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よよこ、写真ブランド”纏”が誕生する

心配していた閑古鳥は鳴くことがなく、比較的順調にスタジオ運営ができていた。
マイスタジオでよよこが情熱を注いだのは、光の追求。
ライティングで光を創造することに心を鷲掴みにされ、いろんな光を生み出すことが愉しくてたまらなかった。
そんな光の追求は、よよこにある変化をもたらしていった。

よよこは人物、特に大人の女性を撮影するのが得意だった。
中でもこだわっていたのは「美しさを惹きだす」こと。
「惹きだす」とは、人を惹きつける魅力を外側に出すという意味を込めている。美しさとはすべての人に存在する。
人の中に”美しさ”を感じ惹きだすことにワクワクしたし、その写真をみてお客様に喜んでいただけることが嬉しかった。

それは次第に究極のシンプルへと向かった。

「大切なものをたった一枚纏う」

究極の美しさは飾らない人そのものにある。
自分が鎧のように被っていたものをひとつずつ削ぎ落とし、自分にとって本当に大切なものだけを残す。その姿は何よりも美しい。
そう思った。
それを形にしたのがよよこの写真ブランド『纏〜MATOI〜』だった。
女性に特化していたこの頃、女性特有のからだの曲線に芸術的な美しさを感じていた。
余計なものは取っ払い、生身の自分と対峙する。
自分の中に存在する美と向き合う。
纏うはたった一枚だけ。

よよこの想いが炸裂した撮影だった。

アートに生きる。

そう心に決め、アート作品を生み出していった。
写真展も2回開催した。

『纏〜MATOI〜』はよよこの真骨頂だった。

写真展には多くの方にご来場をいただいた。
お褒めのことばもいただき、よよこは自分の居場所を見つけた気持ちで幸せだった。

そして2回目の写真展のとき、お越しいただいたお客さまの一人が
「素敵だけど、この写真って何に使うの?」
とよよこに投げかけた。

使う

そうか、プロフィール写真はビジネスの世界で使用する機会は多いけれど、『纏〜MATOI〜』の写真には「使う」という概念は存在しなかった。
「アートというのはそういうものだ」と、そのときは素通りしたのだが、よよこの中にちょっとしたしこりとして残っていた。


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『よよこ、プロカメラマンになる』
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