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【ダイビング】サンゴ礁は2100年にほぼ消滅する
2100年までに海洋の温暖化と酸性化により、サンゴ礁の生息地がほぼ消滅する可能性があります
衝撃的な発表が海洋科学会議 2020でありました。
サンゴ礁の 70 ~ 90% は 2050年で消失し、2100年にはほぼ消滅すると予測されています。
とはいえ、ダイビングを頻繁にする人や、
海に携わる仕事をする人でないと現実的ではありません。
「私たちは陸上で生活しており、サンゴ礁が消滅しても関係ないのでは?」
「海の生物や、植物が無くなったところでどうなるのですか?」
そんな疑問が浮かびます。
過去には、絶滅した動物や植物は多く存在しており、
私達は毎日問題なく生活しています。
なぜ、サンゴの絶滅がこんなにも騒がれているのでしょうか?
この記事を読み終えた時には、
あなたの生活とは無関係と思えるサンゴ礁の消滅を少し身近に感じるはずです。
サンゴは植物ではなく動物
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サンゴは、口も胃もあり、エサを食べ、卵も産む刺胞動物(しほうどうぶつ)。
なんと、口と排泄物の出口が一緒という体の構造になっています。
人間の私達からすると、とても不思議です!
サンゴは体内で褐虫藻(かっちゅうそう)という植物プランクトンと共生しています。
クマノミとイソギンチャクの共生は有名ですが、
サンゴは体内で別の種と共生関係にあります。
褐虫藻と共生しているサンゴの約3割は、親から子へと褐虫藻を受け渡すのです。
残りのサンゴは、成長過程で新たな褐虫藻を体内へ取り入れます。
サンゴと褐虫藻は、お互いに利益のある相利共生です。
サンゴの体内では、褐虫藻が光合成をおこない栄養もらって成長します。
褐虫藻もサンゴを住居にし、代謝物を栄養として利用しているのです。
一方、太陽光を必要としない、
陰日性(いんじつせい)のサンゴは動きの遅い魚やタツノオトシゴを捕食する種も!
サンゴが魚を捕食するのはなかなかのインパクト…。
サンゴにはハードコーラルとソフトコーラルの2種類
それぞれの名前の通り、ハードコーラルは硬いサンゴ。
ダイビングでよく目にするテーブルサンゴなどです。
ソフトコーラルは柔らかいサンゴ。
まるでイソギンチャクのような見た目です。
ダイビングでは沖縄と伊豆諸島、小笠原諸島で見られます
日本の 海域にはおよそ425種のサンゴが生息しています。
こんなにたくさんの種類が生息しているのには驚きですね!
ダイビングでも比較的簡単に見つけられます。
ダイビングで美しい景色が見られるのはサンゴのおかげ
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複雑な造形のサンゴには多くの生き物が暮らしており、
すき間には小さな魚や貝などが暮らし、卵を産み付けます。
まわりには、それらをえさにする大 きな魚やエビなどが集まるのです。
サンゴの出すサンゴ粘液を食べる魚や、サンゴをかじる魚も多くみられます。
サンゴを中心に海の生き物たちは生活しているのです。
海の生き物の25%以上の種がサンゴ礁に生息
全世界のサンゴは地球表面の約0.1%です。
そこに、9万種以上の生き物が生息しています。
サンゴの複雑な造形や生態のおかげで多様性が高いのが特徴です。
サンゴが絶滅した場合、サンゴに暮らす小型の魚がいなくなります。
住処を移せばいいと思うかもしれませんが、
サンゴに卵を産み付ける生き物は結果として絶滅するのです。
サンゴ礁が消滅すると食卓から魚が消える?
ダイビングで美しいサンゴ礁が見れなくなるだけではありません。
サンゴに暮らしている小型の魚を食べる、
大型の魚は食べる物が無くなります。
すると最終的には、大型の魚を食べている、
私達の食生活にも影響を及ぼすのです。
このようにサンゴ礁は、人間の生活とも非常に深い関わりがあります。
美しい白いサンゴの悲しい理由
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ダイビング中に白いサンゴを見た経験はありますか?
健康なサンゴは褐虫藻の色がサンゴに透けるため、褐色です。
しかし、最近ではダイビングをすると頻繁に白いサンゴを目にします。
美しい白いサンゴは体内から褐虫藻が抜け、
サンゴの骨格が白く透けた状態。
人間でいえば骨がむき出しの状態です…。
そんな状態では長く生きられないのは容易に想像がつきます。
白化したサンゴの多くはその後死滅しており、
死滅したサンゴはやがて藻が生えます。
そして、美しかったサンゴ礁は変わり果てた姿に。
海水温の上昇や海洋汚染によって褐虫藻が弱る
共生関係を維持できなくなったサンゴは、褐虫藻を異物だと思いこみます。
人間が細菌に感染した時と同じように、
体内から排除しようとして吐き出すのです。
サンゴは2週間以上、主な栄養源である褐虫藻からの栄養供給が途絶えることによって死滅します。
日本でも、沖縄県にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」では、2022年にも大規模な白化が起こりました。
「石西礁湖」では、6年前にも大規模なサンゴの白化が。
その後多くのサンゴは回復することなく、死滅しています。
海は地上にこもった熱の90%以上を吸収している
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海水温の上昇は、サンゴを含む海の生物に大きな影響を与える可能性があります。
地球温暖化で気温が上昇した時に真っ先に被害を受けるのは、熱を吸収してくれている海。
日本近海の海水温の上昇率の特徴では、
2018年までの約100年間で、海域平均海面上昇の上昇率は+1.12℃です。
+1.12℃と思うとたいしたことない、と感じます。
ですが、あなたの体温が1~2℃上がったと想像してみてください。
気温と水温では全く温度の感じ方が違うのです。
水温は気温に比べて変化しにくいため、元の水温に戻りにくく長期化します。
2050年には魚などの生物よりもごみの方が多くなる
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海洋汚染で最も深刻なプラスチックごみ。
プラスチックは自然に分解されることはありません。
一度海に流れると、200~400年以上海を漂うと言われており、波や太陽光に長年さらされたプラスチックはもろく崩れます。
5mm以下のプラスチックはマイクロプラスチックと呼ばれ、サンゴに取りこまれると褐虫藻の働きが弱くなります。
一方で、マイクロプラスチックは魚などを介して私たちの体内にも取り込まれています。
マイクロプラスチックが人体にどのような影響を及ぼすかはまだ未知数です。
サンゴにも大きな影響を与えていることを考えると、今後、人体への影響も明らかになるのではないでしょうか。
サンゴと海の生き物が共生する海でダイビングするために
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このままでは2100年にはサンゴ礁は消滅し、
美しいサンゴ礁の海でのダイビングはできなくなります。
さらには漁業にも影響を及ぼすかもしれません。
サンゴ礁の消滅は、海に囲まれている国で生活している私たちにとって他人事だと言えるのでしょうか?
映画「チェイシング・コーラル」はエミー賞自然ドキュメンタリー部門で、最優秀賞を獲得しており、
海の中で「今、何が起こっているのか」を美しい映像とともに知れます。
作中でサンゴ研究者の「サンゴ礁は永遠にあるものだと思っていた」という言葉が印象的でした。
美しかったサンゴ礁が白化、消滅する様子は心が痛みます。
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