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VOL. 03 同性愛

01月20日(水)

■千秋の入院する病院

羽村先生,千秋が入院する病院に見舞いに.

病室に飾る花瓶に水を入れたり,

千秋が使う洗面用具のセットを棚に置いたり.

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「別にお互いやましいとこなんかあるわけもないんだけど,
変な噂でも立ったらキミにとってよくないからね」
「なに?」
「な,なに?」

花瓶の花を病室に持っていく羽村先生.

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◻️参考情報)病院の時計は1215.

羽村先生,そっと病室に入り,花瓶をワゴンの上に置く.

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眠っていた千秋が目を覚ます.

羽村先生:「起こしちゃいましたか」

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千秋:「まぶしいわ」

カーテンを閉める羽村先生.

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羽村先生:「全治二週間程度ということですから,うまくすれば,もっと早く退院できると思います」

無言で話を聞く千秋.
羽村先生:「ただ,念のため,定期的に見てもらった方がいいみたいですね」

エスカレータで突き飛ばされたときのことを思い出す千秋.

羽村先生:「段の間にヒールが入ったって聞きましたけど」

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千秋:「ええ,ドジねえ」

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羽村先生:「いえ,僕なんか,しょっちゅうですよ.あの,よく駅の階段とかで」

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千秋:「そこに黒い包みがあるでしょ」
羽村先生:「これですか」

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冷蔵庫の上に置かれている包みを手に取る羽村先生.
千秋:「ネクタイ」
羽村先生:「僕にですか」
千秋:「ええ」

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包みを開ける羽村先生.

羽村先生:「どうですか?」
ネクタイを胸元に当てて千秋に見せる羽村先生.

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千秋:「似合うわ.とっても」
羽村先生,照れ笑い.

鏡で確認.

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千秋:「もう少し眠りたいの」
羽村先生:「あ,それがいいですね」

羽村先生:「僕は,あの,廊下で本読んでますから」

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羽村先生:「何か欲しいものがあったら言って下さい」
千秋:「ええ」
廊下に出る羽村先生.

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01月21日(木)

■朝の井の頭公園駅

電車到着.

ドア前の人を押しのけて降りる羽村先生だが……

上着のボタンが取れてることに気付く.

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ホームでボタンを探す羽村先生.

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閉まったドア越しに車内を覗き込むが,見つかるはずもなく.

見つからないので,仕方なく改札に向かいかける羽村先生の前に現れる繭.

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羽村先生:「ああ,おはよう」

ボタンを掲げてテヘな繭.

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『ああ,なあんだ』という表情の羽村先生.

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◻️繭がホームでボタンを拾う?

■登校途中の井の頭公園

繭が公園の石段に座ってボタンを付けてる.

なお,羽村先生は石垣に隠れて繭の横にへたり込んで,他の生徒に見られてないか廻りをキョロキョロしてる.

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羽村先生:「やっぱりいいよ,自分でできるから」
繭:「すぐだから」

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羽村先生:「けど,こういうとこ」
前を通過する電車を気にする羽村先生.

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繭:「平気だよ.バスケの部員と顧問なんだから」

羽村先生:「ねえ,まさかそのために入部したんじゃ」
繭:「うん」

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羽村先生:「なに考えてんだか」

ボタン縫い付け完了.
繭,上着を羽村先生に手渡す.
繭:「はい」

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羽村先生:「ああ,ありがと」
ささっと上着に袖を通す羽村先生.

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学校に向かって歩く羽村先生.繭があとから走って追いついて来る.

繭:「先生」

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繭:「あの人,結婚する人,どうしてる?」
羽村先生:「どうって?」

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繭:「事故ったとか」
羽村先生は『繭が知ってるはずないのに』という表情.

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羽村先生:「キミには関係ないよ」

立ち止まってコートを羽織る羽村先生.
繭:「大丈夫?」

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羽村先生:「十日もしないうちに退院できる」
繭:「よかった」

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羽村先生:「キミが心配してくれるとはね」

歩き始める羽村先生と繭.

