第7回:商品の多角化のために最適な方法を選択できるか?
みなさま、こんにちは。
食の6次産業化プロデューサーの松田高政です。
特別講座「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは(全11回)」の第7回目のテーマは、「商品の多角化のために最適な方法を選択できるか?」です。
商品やサービスを発展的に展開する上で、その活動を広げたり、深めたりすることを、経営戦略の分野では「事業の多角化」と呼びます。すなわち、事業の多角化とは、多方面・多分野にわたるように拡大することを意味しています。
では、食品業界において、商品またはサービスの多角化とはどんな方法があるのか。具体的な手法と事例を見てみましょう。
問題:商品の多角化のために最適な方法を選択できるか?
【問いかけ】
商品やサービスを発展的に展開する上で、その活動をどのように広げたか(深めたのか)、なぜその選択を行った(行っている)のか。
理論と手法を学ぶ
【理論・手法】
食品ビジネスでは、1つの商品やサービスを発展的に展開する商品の多角化の方法として、商品のラインナップを増やして、同じ販路で取引量及び売上げを増やす方法があります。
単純な方法は味のラインナップを1種類ではなく2種類・3種類と増やすことで、小売店であれば陳列のフェイス及びボリュームを増やすことです。
また、メインの原材料が同じでも調理・加工方法を変えることで新しい商品が生まれ、取り扱い品目が増えます。
図:商品ラインナップの拡大(宗田節)
これに対して、同じ商品でも少し内容量やパッケージを工夫・改善することで、新しい販路を開拓する方法があります。
具体的には、内容量を多くすることで、小売用商品を業務用商品にすることや、逆に内容量を少なくすることで業務用商品を小売用商品に変える方法です。
また、同じ商品でもパッケージやネーミングを変えることで、ペット産業や観光産業、医療・健康産業などに提案し、新たな市場を開拓する方法もあります。
図:食品の販路と多角化
実際の事例・経験談から学ぶ
写真:のむジュレ
【実際の事例】
「のむジュレ」では、当初は文旦味と生姜味の2種類(共に大人向け)だけでしたが、バイヤー及び消費者からの要望で柚子味(子どもでも食べられる)を追加して3種類と味を増やしました。
その結果、3種類×2本=6本セットのギフトBOXの企画が生まれ、通販会社との取引が増えました。結果的には、3種類のうち、消費者のニーズの高かった柚子味が最も売れる結果となりました。
写真:ギフト箱(配送用の箱と兼用)
さらに、スポット企画(限定販売)ではありますが、百貨店のカタログギフト用に、トマト農家とコラボしてトマト味が発売されました。
写真:トマト味(限定販売)
事業の多角化では、「のむジュレ」の事例のほかに、「アイスでもスウィーツ」というコンセプトを掲げ、ネーミングにアイスをつけて冷凍商品として全国流通を成し遂げた「アイスブリュレ」や、捨てていた人参の葉っぱをペット業界(うさぎ専門店)に流通させた事例など、少し視点をずらすだけで、新商品・新市場が生まれる可能性があります。
事例:アイスでもスウィーツ(アイスブリュレ)
事例:人参の葉っぱの販売
まとめ
以上、第7回目の「商品の多角化のために最適な方法を選択できるか?」はいかがだったでしょうか。
食品ビジネスでは、事例のように、①既存市場に向けて、新商品を展開する「既存市場×新規商品」の取組(深める多角化)、または、②新市場に向けて、既存の商品を展開する「新規市場×既存商品」の取組(広げる多角化)が最もやりやすい方法です。
現時点での既存市場と既存商品の売上が下がっていても、③まったく新しい市場に向けて、新しい商品・サービスで挑む「新規市場×新規商品」の多角化戦略は、非常にリスクが高く成功する可能性は極めて低いのが実情です。
農家の6次産業化はまさに「新規市場×新規商品」の多角化戦略で、成功のためにはかなりの知識・能力・資金等の経営資源を投入する必要があります。
図:農産物の流通と6次産業化(多角化)
やはり、餅は餅屋。自分の強みを活かして、自分の得意な分野・市場で勝負するのが大原則だと言えます。少しの工夫や改善によって新商品や新市場が生まれますので、今までやってきたことを整理し、少し視点をずらして事業の発展的な応用・展開を考えてみてください。
次回、第8回は、「連携パートナーの経営上のメリットを創出できるか?」です。お楽しみに!
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