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空港の鮨屋で

 去年の3月にグループホームに入っていた父の様子を見に行ったら、息子が誰か分からないことはもちろんのこと、食べたはしから口の脇からぼろぼろとこぼす様子におそらく参ったのだろう、千歳空港に着いたら、鮨屋のカウンターで刺身をつまんでいる自分がいるのである。もしくは、鮨屋で呑みたいというのが先にあって、理由を見つけたのかもしれない。

 ともあれ、今年の1月に父を葬式に出したことは、あまりにも遠くの過去であり、喪中であることを忘れそうになった。

 残された母親は10月に膝の手術をして、手術のその腕は良かったものの、薬の副作用に悩まされたという。「という」という表現は、あまり連絡を取っていないことの証左である。むしろ妻が母と密に連絡を取っており、ありがたい限りである。妻がいちばん母のことを気にかけている。でも責任は直接の息子にあるはずであり、その通りだ。

 1泊2日というか、ほぼ半日ぐらいしか居なかったのだが、母の様子を見に行った。というわけで、また空港の鮨屋のカウンターにいる。

 いろいろあった一年だが、良いことも、もちろんたくさんあった。ひとつ選ぶとしたら、高校時代の友達と再会できたことだ。より正確に言うならば、再会に加えて、高校時代に知らなかった同級生と友達になれた、というのがうれしさの源泉である。

 ニシンの刺身は美味い。ということで、2019年もほぼ終わり。

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