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love letter / Miss Americana

良い子でいることは辞める。正しい立場に居たい。自身の生活や歌に対するバッシングや政治に対して立場を示した、あの瞬間の裏側を見せる、ソングライター、テイラー・スウィフトのドキュメンタリー。

「ミス・アメリカーナ」へ。

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たった1ヶ月前のこと。どうしても東京都知事選のことをじんわり思い出して少し歯を食いしばってしまう。

誰が、誰のために、何を掲げているのかなんて明確だった。誰が、誰を蔑ろにしてきたのかも明確だった。それでも投票締め切りの20時に、当確の文字を見た。

誰にも悲しいことを言えなかった。たぶんちょっと前に、選挙に行かないのにとやかく言うな、だとか、文句ばかり言わずに〜、だとか。そういった知人のツイートを見てしまったからだと思う。選挙に行ってるわたしが見ても傷つく。普通に辛いって言えばよかった。悲鳴を勝手に塞がないで欲しかった。何に悲鳴を上げているのか、見て欲しかった。

仕方ないとも思った。みんな自分のことで精一杯だからね。この感覚はOnly the youngでも表現されている。どこまでも1ヶ月前の自分をなぞっていくような話で、ここまで来ると笑っちゃう。

「男女同一賃金にも反対したんだ。暴力から女性を守る法案にも。DVやストーカーを規制する制度だよ。」「それに同性愛にも反対。」

なんども震えた声で伝えるけれど、なんどもスタッフに抑えられる。「ツアー動員数を半分にしたいと言うことだね。」人気を手放す、バッシングを受けるどころか、身の安全まで保証できないと突きつけられる。「彼女の話を聞いて」とテイラーの母が懸命に訴える。声を出す。塞がれる。

「これに何も言わず、プライド月間でーす!、なんて言えない。」
「立ち上がらなきゃ。」

体重をかけられて肺を押し潰されていくみたいに、ゆっくり息ができなくなってしまった。こんなの、大スターのドキュメンタリーでも、海の向こうの国の物語でもなんでもない。わたしたちの今じゃん。思い当たることしかない。絆創膏で仮止めしたたくさんの傷から血が滲んでしまう、みたいに。これは結構くる。でも希望だけを見せられるものじゃなかったからか、安心して見られた。

結果、思ったことをどう吐き出そうか、1週間もモダモダしてしまった。ボロボロになりながら自身の裁判について話す姿と、パーカーで涙ながらに訴える上記のシーンをずっと覚えていて、急いでその日のうちに描いた。言葉でちゃんと書くのは難しいね。書方がわからなくなってしまった。まぁ書き方はいつも分からないんですけど。

ネットフリックスのあらすじには"テイラー・スウィフトの飾らない姿を映し出すドキュメンタリー。”とあるが、誰もテイラーのほんとうを知ることは一生ない。このドキュメンタリーがどこまで誠実かどうかなんて知らないけれど、痛みだけは信じられる。痛みを隠さないこと。声を上げること。戦うことは諦めたくない。政治の話は暮らしの話だ。今、目の前にあるそのコップ一杯の水の話。明日おきたら行く場所があって、話す人たちがいる話。口に出すことなんて、本当は覚悟が必要なことじゃない。何度だって言う。そう変わるまで言う。

わたしたち、やることがまだまだありますなぁ。


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