羽村先生のすぐ後ろを歩きながら話しかける繭.
繭:「先生」
羽村先生:「ん?」

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視線を下げて話す繭.
繭:「あたしね」

繭:「わざとじゃなかったの」

立ち止まる二人.
羽村先生:「え? なに?」
繭の顔をのぞき込むように見る羽村先生.

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繭:「ただ,あのときね」

羽村先生:「ん?」
羽村先生の顔を見る繭.

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繭:「先行く.噂になったら困るから」

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走って先に行く繭.

『なんやろな?』という表情で小首をかしげる羽村先生.

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歩き始める羽村先生.

昨日と同じように,穏やかな朝の日差しで一日が始まりを告げる.

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そして,僕のささやかな希望といえば,あしたも同じようにこの朝を迎えられる.

ただそれだけだった.

■放課後のバスケ部室

部員の皆さん着替え中.

部員:「もう来ないだろうね,あの先生」

部員:「羽村ぁ? そりゃもう,あんだけいじめたら,いじけて来れないんじゃないの」

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部員:「あははは」
練習に向かう部員たち.

話す部員の方を見る繭.

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◻️繭は,このとき羽村先生が部員から嫌がらせを受けていることを知ったか?

■体育館

繭が佐伯先輩に羽村先生を顧問として認めることを訴えている.

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佐伯先輩:「困るなあ,私に言われても」

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佐伯先輩:「部員みんなの意見だから.あの先生が顧問じゃイヤだっていうの」

タオルをボールのカゴに置いて行く繭.

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佐伯先輩:「待って」
立ち止まって振り返る繭.

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佐伯先輩:「私からワンゴールできたら,認めてもいいわ」

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部員の方を見て,みんなに確認をとる佐伯先輩.
佐伯先輩:「いいわね」

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部員のみんな:「はい」

佐伯先輩,カゴからボールを一個とって,繭にパス.

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■昭和理科大研究室

放課後,羽村先生,昭和理科大に顔を出す.

樋口,実験用のマウスに何かを注射中.

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◻️私はこういうシーン苦手でして.

ドア越しに研究室をのぞき込む羽村先生.

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助手:「樋口さん」
ドアの方を指さす助手.

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樋口が振り返るとドアの向こうに羽村先生.

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研究室を出て,校内を歩きながら話しをする二人.

樋口:「もう二三のメーカーが研究に資金援助を申し込んできてる」
羽村先生:「そうか」

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樋口:「なんだ.お前まだ動物実験なんかにこだわってんのか」
羽村先生無言.

樋口:「人間の生活にフィードバックしない学者の研究なんか,オレに言わせれば無用の長物だ」

羽村先生:「オレはそうは思わない」
樋口:「モラルで飯は食えんぞ」

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校内のベンチ前にきた二人.

樋口:「わからんのか.教授はお前のそういうところを嫌って,助手の席から外したんだ」

ベンチに腰掛ける樋口.
羽村先生:「バカ言うなよ.オレはお嬢さんと婚約してんだぞ」

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隣に腰掛ける羽村先生.
羽村先生:「自分の娘の」

樋口:「お前に借りがあるからだろ」

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樋口を睨む羽村先生.タバコをくわえる樋口.

樋口:「教授が学会で発表した論文,ありゃお前のだ」

『何だって!?』という表情で樋口を見る羽村先生.

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樋口:「ま,この世界でよくあることじゃないか」
タバコを差し出す樋口.

タバコを払い落として立ち上がり,樋口に背を向ける羽村先生.

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樋口:「お前,春から研究室に戻れると思ってんだろ」
立ち上がってタバコを拾う樋口.

羽村先生:「どういう意味だ」

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樋口:「欠員が出るなんて,聞いてないからな」

研究室に戻る樋口.

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疑いながらもショックを隠し切れない羽村先生.

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羽村先生,研究室に戻って教授と会話.

羽村先生に対して,何となくしらじらしい感じで対応する教授.

