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07.オレンジの体温

食器洗い、実は嫌いじゃないな?
という新たな発見をしました。最近ときどーき料理を作ったり買ってきた総菜を器に盛ったりする時に気が付いたんですけど。食器洗いが想像以上に嫌じゃない。むしろちょっと楽しいし、気分転換になったりもする。
ずっと食器洗いが嫌いだと思ってたんですよね。はっきりとは覚えてないけど、どこかのタイミングでそう判断しました。だから器のついたコンビニ弁当だけを選び続けていたし、箸やスプーンも使い捨てのものを用意して食べ終わった瞬間全て捨てられる、何も洗わなくていい、すっきり!が最適だと思っていました。でも多分色んな変化が重なって。仕事や家族からのストレスが減ったりだとか、キッチンを居心地よく整える事ができただとか、楽に心地よく家事をこなす動画にハマったりだとか。そんな色々の結果、確定したはずの『嫌い』はいつのまにか姿を変えていました。数年振り返らない間に、あなたもすっかり変わっていたんだなぁ。
割り箸ではなく好きな箸を使って食後に洗ったり、食べたいものを作って調理器具をささっと洗ったり。好きな音楽や配信なんかを聴きながらやってると、結構楽しくて癒される。これはきっと、一人暮らしだから自分の分だけを好きなタイミングでできる、というのが大きいと思うんですけどね。

昼食の洗い物を終えると、ちょうどお茶を飲むのに良い時間。何を飲もうかなぁと考えて、今日の気分はこれでした。


オレンジの体温フィーユブルーのフレーバードティーです。
Veilという漫画をご存知でしょうか。コテリ先生によって描かれている、警官の"彼"と杖をつく"彼女"の日常の物語です。この茶葉はコミックス3巻の限定セットボックスに収録された、Veilのイメージでフィーユブルーがブレンドしたコラボ紅茶なのです。それの復刻版がなんと出まして。

それを手に入れる事ができました。いや綺麗……すごい綺麗……箱もリーフレットもイラストカードも缶の絵柄もすごく綺麗なんですよ……。
実は私がフィーユブルーを知ったのはVeilのコラボ紅茶がきっかけ。元々この漫画が好きだったフォロワーがセットボックスを購入しており、セットの紅茶を美味しいとツイートしていたのです。それを見て興味が湧いたのがフィーユブルーと出会ったきっかけでした。なつかしいなぁ。
そして私は逆にVeilを全然知らなくて。今回の復刻版発売を見てそういえば読んでなかったなぁと思ったので、Kindleで一巻を買って読んでみました。想像の更に上を行くお洒落さ……そして面白い……彼と彼女が交わす一言一言や振る舞い一つ一つが面白い……。

袋を開けると、オレンジの良い香り!美味しそうというより、オレンジの入ったアロマオイルのような香り高さがあります。オレンジの奥ですーっと通っていくこの清涼感はミントかな?濃すぎない淡すぎない、ちょうどよい青みが涼やかに通っていきます。淹れた後はじゅわーっとした良い香り……。淹れる前のくっきりした香り高さが柔らかくなっていて、甘くひと煮立ちさせたような香りに変わっています。さっきよりも美味しそう感が増しますね。ミントも香り立ってくるので爽やか。めちゃくちゃおしゃれな香り方だなぁ……では一口。

……んん!美味っっっしい……!!えっびっくりする程おいしい。旨味が、旨味がしっかりあるのに軽やかー……。一口飲むたびに瑞々しいオレンジの味わいが、お茶の旨味と一緒に口の中で弾けます。渋みもしっかりといるのですが強すぎない丁度いい塩梅で、甘酸っぱさや旨味にひとさじ混ざる事でぐっとおしゃれな味になっています。少しだけ後味がビターになるんですよ、この渋みがある事で。それがただただオレンジが美味しいだけじゃない、大人っぽいおしゃれな味わいを生み出しています。すごくこれ、Veilの作風を思い起こさせますね……。あの絵柄や言葉選びやレイアウトで造り上げられた、洋画を見てるかのような瀟洒な作風。あの作風にぴったりだな……って感じるおしゃれな味わいが一口一口味わえてしまいます。すごいやこれ。

メインのこのオレンジの風味が、また絶妙なんですよね。果肉に焦点を当てたジューシーさとも違う、皮や茎に焦点を当てた青みや苦みとも違う、今まで味わった事のないオレンジ。例えるとやっぱりアロマオイルが一番近いんですよね。オレンジの香りがぎゅっと、もっとふわふわした事言うとオレンジという概念がぎゅっと詰まったような、軽やかで鮮やかな感じ。華やかとも美味しそうとも違う、自然体のオレンジの鮮やかな感じ。
日差しみたいだな、とも私は感じました。浴びた時に気持ちが軽くなっていく、昼の日差しみたいな味わい。その感じがVeilの"彼女"を思い起こさせるんですよね。コミックスの最後に名前は出てくるのですが私は彼女と呼んでみます。目が見えないというハンデから咄嗟に想起させるようなひ弱さはなく、かといってなんの助けも要らないような岩のような強さはなく。その掴みづらい輪郭を無闇にわかりやすくしようとせず、あるがままにそこに在って微笑んでいる、日差しのような自然な軽やかさの彼女。その在り方を思い起こさせる味わいでした。いいな……素敵だなぁ……このお茶も彼女も……。

美味しかった……。ゆっくり余韻に浸っていたらnoteを書く頃には日が暮れてしまいましたが。窓の外まっくらだ。オレンジミントと似た味なのかな?と飲む前は思っていたんですけど、結構違うなぁ、と個人的には感じました。オレンジの体温の方がどことなく端正な味わいな気がする。
あえて細かく見ないでおいた(抽出時間だけ見た)リーフレットを開いてみると、「さわやかで美味しいわ。目が覚めるってこうなのね。」と彼女の言葉で綴られていてああ……って噛みしめてしまった。朝に目覚めても視界に変化が起こらないであろう彼女。真っ暗な視界が開けて朝の日差しが差し込むあの光景を、この茶葉の香りによって彼女は体感したんだなぁと思うと。彼女の感性と茶葉の香り、どっちも最高だなぁと噛みしめてしまいますね。

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