【深読みフリーレン】あなたがずっとそれをやり続けてきた理由
アニメ『葬送のフリーレン』が好きです。
【※注意】がっつりネタバレです
アニメの2話目。
フリーレンは弟子のフェルンと旅に出ることになった。
フリーレンにとっては魔王を倒した仲間であり、フェルンにとっては両親を亡くして自殺しようとしていたところを助けてくれた育ての親である、生臭坊主ハイターに別れを告げて。
旅の途中、フェルンはフリーレンに対して疑問を抱く。
出会った人から依頼を受け、仕事をこなし、報酬として「温かいお茶が出てくる魔法」をもらったフリーレン。
フェルンはフリーレンに
「変な魔法ばかり集めていますね」
と言う。
フリーレン:「趣味だからね」
フェルン:「フリーレン様は本当に魔法が好きなのですね」
フリーレン:「ほどほどだよ。フェルンと同じで」
フェルン:「少し違うような気がします」
フリーレン:「同じだよ」
その後、とある村に到着すると、2人は村のおばあさんに勇者ヒンメルの銅像の掃除を依頼され、フリーレンはその依頼を引き受ける。
錆を取る魔法でヒンメルの銅像をピカピカにし、荒れ果てていた周囲をキレイにしたフリーレンとフェルン。
おばあさん:「少し彩りが欲しいわね。あとで花でも植えようかしら」
フェルン:「フリーレン様、花畑を出す魔法、使えましたよね?」
フリーレン:「そうだね。何か適当な花でも…」
その時フリーレンは、魔王討伐の旅の途中でヒンメルが言っていた、ヒンメルの故郷の花「蒼月草の花」の話を思い出す。
ヒンメルがフリーレンに「いつか君にみせてあげたい」と言っていた花。
でも、花畑を出す魔法は、観察したことのない花を出すことはできない。
おばあさんは薬草家で、植物に詳しい人だった。
おばあさんは掃除をした報酬として教えられる魔法はなかったが、フリーレンは報酬として蒼月草の知識をもらうことにした。
しかし、蒼月草は絶滅したという。この大陸での目撃例はもう何十年もない、ということがわかった。
それでも「自分のために」蒼月草を探すことに決めたフリーレン。
気づけばもう半年も、蒼月草を探していた。
千年以上生きれるエルフのフリーレンと、普通の人間であるフェルンには時間に対する価値観がまったく違う。
フェルンは焦る。
「フリーレン様の魔法に対する執着は異常だ」
「このままでは何十年でも探し続けてしまう」
「フリーレン様は多くの人を救える力を持った魔法使い」
「だから、ありもしないもののために時間を使うだなんてあり得ない」
そんな思いをフェルンはおばあさんに打ち明ける。
おばあさんに背中を押してもらい、その思いをフリーレンに打ち明けたフェルン。
フリーレン:「私1人の時間ってわけでもない。潮時だ」
と、フェルンの思いを理解したフリーレンは「もう少し探したら切り上げる」と言った。
ある手がかりをつかみ、小動物の後を追いかける2人。
その道すがら、フェルンはまた疑問を投げかける。
フェルン:「フリーレン様はなぜ魔法を集めているのですか?」
フリーレン:「ただの趣味だよ」
フェルン:「そうは思えません」
フリーレン:「ほんとうにただの趣味だよ。前はもっと無気力に、ダラダラと生きていたんだけどね」
ここで、ヒンメル・ハイター・アイゼンと共に過ごした思い出が、フリーレンの中でイメージとしてよみがえる。
フリーレン:「私の集めた魔法を褒めてくれたバカがいた。それだけだよ」
それに対してフェルンは「くだらない理由ですね」と言う。
フリーレンは微笑みながら「そうだね」と言った。
対にフリーレンは勇者ヒンメルが「いつか君に見せてあげたい」と言った蒼月草の花を見つけた。
フリーレン:「遅くなったね、ヒンメル。これで蒼月草の魔法が作れるよ」
フェルン:「なんでそんなに魔法に一生懸命に…理解できません」
フリーレン:「わかるはずだよ。フェルンだって魔法使いになることを諦めなかった」
フェルン:「それは違います。私はひとりで生きていける力さえ手に入ればなんでも良かったのです」
「別に魔法じゃなくたって…」
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フリーレン:「でも、魔法を選んだ」
ここでフェルンは、ハッと気づいた。
フェルンが子どもの頃、魔法で蝶々を出したとき、喜んでくれた育ての親のハイターのことを、ハイターの笑顔を、ハイターと一緒に過ごした時間を思い出す。
フェルンは納得した顔で、
そして悲しそうな笑みを浮かべて、
「そうですね」
と言った。
ストーリーの概要説明が長くなりましたが、ここからは僕の解釈です。
なぜ、このストーリーが僕の心を震わせたのか。考えてみました。
人間は、忘れてしまうのではないか?
