一般で、5千5百円のシューツリーは結構な値段です。
『訳あり』すぎたシューツリーでした。
ドーパミン放出は…論外です。
“サルトレカミエ”の訳あり品は、細かいことを気にしない心の広い人にはオススメできる商品です。
あくまでも製品を均一に製造する技術力がない工場の可能性があるので、このシューツリーを入れて型くずれをしたとしても問題がない革靴に入れるなら…という条件つきですが。
noteを書いている中の人はファッショニスタではありません。レビュアーでもありません。 あえてたとえるなら「かろうじて美意識のあるオッサン」といったところです。 自分が買いたいものを買っています。 サポートしなくていいです。 やっていることを遠くから見守っていてください🐰