教授:「キミも結婚前に何かと大変だねえ」
羽村先生:「えぇ」
教授:「ははは」

教授:「千秋のやつも案外とそそっかしい娘だったなあ」

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羽村先生:「先生」
教授:「ん?」

欠員の件を聞いてみたい羽村先生だが……

羽村先生:「あ,いえ」

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教授:「今度,うちの方にも遊びに来たまえ.妻がキミにご馳走をしたいといっていたよ」

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羽村先生:「はい.是非」

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欠員の件は聞けなかった羽村先生.

■体育館

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繭,佐伯先輩と一対一で対戦中.

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佐伯先輩,繭のゴールをブロック.

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息が上がっている繭.
佐伯先輩は余裕の表情.
佐伯先輩:「もうおしまい?」

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佐伯先輩の隙をついてボールを奪う繭.

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繭,当て身で佐伯先輩を倒して……

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無理やりゴールを奪う.

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倒れた佐伯先輩に駆け寄る部員たち.
部員:「先輩! 大丈夫ですか!」

部員:「ちょっと,今の完全にファールじゃないの」
佐伯先輩:「いいのよ」

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立ち上がる佐伯先輩.

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繭をひと睨みしてから,部員たちに笑顔を見せる佐伯先輩.
佐伯先輩:「さ,練習始めるわよ」

部員:「はい」

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練習を再開する佐伯先輩たちを見る繭.なんとなく『やってやったわ』という表情.

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◻️参考情報)体育館の時計の時刻は1330.だが見なかったことにする.木曜日のこの時間は2Bの生物の授業だったような気がするし.

■千秋の入院している病院

羽村先生,千秋のお見舞いに.

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花瓶の花が華やかなものになっていた.あと,果物カゴもあったり.

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繭が付けてくれたボタンをイジリながら溜め息の羽村先生.

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千秋は寝ていたので特記事項なし.

01月22日(金)

■体育の授業風景

学年・クラス・時限とも不明.

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◻️例によって,何時間目かわからんね.多分1〜2時間目じゃないかとはおもいますが.

■2B教室

漢文の授業中.

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◻️何時間目の授業かはわからなかった.

◻️ていうかさぁ,机の配置が5╳6から5╳5になってしまってるのだが.

繭,欠席の直子の机を見て心配そう.

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教室の後ろのドアをバーンと開けて,直子が3日ぶりの登校.

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◻️ドラマ内では三日ぶりとなっているが,私のタイムライン分析によると中三日である.

直子:「すみません,寝過ごしちゃいました」

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先生:「相沢.お前はアレか.三日も寝過ごすか.うん?」
生徒達,ややウケ.
先生:「はい,席ついて」

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『おっす,おっす,グータッチ』で席に着く直子.

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繭と直子,変顔コンタクト.

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ホッとした笑顔の繭.

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■お昼休みの購買周辺

購買へ向かう直子と繭.

直子:「もう,三日間,お腹の中,ぴーひゃらぴー状態」

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繭:「お見舞いに行こうと思ったんだけどさ」
直子:「トイレットペーパー持って?」

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繭:「バカ(笑)」

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直子:「うそうそ(笑)」

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藤村先生が柱にもたれている.

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直子が一瞬で厳しい表情になる.

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藤村先生:「おはよう」

軽く会釈する繭.

直子:「おはようございます」
直子は棒読みの挨拶.

他の生徒達が藤村先生にパンを買ってきて,先生の元に集まってくる.
直子:「行こ」

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直子は藤村先生から逃げるように校舎の方に戻っていく.

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繭は『あれ?』という表情で直子をの方を見る.

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繭,二三歩行きかけてから,立ち止まって藤村先生の方を見る.

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遅れて直子の後を追って行く繭.
繭:「直!」

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■お昼休みの生物準備室

新庄先生,羽村先生と昼食.