あのときの喜びを。
生きること・目の前の課題や問題に対処することに一生懸命で。
未来の不安に翻弄されて。
孤独になる恐怖を避けることにいっぱいいっぱいで。
あのときの喜びを忘れてしまうのではないか、と感じたのです。
思い返すと、僕は長男として生まれて、3歳のときに弟が生まれました。
記憶なんてほとんどないけど、僕は弟をライバルのように思っていたと思います。
いままで自分だけを見ていてくれた両親は、生まれたての弟につきっきりになった。そりゃそうなるよなと、いまならわかるけど。
ちょっとでもわがままを言えば「お兄ちゃんなんだから」と諭される。でも、よく考えてみれば、お兄ちゃんと言ったってまだ3歳だよ。
「甘えたい」という気持ち。
「お兄ちゃんだね」といわれる誇らしさ。
両親に「良い子だね」と言われたいという承認欲求。
様々な思いがぐちゃぐちゃになっていて、でもそれを俯瞰して見ることなんてできるはずもなくて、激しい葛藤のなか、一生懸命生きていたのではないか。
「よくがんばったね」と、あの頃の自分に言ってあげたいと思いました。
そして、小学校2年生のときに、転校してなじめず、いじめの対象になった経験。そのときから、その場その場で相手に合わせて自分をつくるのがクセになったように思います。
自分を出してはいけない。素直な自分を見せてはいけない。そんなことしたら嫌われるかもしれない。嫌われたら孤独になる。孤独になるのは怖い。
孤独になったら生きてイケナイと思い込んでいたのだと思います。
そうやって僕は、生存戦略として、人の顔色をうかがい、素直な自分を隠して、「存在していても差し支えない」と思われるような人間になろうとしてきた。
そうやって僕は、自分で自分を欺くのがうまくなっていった。
恋人ができたときも、家族を持ったときもそうだった。
自分の気持ちを押し殺して、良きパートナー、良き夫、良き父親でいなければならない。正しい人間であらねばならない、と思ってきた。
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だから僕は、フェルンが自分の喜びを、魔法使いになった原点を、思い出した瞬間がたまらなく愛おしいと思った。
フェルンは、育ての親のハイターに「あのときフェルンを救ってよかった。もう大丈夫だ」と思ってもらえるように。
ハイターが安心してあの世に旅立てるように。
そのために、ひとりで生きていける力を持とう、強くなろうと、一生懸命に一心不乱に修行をする過程で、抑え込んでしまったものがあったのではないか。
魔法を選んだ喜びを、暗い井戸の底に落として蓋をした。
そうでもしなければ、厳しい修行に耐えられなかったのかもしれない。
心を保てなかったのかもしれない。
強くいられなかったのかもしれない。
そんな風に思いました。
僕がいま、やっていること。
僕がいまでも、ずっとやり続けていること。
僕が主体的に選んだこと、忘れていること。
それってなんだろう。
疑問を持って、学ぶこと、知ること。
わかったことを人を説明したいと思うこと。
旅をすること。伝えること。
書くこと。
編集すること。
いま、生きるために選んで行っているのは、発信することです。
そこには、原点がある。原点となった喜びが、きっと隠れている。
フェルンが気づいた瞬間のように、目の前の他者が、自分の心を知る瞬間がたまらなく愛おしい。
それを見たい。味わいたい。
そのためにいま僕が選んでやり続けていること。
それが、これまでの自分の人生のすべてを乗せて発信することなのかもしれません。
強弱の違いはあれど、人には「わからないことをどうしても知りたい」という生まれ持った欲求があると思っています。
それ以外にも、好奇心・冒険心・貢献心・調和・協調などなど、根源的な先天的な欲求はさまざまあるのではないかと思う。
その生まれ持った欲求は人それぞれ強弱が異なると思うけれど、それらが生まれたあとに経験した喜びやコンプレックスとかけ算されて、エネルギーが増幅する。
そうやって、欲求を満たすための対象や方法が決まっていくのではないか。
私たちはそれを、意識的か無意識的かに関わらず、選んでいる。
選んで、いまも、何かを続けている。
アニメ『葬送のフリーレン』を見て、自分を偽ることなく、欺くことなく、自分の原点を見つけることの大切さを知りました。
自己欺瞞(じこぎまん)をなくすこと。
素直になること。心を開くこと。
人は誰もがなりたい自分になれると思う。
望む現実を生きることができる。
世界を創造することだってできる。
理屈のない、言い訳のない、自己正当化のない、自己欺瞞のない自分に出会うことさえできれば、私とあなたの隠れた才能は、ついに発見される。
フリーレンのように、自分を欺くことなく、自分の気持ちに正直に素直に生きることができれば、蒼月草は見つかる。
そして、それを見た他者も、自分の根源的な喜びに気づいてゆく。
自分の可能性を信じることは、人の可能性を信じることであり。
人の可能性を信じることは、自分の可能性を信じること。
あなたがいまやっていること、いまでもずっとやり続けていることは何ですか?
きっとそこに、あなたの喜びと才能が隠れています。