『密やかな結晶』 小川洋子
すごい哀しい話。
ある島に暮らす人は、だんだんといろんなものの記憶がなくなっていく。たとえば鳥。香水。エメラルドなど。そして、なくなっていくものの描写がとにかく綺麗。
小説の中に、なくなっていくものだけが納められたチェストがでてくるのだけど、素敵すぎる。デザインしたい。なんとなく、アールデコ調の脚付きのチェストかなと思っているけれど、もっとさりげなくてもいいかもしれない。昔の図書館にあった図書カード入れみたいなもの。
そして、その島には、記憶がなくなる人となくならない人がいて、記憶がなくならない人は秘密警察につれていかれてしまう。
なんとなくだけど、私は記憶がなくなってしまう側の人間なような気がしながら読んでいたので、読み終わったあと、想い出せない大切なものがたくさん世の中にはあったような気がして、本当に哀しくなってしまった。
作者は、アンネ・フランクの過ごした時代を思い出しながら書いたとも回想しているようだけれど、私はミヒャエルエンデのモモを思い出しながら読んだ。別にドイツっぽい雰囲気というわけではないのだけど。
まぁ舞台は島なので、まったく大陸感がないので、それが大きい気がする。なんとなく北欧っぽい。寒くて、海と山が近くて。
数年前に、翻訳がでたそうなので、英語でも読んでみようかなと思っている。
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