新庄先生:「それでもな,裁判になったら,母親の方に分があるらしいわ」

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羽村先生:「そうらしいですね」

新庄先生:「その上,向こうの再婚相手いうたら,大手の証券会社の部長さんやねんて.貴広の足はあんなんやし.オレの勝てる見込みはないっちゅうことや」

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羽村先生:「新庄先生も,再婚なさったらどうですか」
三角フラスコで沸かしたお湯で,コーヒーとお茶を入れる羽村先生.
新庄先生:「相手がおらんわ.それに結婚はこりごりや」
羽村先生:「そうですか」

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羽村先生が婚約中なのに気付く新庄先生.
新庄先生:「ああいや,これから結婚しよう言うてるヤツの前で言うことやないわな」

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羽村先生:「いえ」

新庄先生:「けどな,結婚なんてな,ええのん,ほんま最初の何ヶ月かだけやで」

新庄先生:「だんだん男は,精気吸い取られていくっていうか」

新庄先生:「ほんま.あんたなんかおっきいみたいやから,もう心配で」
羽村先生:「ふふ」

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新庄先生:「たまにはなあ,こうビシッと,ビシッといったらなアカンで」
割りばしを折りながらの新庄先生.

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羽村先生:「ビシッ,ですか」
新庄先生:「そや,男らしいとこ見せたれ」

窓際に移動して外を見ながらお茶をすする新庄先生と,席に座ったままコーヒーをすする羽村先生.

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羽村先生:「知ってますか.カマキリの共食いの話し」

新庄先生:「ああ,あの,メスがオス食ういうやつ」

羽村先生:「交尾の前,メスはスキあらばオスを食べようとします」

羽村先生:「まず,頭を噛み切って」

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羽村先生:「それから食べ始めるんです」

新庄先生:「え? 交尾のあとやないの?」

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◻️新庄先生,その手の動きはやめよう.

羽村先生:「頭がなくても,オスの性行為は止まりません.つまり,昆虫の頭は抑制中枢神経の座にあるので,メスは頭を食べることで,性行為を活発化することができるんですね」

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新庄先生あまり理解できてない様子.
新庄先生:「ああ,まあとにかく,力でもメスにはかなわんちゅうことやろ」

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頷く羽村先生.
新庄先生:「悲しいんやなあ,オスって」
羽村先生:「まったく」

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新庄先生:「けど,ほんまなんでもよう知ってんなあ」
コーヒーをすする羽村先生.
羽村先生:「経験のない,知識だけですけどね」

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新庄先生:「それって,もっと悲しいんちゃう.わははは」
羽村先生の方をポーンとたたく新庄先生.

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■放課後の教職員ロッカールーム

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繭,教員のロッカールームへ来て,部活へ向かう羽村先生を見つけてからかう.

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繭:「ふーん,エライじゃない」
羽村先生:「ん?」

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繭:「いじめられたのに,めげずにクラブに出るんだ」

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羽村先生:「別に,にいじめられてなんかいないさ」

繭:「うんうん」

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羽村先生:「公式のルールもきっちりと把握した」

繭:「へぇへぇ」

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羽村先生:「新しい練習メニュー.新庄先生に色々聞いてね」
練習メニューを繭に見せる羽村先生.

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メニューを見て目を丸くする繭.
繭:「ほぉほぉ」

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羽村先生:「大会前だから,ビシビシ行くよ」

繭:「きゃ」

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繭:「素敵(はーと)」

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繭からメニューを取り返す羽村先生.
羽村先生:「今のうちだけだ.そうやって人をからかって喜んでられるのは」

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部活の練習に向かう羽村先生.

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飛び跳ねるようにしてついて行く繭.

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◻️いやもうね,この付いて行き方がかわいいのよ.

■体育館

羽村先生,部活動参加.相変わらずの運動音痴ぶり.

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何とか歩きでヘロヘロの羽村先生.

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練習終了で円陣を組む部員.

佐伯先輩:「解散」
部員:「お疲れさまでしたあ」

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ボールをカゴに入れて部室に向かう部員たちと,へたり込んでる羽村先生.
羽村先生:「ご苦労さん.お疲れさま」

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最後に繭がカゴにかけていたジャージを取って,ニコッと笑顔で部室に向かう.

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ボールカゴを用具室へ引っ張っていく羽村先生.

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■用具室

下級生と用具室へ向かう羽村先生.

