【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校

「数学の難しい問題をサラッと解いてしまう人の頭の中って、どうなっているんだろう?」

という問いに答えることが、【簡潔答案】シリーズの目標です。

【簡潔答案】シリーズでは、数学の大学入試問題に対し、出題者が想定していると思われる最短経路の解法をご紹介します。これにより、
 〇 クリティカルな思考とは何かを実感して頂く
 〇 誘導への乗り方を明確に示し、理解して頂く
ことを目標にしています。また、単純計算の過程は割愛することで、
 〇 論理の流れを明快に追って頂ける
ようになっております。計算過程を除けば、難問でも1~2分で答えまでの道筋が見えるものなんだ、ということを実感頂きたいと思っています。

【簡潔答案】シリーズの至らない部分として、
 △ 解法が一通りしか示されていない
ことが挙げられます。問題との相性や試験を受ける日のコンディション等によって、模範解答が思いつかないことも多々あるはずで、そのような時、別解が役立ちます。数学の試験で安定して高得点を取る、いわゆる"できる人"は、方法Aでダメそうだと思ったら方法B、それでもダメなら方法Cと、何通りものバックアップを用意し、ぽんぽん引き出してくるものです。【簡潔答案】シリーズは、王道的な考え方を身に着けることに特化しておりますので、敢えて別解は載せていません。フォローアップとして、別解は【別解演習】シリーズを別に作成致しますので、そちらも併せてご覧いただければ幸いです。また、
 △ 計算部分は自分で手を動かして確かめる必要がある
ことも【簡潔答案】シリーズで手が回っていないところになります。式変形の工夫が早解きのカギになるケースでは変形のコツを解説しますが、四則演算レベルのことは、計算練習のつもりで、各自ご確認ください。私からのお勧めとして、論理の理解と式変形の確認は別々に行うと良いかと思います。まずは大きな流れを掴み「へぇ~そうなんだ」と思ってから、細かな計算をきちんと確かめる、という習慣付けをすると良いかもしれません。

2021年度防衛医科大学校医学科

今回扱うのは、2020年10月24日(土)に行われた、防衛医科大学校医学科、令和3年度入学者選抜試験の択一式数学問題です。防衛医科大学校は、いわゆる「大学」と異なり、防衛省の職員としてお給料を頂きながら医学を学ぶ学校です。卒後一定期間は基本的に公務員として医療に携わることになります。

偏差値は一般の大学医学部と同様、65~70の高水準です。受験日程が一般の医学部入試よりも3~4ヵ月も早いため、東大や医学部を目指す受験生が力試し的に受験することもあります。

では、小問1つあたり1~2分で、解いていきましょう。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-01

私が生徒さんに常々お伝えしている、「問題文に書いてある日本語をそのまま式にする」ということさえ意識すれば自然に解ける問題です。4/kaの整数部分が1と言っているのだから、4/kaが1以上2未満であるという式を立てる。あとは
 ・二重根号を外す
 ・連立一次不等式を解く
 ・有理化する
という基本計算ができれば、問題解決です。

以上を守っていれば、次の問題も全くもって代わり映えのない問題、取らなければならない問題であることがお分かり頂けるかと思います。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-02

では、次の大問。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-03

選択肢の形から、DCの長さは使わなそうだ。
選択肢は全て3の倍数だから、ABの長さは関係ある気がする。
つまり、ACをABと結び付ければ良さそうである。
ACは三角形ACD上の辺、ABは三角形ABD上の辺。
三角形ACDと三角形ABDを繋いでいるのが、辺AD。
だからまず、ACとADを繋げる式を立てよう。途中でθも絡められそう。
という順序で思考します。

この思考以外ダメ、というわけではありませんが、こう考えると数分で解けることは確かです。そして、「ACをθを用いて表させられた」というのを出題者からのメッセージだと意識して次に進むことで、次問の方針が簡単に立ちます。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-04

解答に必要な辺AC, CD, DAを、直前で求めさせられたAC=6sinθを用いて表すことから始めます。なぜ、ここから始めたかと言うと、入試問題では往々にして、前の問題には出題者からのメッセージがあるからです。100%うまくいく保証があるわけではないが、なんとなく、こっちへ行けと言われている気がする、という嗅覚を身につけましょう。

表し終わったら、要するにsinθの値さえわかれば問題解決だということが見て取れますので、sinθを求めることに注力します。わかっていないことをわかるようにするためには、何らかの条件を使わせてもらわねばなりませんから、まだ使っていない条件であるDCの長さを利用すれば良いですね。計算含めて5分以内には解きたい小問です。

次にいきましょう。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-05

定数の文字が含まれる関数の問題。
 ① t=2^xと置き、降べきの順に整理して微分する。
 ② 定数分離して考える。
という二つの方針が即座に頭に浮かぶと良いです。

どちらを使おうか、となるわけですが、複数の方針で迷った場合は出題者からのメッセージを汲み取ろうという目で問題文を見直すことがポイントです。そうすると、今回は問題文が最初から、定数 k を分離してくれています。ですから、わざわざそうしてくれているものを勝手にほどいたりせずに、既存の式を尊重して②の方針で式をまとめていくと、すっきり解くことができます。慣れれば問題文を読んだり計算したりする過程を含めて2~3分あれば十分答えに辿り着けるようになります。

なお、念のため①の方針でやってみましたが、極めてややこしくなりました。解けるか、解けないかと言われると、解けますが、どんなに早い人でも15分程度はかかってしまうかと思います。試験時間のことも考えると、避けるのが「正解」でしょう。

なお、指数法則に慣れていない方はt=2^xと置いた上で定数分離しても良いですが、2^xのまま扱えるようになると、次の問題が極めて簡単に(1分程度で)解けます。

【簡潔答案】2021年度防衛医科大学校数学-06

簡単ですね。では、次の問題。(※以下、有料記事になります。問7~問15を解説します。)

ここから先は

3,563字 / 9画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?