衆議院議員総選挙2024観察記
参考記事
過去分はこちらからもどうぞ
0:祭りのあと
石破茂首相が2024/10/1の任命後期間を置かず2024/10/9に衆議院を解散したことで『短期決戦』の様相となった、第50回衆議院選挙。
ある程度時期の予想はあったにせよ、私たちからみればそれこそ祭りのように何かもあっという間に始まりあっという間に終わった。
これをアップする10月末はハロウィンシーズンからクリスマス商戦に移行する時期だが、政治マニアの自分は『祭りのあと』のような空気を感じる。
結果は直前の複数の情勢報道通り、『自公議席減、立民議席増、国民民主大幅増』という結果になった。
当日(2024/10/27)夜にXのタイムラインを見た限りだが、
・裏金(政策活動費)の問題が大きく影響している
(この問題は2024年春頃にはポコチャでの配信でもネタになっていたほどで、カネの恨みの怖さを思い知らせる結果)
・保守本流的な価値観の人たちが自民党と立憲民主党の間で揺れ動いているのでは(自民党:△56議席、立憲民主党:+50議席…なお、得票数とは連動していないので注意)
・Xの使い方が上手い国民民主党が、公約や玉木雄一郎代表の言動・行動は別として現役世代(例:就職氷河期世代)の心を掴んだ
・共産党と2022年参院選で躍進した参政党の組織の弱体化
・2010年代後半から伸びていた日本維新の会の低迷
という印象を受けた。
野党の中で得票数が伸び悩んだ勢力については、皆さんのXのポストからだけでも気がかりな点が読み取れるので、追って書いていく。
今回は、
1就職氷河期世代の受け皿政党どこになるか
2社会保障制度問題はどこまで出てくるか
3共産党の内紛の影響
に着目した。
1:札入れ
故・司馬遼太郎氏の一大ヒット作であり代表作のひとつ『竜馬がゆく』3巻のクライマックスより。
ストーリーの中で(司馬氏が設定したキャラクターとしての)坂本龍馬がアメリカ合衆国の大統領選挙を『札入れ』と呼んでおりょうに語る場面がある。
その中に
『「日本では、戦国時代に領地をとった将軍、大名、武士が、二百数十年、無為徒食して威張りちらしてきた。政治というものは、一家一門の利益のためにやるものだということになっている。アメリカでは、大統領が下駄屋の暮らしの立つような政治をする。なぜといえば、下駄屋どもが大統領をえらぶからだ。おれはそういう日本をつくる」
竜馬のこの思想は、かれの仲間の「勤王の志士」にはまったくなかったもので、この一事のために、竜馬は、維新史上、輝ける奇蹟といわれる。…』(『竜馬がゆく』第3巻・文庫版430ページより)
というくだりがある。
あくまでもフィクションであり、第二次世界大戦の生き残りであった司馬氏の個人的意見の反映という点を差し引いていただく必要があるが、日本の統治機構が律令国家として成立し、その後武士が700年近く統治してきたた歴史の延長にあることを示唆するくだりだと読むことができる。
『ウィズコロナ』の時代に入り、ラジオリスナー仲間や趣味仲間として付き合いが始まった人たちの顔を思い出すと、『札入れ』の結末、そして民主制国家として曲がりなりにも存在してきた日本の行く末についていよいよ暗澹たる思いにとらわれるようになった。
コロナ禍前の2017年の旧民進党の分裂あたりから、正直なところ、選良たる政治家が一人ひとりの人民よりも一家一門の利益のために動いているように見えてしまうのである。
それも、保守とか革新とか右翼とか左翼とか関係なく。
2:就職氷河期世代
平成バブル後の中央省庁の醜聞・不祥事で公務員バッシングが起こり(自分も乗っかった一員だが)、その後の大不況期には民間事業者(例えば建設業や交通機関など)のみならず雇用の受け皿となるべき地方自治体や公立学校までも新規採用を抑制し、組織の年齢構成の歪み・『就職氷河期』問題の影響が今噴出している。これは、今後数十年〜100年単位で日本に影響を残すだろう。
衆議院の解散・総選挙が近いと噂されるようになった2024年夏頃から就職氷河期世代に関するネタがXでバズり出した。
いくつかのポストを拝読し、リポストしたりブックマークに放り込んできた。
仮に世論誘導の意図が投稿主にあったとしても、自分を含む就職氷河期世代のユーザーが多いXや平成バブル後に飛躍的に普及したインターネットを介した体験の共有が容易になったこと、『今言っておかないと無かったことにされる』危機感が行間からひしひしと伝わってくることが、拡散の背景にあったと見ている。
インターネットを使いこなせているとはいえない国政政党(特に左派野党の共産党・社民党)がインターネットに馴染んでいる世代の声を積極的に取り入れてきたのかについて疑わしく感じていて、むしろ国民民主党のような保守系党派がインターネットを双方向的コミュニケーションに利活用し人々を取り込んできたように見えるのである。
左派・リベラル党派は、党派の主張に賛成・反対であるかどうかとは別の問題として、他山の石として積極的にネット戦略に取り組むべきだったのではないか。
近年ジェンダー・性的指向・障碍…など『アイデンティティ政治』路線で動いている左派・リベラル党派の構成員や支持者が『キャンセルカルチャー』の手段としてインターネットやSNSを使ってきたが、それが多くの人々から支持されるどころか逆に支持を失う事態となっているのに気づかないのだろうか。
たとえアイデンティティにまつわる問題を無視することができないとしても。
特に共産党が旧ソ連のボリシェビキのような革命政党体質から脱却できず、万年野党に安住してしまった結果が今だと思わないのか。