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羽村先生:「結構きついね.特にあのアヒル歩きっていうの.みんなよくやってるね」

カゴの置き位置を確認する羽村先生.
羽村先生:「えーっと,これはあの奥か」

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カゴを用具室の奥まで押していく羽村先生.その間に下級生たちが一斉に用具室の外に出て……

ドアを閉める.
羽村先生:「おい!?」

羽村先生.急いでドアに駆け寄るが……
部員:「先輩に言われたんです」
羽村先生:「先輩?」

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部員:「ごめんなさい」
鍵をかける下級生たち.

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羽村先生:「おい,こら,開けなさい!」
ドアを開けようとするが,外からは誰の反応もない.

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羽村先生:「こんなことして,何が面白いんだあ!」

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何度もドアをたたく羽村先生.

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■バスケ部室

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帰って行く下級生と帰り支度する繭.
下級生:「佐伯先輩,お先に失礼します.お疲れさまでした」
佐伯先輩:「おつかれさーん」

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◻️確かに佐伯先輩が言ってるよね?

繭,佐伯先輩と二人きりになる.
佐伯先輩:「そんな慌てて帰ることもないでしょ」

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笑顔で繭の方に寄ってくる佐伯先輩.
佐伯先輩:「あなたってセンスあるわ」

佐伯先輩:「他の子がクズみたく見えるもん」

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立ち上がって佐伯先輩を見る繭.

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佐伯先輩がさらに近づいてきて……

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キスしようとした寸前……

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繭が顔をそらしてかわす.

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◻️繭のこの『シュン!』という感じのかわし方,嫌いじゃない.

佐伯先輩,そのまま繭を抱きしめる.

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繭は状況を把握し切れない様子の無表情.

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佐伯先輩,繭の髪をかき上げ,

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首筋にキス.

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『あ,やべ』という表情の繭.

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佐伯先輩を振り切って慌てて部室を出て行く繭.

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部室を出ていった繭をの方を見て不敵な笑みの佐伯先輩.

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■正門

もう日が暮れて真っ暗になってる.

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繭,正門でツーショット写真を見てにやけながら羽村先生を待つが来ず.

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正門から体育館の様子をうかがう繭.

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体育館消灯.

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■用具室

一方その頃……

羽村先生,何とか出ようとするが無理.

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昨日の樋口との会話を不意に思い出す羽村先生.

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『春から研究室に戻れると思ってんだろ』
『どういう意味だ』

『欠員が出るなんて聞いてないからな』

寒そうな羽村先生.

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タオルをマフラー代わりにして寒さをしのぐ羽村先生.

01月23日(土)

■朝の用具室

生徒の悲鳴でみんなが集まってくる.

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生徒:「どうしたの?」
そこに胴着姿の新庄先生がやってくる.
新庄先生:「なにしとんや」

生徒:「泥棒が,いるんです.中に」
新庄先生:「泥棒?」

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用具室に入っていく新庄先生.

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マットをかぶって隠れている羽村先生に向かって竹刀で思いっきり小突く新庄先生.
新庄先生:「よいしょお!」

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竹刀でマットをめくり上げる新庄先生.

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羽村先生:「痛ぁ,なにすんですか」
小突かれた足をさする羽村先生.
『泥棒』が羽村先生であることに気付いた新庄先生.
新庄先生:「なにしとんや」

羽村先生:「冬眠ですよ」

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新庄先生:「ほお」

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■朝の生物準備室

羽村先生,閉じこめられた件に対して激おこの羽村先生と爆笑中の新庄先生.

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羽村先生,髭剃り中.
羽村先生:「笑い事じゃないですよ.寒くて.あれ,マットなかったら死んでましたよ」

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羽村先生:「うぃ〜っくしょん」

宮原先生が持ってきたタオルを受け取る新庄先生.
新庄先生:「ああ,すまんすまん」
宮原先生も大ウケ中.

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羽村先生:「小学生レベルのいじめですよ.あんなの」
新庄先生:「怒ることあるんやなあ.あんたでも」

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羽村先生:「そりゃそうです,あた」
ひげそり中にアゴを切った羽村先生.

