内なる宇宙の矛盾
穏やかな風が木々や草花を撫でている。
モヤの向こうに山々がくっきりと見え、ベランダの柵がぼやけて見えた。
「やっぱり現実世界は幻なのかもしれないなぁ…」
とボーっと考えていると、となりの神社に白いネコが現れる。
木の陰に隠れて用を足したあと、草むらの方にゆっくり歩んでいき、唐突に何かに飛びついた。
そして、お尻を揺らしながら鳥居の方へとまたゆっくりと歩んでいく。
何の作為もない、自然と一体の行為だと思った。
毎日、あんな風に過ごせばいいのだろう、と思った。
でもそれは、そのまま自分に当てはまらないと、わかっている。
複雑な生き物にとって、本能のままに生きることはたやすくない。
喜びがあるし悲しみがある。
快楽もあれば不快もある。
ひとりじゃないのに寂しさを感じる。
喜びながら、罪の意識を抱えていたりする。
私のなかにある、相反するふたつが混在している宇宙を、私たちは必死になって分断して、カタワレの存在を一生懸命に攻撃する。
ふたつとも、私なのに。