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学生さんからのメールへの返信➖親子関係➖(2)

前回の続き

「突然ですが、反抗期と子離れ、そして親離れについて先生のコメントをいただきたいのです。・・・」
という、学生さんからのメールに対して、答えにもならないメールの返事を書いた。今回は、その続きである。

いずれにしても、中学に入ってからは子供と本格的に向き合いました。時間もとりました。以下、私が意識的にやったことを書きます。

1)長男が精神的にすごく不安定で、母親や次男とよく揉めていました。それで仲裁に入り、長男自身が納得するまで時間をかけて話しあいました。そう、説教をしても意味がないので、なぜそうなのか、何が問題なのかについて本人が腑に落ちるまで話しました。これはめちゃくちゃ時間がかかりました。一晩ですめば良い方で、まる二日かかったりとかしました。でも基本的には、本人が納得するまで話しました。

2)子供の悩み相談うんぬんは、たまにこちらから声をかけました。「この頃どう」って、そうするとたいていは「実は」と話し始めるので、それからまたまた長い時間話しを聞きましたし、勉強もみました。

3)子どもたちから相談があると話しかけられることもあり、私にとってはこの時が一番大変でした。

というのは、自分自身の仕事があり、時間的なあるいは精神的な余裕が全くないときに声をかけられることが多かったからです。

しかし、息子が父親に声をかけるというのは、自分の経験から言ってもめちゃくちゃ大変なことだと思いました。ハードルが高いと思います。よって、私の都合で一度でも拒否したら、彼らが私に声をかけることは二度ないなぁと思いました。よって、どんなに私自身が大変なときでもつきあってきました。一睡もできないまま講義をしたり、教授会に出席したりすることが、彼らが中学高校の時にはよくありました。

4)相談は、人生相談みたいなことはほとんどなく、勉強のことが多かったです。つまり中間・期末の勉強から入試、そして大学の試験や卒業論文にいたるまで、次男は修士論文までずっとつきあいました。勉強の方法を教えることもあるし、実際に内容に踏み込んで教えることもあります。これは相手の要求次第です。

以上が、ぼくの子供との付き合い方というか、向き合ってきたことですが、基本的なスタンスは、中学に入ってからは、もちろん今でもそうですが、「見ざる・聞かざる・言わざる」です。

学生さんからの再質問

先生の「見ざる・聞かざる・言わざる」のスタンスですが、そのスタンスに至ったのはなぜなんでしょうか。

私の返事

講義の時に話したと思いますが、ぼくは大学の3年の時に結婚し、卒業してすぐに子供が生まれました。よって、子供に対して親であることの実感、つまり親としての自覚というか実感は、正直ありませんでしたし、今も多分ありません。そこが母親との違いです。

自分が親であるという自覚というか、実感が全然もてなかったので、だからこそ意識的に親の役割を果たそうとしました。それが、第一の理由です。

第二の理由としては、自分の子供時代の経験もあると思います。

中学生や高校生になってまで親から叱られたり説教されたくありませんよね。私の両親は二人とも小学校しか出ていません。中学校まではあれこれ言われていたというおぼろげな記憶がありますが、高校に進んだ時点で、「もうここから先は分からないから自分で決断してね」と完全に放任されました。一切の干渉がなくなりました。どんなに成績が下がっても何も言われることはありませんでした。

自分自身で試行錯誤しながら進まなければならず、大変なこともありましたが、反面、とても楽でした。大学受験に対してもまったく干渉されませんでした。受験したい大学についてもあれこれ言われるこはまったくありませんでした。

それは、とても助かりました。勉強についてだけでなく成績についても一切親は何も言いませんでした。やりたいようにやらせてくれました。だから、自分の子供に対してもそうしようと思いました。

三番目の理由ですが、多分、これが一番自分が大切にしていることです。

それは、基本的に子供は「親の所有物」ではなくて、「天からの預かり物」だということです。そういう感覚です。自分の所有物だと思うと子どもの生き方にあれこれ干渉したくなると思うのですが、預かりものだと思うと、彼らの能力を最大限に生かすような、そんな手伝いをすることが自分の役割だと自然と思えるのです。

つまり、親子であっても基本的には他人だと考えています。そういう意味では、彼らとは距離をとっています。だから自分の趣味や好みを彼らに押しつけることは絶対にしないと決めています。実際そうしてきました。

子供にとって必要なのは、手助けして欲しい時に必要な援助やアドバイスをもらえることであって、親の趣味や好みを押し付けられことではないですよね。もちろん、この原則は平凡な親である私にとっては結構難しいというか大変なので、だからこそ、「見ざる聞かざる言わざる」と呪文のように唱え、意識的に「見て見ぬふり」をしています。

子供に対する愚痴は、私は奥さん相手にしています。それを子供に直接にぶつけることは、全然していません。だから子供は気楽に親にいろんな相談をするんだと思います。お金もだしています。そういう意味では絶対に甘い父親です。


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