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新庄先生:「そりゃそうや.はい」
タオルを渡す新庄先生.

始業のチャイム.

まだ笑いの止まらない新庄先生.
新庄先生:「腹痛いわ」
羽村先生:「はーっくしょん」

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◻️羽村先生のくしゃみはやっぱり格が違う(笑)

最後まで笑いの止まらない新庄先生.

■視聴覚室

4時間目終了のチャイム.

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直子が視聴覚室へやってくる.

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ドアをノックする直子.
藤村先生:「どうぞ」

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意を決したように教室に入る直子.

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藤村先生は片耳にヘッドホンを当てて教材テープを聞いている.

直子:「あの,何か用でしょうか」

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テープダビング(?)終了で立ち上がって,各机のテープを取り出していく藤村先生.
藤村先生:「誰にも話してないだろうね」

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藤村先生:「誰かに話して公になったら,キミはもちろん退学になる」

じっと藤村先生を睨むように見つめる直子.

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藤村先生:「でも,学校側は隠したがるからね」

藤村先生:「教師の僕は転勤になる程度の処分だと思うよ」

直子:「あたし,言いません.絶対言いませんから」

直子:「何もなかったことに,しますから」

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直子:「失礼します」

教室を出て行こうとする直子.
藤村先生:「相沢」

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ブラインドのスラットを閉じる藤村先生.

藤村先生:「これ,何だかわかる?」
ビデオテープを見せる藤村先生.

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藤村先生:「このあいだの一部始終を撮影してたんだよ」
『信じられない』という顔で藤村先生の方を見る直子.

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藤村先生:「キミが卒業するときに,僕からの卒業証書として渡してあげるよ」

テープを奪い取ろうとする直子.

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藤村先生:「それまで,僕が呼んだら必ずくるんだ」

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直子の頬を指でなぞる藤村先生.
藤村先生:「二人で楽しもうよ.な」

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直子の頬にキスしようとする藤村先生.

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教室のドアをノックする音.

藤村先生:「はい」

慌てて取り繕う藤村先生.
生徒達が教室に入ってくる.
生徒:「先生,やっぱりここにいた」

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生徒:「一緒に食べましょうよ」
藤村先生:「よしよし」
みんなと教室を出る藤村先生.

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生徒:「先生,あの子何なんですか」

藤村先生:「いや,なんかね.テニスを教えてくれってさ」

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直子をほったらかしにして,生徒達と教室を出る藤村先生.

■昼休みの校内洗い場

直子,視聴覚室を出たあと,早足で洗い場へ.

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◻️参考情報)校舎前の時計は1230.

一生懸命に顔を洗う直子.

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■昼休みの体育館

一人体育館に入り,髪をほどく直子.

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二階でラーメンをすする音に振り返る直子.
新庄先生がカップラーメンをすすっている.

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直子に気付いた新庄先生.

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新庄先生:「お,食べるか? ひとつ」

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新庄先生を見つめる直子.

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もう一つのカップ麺にお湯を注ぐ新庄先生.

蓋をして,下を見ると直子の姿が見えない.

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『まあええか』という様子で,自分のカップ麺の続きをすする新庄先生.

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直子,階段を上がってくる.

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新庄先生のそばまで来た直子.それに気付いた新庄先生.
新庄先生:「たまに食べるのおいしいねん.オレはしょっちゅうやけどな」

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新庄先生,割りばしを割って,カップ麺に乗せて,直子に手渡す.

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カップ麺を受け取る直子.
新庄先生:「冷めるで.はよ食べ」

直子,新庄先生の隣に正座で座り込む.

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直子,ラーメンを食べようとするが,大粒の涙がこぼれる.

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新庄先生:「まずいんか」
首を横に振る直子.

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直子の様子が気になりながらも無言の新庄先生.

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01月24日(日)

■羽村先生のアパート

アラームに起こされる羽村先生.

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◻️参考情報)時計は0930.