今回の衆院選では共産党の党勢後退が予想されているが、近年の内紛を考えると必然だと言わざるを得ない。
秘密主義・ファシズム・異論封殺・粛清上等な集団に国政を委ねたいと誰が思うのか。
その点、日頃から特に与党支持者を愚民呼ばわりしている『インフルエンサーもどき』より無名の人々の方がずっと賢明だと言わざるを得ない。
3:社会保険『税』・現役世代とシニア世代の溝
今回は社会保障税の負担軽減を打ち出し、かねてよりSNSでのコミュニケーションに力を入れてきた国民民主党の躍進が予想され、結果、改選前の7議席→28議席まで勢力を伸ばした。
国民民主党については、玉木雄一郎代表の発言については基本的に支持していないものが多いが、それでも支持を得ている背景について読み解く必要がある。
今回勢力を伸ばした国民民主党・玉木雄一郎代表のポストを中心に見ていくことにする。
公的年金や公的医療保険などの社会保障制度が、2000年代初頭までの人口増加・特に現役世代の働きによって維持されてきた部分がある。
20年ほど前の社会保険労務士の試験勉強中に何気なく人口ピラミッドのイラストを手書きしたとき、このピラミッドが逆三角形化したら制度が破綻するのではないかと感じた。
例えば、
・老齢年金や介護保険などの社会保障給付が人々の生活実態や経済負担に充分対応できているか
・社会保険料/税負担に対して賃金を抑えられてきた現役世代が負担に耐えられなくなっている
・高齢者が老齢年金だけでは賄えない生活費のために老体に鞭を打って働かざるを得ない現状…をどう改めるか
を本来ならば国会で議論するべきだが、日程闘争・『政治とカネ(汚職や不正は許されないが)』・数合わせに注目するあまり忘れられがちだと私たちが見てしまうほど、現在の政治にまつわるニュース(特に報道機関)のマンネリ化は批判されるべきである。
今回の衆議院選挙では主に国民民主党とその支持者が現役世代の負担軽減をアピールしているが、
・官僚制の統治機構の『制度疲労』の問題
・戦後日本の人口政策
・現役世代の生活水準や生計費の内容の変化
まで突っ込めているかどうかは疑問に思う。
しかし、『手取りを増やせ』『税金/社会保険料を減らせ』の声、それを受けた国民民主党の伸長から、現役世代の疲弊だけでも読み取れるのではなかろうか。
また、影のテーマとしてもうひとつ注目したいのは、現役世代とシニア世代の溝である。
個人的に気掛かりな内容だったポストのうちシェアされた件数が多かったものを参考までにいくつかピックアップさせていただく。
サービス業の現場で見られる現役世代とシニア世代の軋轢を体験している現役世代、特に若い世代からシニア世代が厄介者扱いされ始めていることは危機だととらえておく必要がある。
ネット世界だけの話だと軽く見ていると、いずれ現実社会にまで波及していく。
4:今回やったこと
短期決戦となった今回の選挙では、地域によっては選挙前に届くハガキ(入場券)が届かなかったり、選挙事務の負担がかなり重く公務員にのしかかったり…という問題もXで取り上げられている。
これは公務員の『人手不足』の問題が大きいと思う。
実務を担当する人達は本当に人手不足の鉄火場状態なのだろう。
それだけでなく、立候補者も、メディアも、過去よりもずっとやりづらい選挙になっているのかもしれない、と思って選挙活動を観察することにした。
限られた時間の中、街頭演説や選挙掲示板、選挙公報やSNS(主にX)を使って候補者や党派の動きをちょっとずつでもチェックした。
2024/10/15:
NHKの特設サイトで東京・神奈川・九州・沖縄県の小選挙区の候補者一覧を眺め、ひとまず
・参政党
・パッと見て個人的に『刺さらなかった』候補者(熊本県選挙区の立民・共産の候補者、2人とも落選)
・原口一博氏(ガン療養後陰謀論者に変貌してしまったが、佐賀1区で当選)
・三反園訓氏(元鹿児島県知事、知事時代のパワハラ問題や報道機関対応の問題で'20年鹿児島県知事選挙落選、鹿児島2区で当選)
・内海聡氏(医師だが陰謀論者として有名、反社会的言動も多い、神奈川15区で落選)
・70〜80代の候補者
を『自分だったら投票しないリスト』に放り込んだ。
2024/10/21〜10/25:
報道各社などが公開していた『ボートマッチ』をいくつか試した。
今回は
・選挙ドットコム
・読売新聞
・朝日新聞
・NHK
・毎日新聞
・ヤフー
を使った。
提供元がプログラムを弄って誘導するリスクや偽サイトがつくられるリスクがないとはいえないが、何回かやってみると、自分の支持政党がどの辺りになるかの傾向を絞り込むことはできた。
各サイト概ね20問程度設定されていたが、ヤフーは10問と少なかった。
合わせて選挙公報も一読した。
2024/10/25午後:
所定の投票日に予定が入っていた(前日に諸事情で中止)ので、期日前投票の前にカフェでXでバズっていた投稿のうち気になったものを見返した。
投票にあたっては、
・眼力の強さ
・オリジナリティを感じさせる演説やXのポスト
に着目し、落選しても継続して何かしらの活動をやりそうな人に投票した。
(参考:大野たかし氏のnote・千葉市での学校へのエアコン導入について)
国民審査についてはNHK特設サイト+公報+Xで多くシェアされていたポストを参考にした。
※ピエール瀧さん絡みの事件(『宮本から君へ』への文科省の補助金不支給が不当だったと確定した)の裁判長は『信任』した。
他はXで反響が大きいポストを参考に不信任を2名決定した。
この後、共産党について思うところを書く予定だったが、長い間思想信条や政策面で近いところだったのもあり、かなり長くなるので改めてアップする。
(続く)