髪が長くなりました。
広瀬すずが流行った中学生時代。
もれなく私もボブヘアーにすべく美容院へ向かった。
中学時代はタイに住んでいて、タイにある日本人が経営している美容院に通っていた。やたらキリンのオブジェが飾られているところだった。
髪を切る人は日本人、それ以外はタイ人という構成で、タイ人にシャンプーをしてもらっていた。だから、「痒いところはないですか?」と聞かれたら、痒いところもあるけれど、言語間のすれ違いが起こるのが怖くて、「サバイディー(気持ちいい)」とだけ伝えていた。
結構ソフトタッチだったことを覚えている。
そんな美容院で切ってもらったボブヘアーは、一晩開けたら横にもわっと広がって、広瀬すずとおそろいにはなれなかった。
不恰好なボブヘアーが恥ずかしくて、人に何か言われる前に「戦時中の子供みたいだよねー」と言うようにしていた。
みんなもれなくピンときてない顔をしてた。
そしてそのまま髪の毛を伸ばして高校2年性。腰のところまで髪がきていた。
そしてその長い髪は、机に座ると視界の大半を埋め尽くし、教科書を見るのにも一苦労だった。
この時見える毛先の中にたくさんの枝毛をみつけ、それらをハサミでチョキチョキ切っていく、切り終えないと何も手につかない病気にかかってしまっていた。
一度枝毛を見つければ逃さない、他に切り残している枝毛はないかと必死に探すそれは、狂気ともいえる、常軌を逸した執着だった。
高校3年性。
「天使な子生意気」という漫画の、ヒロインのお友達のミキちゃんが可愛くて、それに合わせて髪の毛をショートカットにした。
ショートカットにした次の日の学校では、「似合ってる似合ってる」と称賛の嵐で、私は有頂天になっていた。
気づけば私はホラン千秋と呼ばれるようになっていた。
襟足が伸びてくれば、美容院には行かず自分で三面鏡の前で伸びた分を切った。
異常に指先が器用になる毎日だった。
ついに襟足を切り切って毛先のラインを揃え見事なボブヘアーを自分で完成させた時は、いつか私は大物になってしまうのではないかと恐怖した。
そうして大学生。
憧れの染髪。ちょっと茶色くして、大人になった気がした。
「染めましたか?」と後輩にキラキラした目で聞かれた時は、人生一番の得意げ。「染めたよ、東京で。」
実際は大して黒と変わらない色をしていた。
大学生になったら月に一回は美容院に行って、ツルツルの髪の毛を揺らしてキャンパスライフを!と思っていた子供時代の憧れはすぐに崩れることとなった。
なにせお金がなく、半年に一回ほどの美容院。放置した髪の毛は綺麗なボブヘアーから伸びっぱなし。2年かけて自然派ロングヘアーへと大変身したのであった。
「まあ、成人式もあるし、伸ばすか」みたいな低い意識のもと出来上がったロングヘアー。日本人に生まれてよかったなと思うのは、美容院に行かなくても綺麗な黒髪でいられていること。
でも私の大学生活と共に育ってきた髪の毛。
一緒に東京を過ごしてきたその日々が、髪の毛の長さで可視化されている。
なんとも愛着が湧いて出て仕方ない。
「髪の毛伸びたね」って言ってもらえるたびに、なんだか嬉しい気持ちになる。
ただ最近また、ミキちゃんとおんなじ髪型にしたい思いが増してきている。
でも、私が髪を短くしたところで、なれるのはミキちゃんではなくてホラン千秋。
どうしようかな。
新しく、真似したい!と思える髪型の有名人を探したい。