アラームを止めて二度寝しようとする.

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が,何かを思い出して起きる.

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■桜川高校グランド

◻️バスケの練習試合があると騙された羽村先生が桜川高校へ.

グランドでのサッカーの練習を見てる羽村先生.

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羽村先生:「そのまま,そのまま,シュート.よし」
拍手で応援する羽村先生.

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羽村先生:「Jリーグ」

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■桜川高校正門前

寒そうに待つ羽村先生.咳き込み&くしゃみ.

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ランニングで前を走っていくラグビー部員に声を掛ける羽村先生.
羽村先生:「すいません」

羽村先生:「すいません.ここ,桜川高校ですよね」
ラグビー部員:「うっす」

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繭が走ってやってくる.

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走ってやって来た繭を見つけた羽村先生.
羽村先生:「随分遅いなあ」

缶入りドリンクを掲げて走って来る繭.

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羽村先生:「みんなは?」
缶入りドリンクを見せる繭.
繭:「どっち?」

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羽村先生,缶コーヒーをチョイス.
羽村先生:「あぁ」

羽村先生:「温かい」

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ほっぺに缶コーヒーを当てる羽村先生.

羽村先生:「あ,ダメだよ.私服で来ちゃ」
繭:「日曜だから」

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羽村先生:「日曜たって,練習試合……」

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ここで,初めて騙されてたことに気付く羽村先生.
羽村先生:「またかよ」

笑顔で応じる繭.
繭:「みたいね」

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うんざり顔の羽村先生.
繭はなんか嬉しそう.

羽村先生:「もう,いい加減にしろよなあ!」

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■ファーストキッチン?

まわりを気にしてキョロキョロする羽村先生と,ドリンクを持ってくる繭.

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繭:「ウチの生徒はいないよ」
羽村先生:「ああ」

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羽村先生:「あの部長の三年生.明日会ったらきつく言ってやろうかなあ.どういうつもりかって」

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羽村先生:「こっちだって,好きで顧問やってるわけじゃないんだから」

ハンバーガーを頬張る羽村先生.

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繭:「けど,今日はいいじゃない」
羽村先生:「何が?」

繭:「おかげであたしとデートなんだから」

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羽村先生:「これはデートじゃないぞ」
不機嫌そうにハンバーガーを頬張る羽村先生.

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身を乗り出して羽村先生の方へ顔を向ける繭.

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繭:「こういう顔,嫌い?」
羽村先生:「え?」

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顔に注文をつける羽村先生.
羽村先生:「もっと目はスッとしてる方がいい」

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羽村先生:「口ももっと小さくて」

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羽村先生:「鼻もピッと高くて」

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繭の変顔に笑いをこらえ切れない羽村先生.
羽村先生:「ぷふぁ」

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繭:「やっと笑った」

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立ち上がってポケットからハンカチを取り出して,羽村先生の口元を拭いてあげる繭.

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羽村先生:「どっちが大人だかわからないな」

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繭:「あたし大人だよ」

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羽村先生:「え?」
繭を見る羽村先生.

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繭:「あ,今エッチなこと考えたでしょ」
羽村先生の肩をグリグリする繭.

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羽村先生:「考えてないよ」

鼻をすする羽村先生.
繭:「風邪?」

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羽村先生:「ああ,こないだ,体育倉庫……」

羽村先生におでこをくっつける繭.

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繭:「そうでもないよ」

ドリンクを倒す羽村先生.

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羽村先生:「あ!」

繭:「あ〜あ〜」

羽村先生:「突然,変なことすっからだよ」
ポケットティッシュを取り出す羽村先生.ポケットから一緒に『助けて』の手紙が出てくる.

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繭:「なに?」
羽村先生:「ん? うん」

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封筒の中身を取り出して,繭に見せる羽村先生.
羽村先生:「ね,これどう思う?」

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羽村先生:「時々,下駄箱に入ってるんだ」

表情が曇る繭.席に座る.

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羽村先生:「あ,これも,部員のイタズラかも」

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トレーを持ってゴミ箱へ行く羽村先生.
繭:「違うよ」

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羽村先生:「え?」

手紙を羽村先生に差し出す繭.
繭:「だってほら,顧問になる前からでしょ」

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羽村先生:「ああ,そっか」
繭から手紙を受け取る羽村先生.

繭:「ねえ,これからどうする?」
羽村先生:「どうって」

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繭:「動物園行きたい.ほら,ペンギンの話,面白かったし」

羽村先生:「はっきり言っとくけど,キミは生徒で,僕は教師なんだからね」

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繭:「だから?」

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返事をせずに先に行く羽村先生.

『べー』ってする繭.

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■移動中のバス

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羽村先生は本を読んでる.
繭:「面白いこと書いてある?」
羽村先生:「まあね」

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繭:「何て書いてる?」

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羽村先生:「人間には,3つの顔がある」
繭:「ん?」

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羽村先生:「ひとつは自分の知る自分.二つ目は他人が知る自分.もう一つは本当の自分」

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繭:「本当の自分はどうしたらわかるの?」

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羽村先生:「さあ,きっと,自分が何もかも失ったときにわかるのかも」
視線を上げてうなずく繭.

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繭:「じゃ,知らない方が幸せだね」

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■千秋の入院する病院

デートの帰り,二人が千秋の見舞いに行く.

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千秋が入院している病室.繭は病室のソファーに座っている.

羽村先生:「とにかく,検査の結果が異常なしって出てホッとしましたね」
千秋:「ええ」

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腕時計で時刻を確認する羽村先生.

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羽村先生:「夕飯みたいですね.僕,取ってきますから」

病室を出る羽村先生.

病室に千秋と繭の二人.
千秋:「わざわざ来てくれてありがとう.あなたでしょう,私を押したの」
千秋の方を見る繭.

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千秋:「心配しなくても,喋ったりしないわ.あなただって,見たこと内緒にしてくれたものね」

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じっと千秋の方を見ている繭.

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千秋:「悪いけど,ちょっと起こしてくれない」

千秋の背中を支えて起きるのを手伝う繭.

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千秋:「ありがと」
千秋が繭の頬に平手打ち.

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千秋:「これで全部おあいこね」

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微笑む千秋.無表情に千秋を見つめる繭.

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夕飯のトレーを持って病室に向かう羽村先生と花を持って見舞いに来た樋口.
羽村先生:「もう気にしちゃいないさ」

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樋口:「そうか.ああ,これな.研究室一同から千秋さんに」
お見舞いの花を羽村先生に渡す樋口.
羽村先生:「ああ,サンキュー.喜ぶよ」

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繭が病室から出てくる.
羽村先生:「あ,帰る?」
繭:「うん」

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樋口に繭を紹介する羽村先生.
羽村先生:「学校の生徒」
樋口:「ああ,そうか.よろしく」

樋口の顔をじっと見る繭.
羽村先生,樋口を繭に紹介.
羽村先生:「研究室の仲間」

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じっと見られていることに不審げな樋口.
羽村先生:「立ち話もなんだから」
樋口:「ああ」

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病室に入る樋口.

羽村先生:「気をつけて帰るんだよ」
うなずく繭.

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歩きかけてから,『あの日』の状況を思い出す.

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『ああ,アイツだわ』という表情で廊下を走っていく繭.

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◻️参考情報)病院の時計1555.

■二宮家

繭の部屋.

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夜,耕介が約束に反して繭の部屋をまた漁って,繭と羽村先生のツーショット写真を見つける.

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01月25日(月)

■職員室

◻️午後っぽい? 原作では昼休みということになっている.
◻️耕介,学校へ電話.羽村先生を「二宮耕介30周年パーティ」に呼び出す.

職員室の電話が鳴る.

宮原先生が電話に出る.
宮原先生:「はい,職員室です.羽村先生ですか.ええ,少々お待ち下さい」

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羽村先生が職員室に戻ってくる.
宮原先生:「あ,羽村先生,お電話です.2番ですけど」

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羽村先生:「あ,どうもすいません」

自席で電話に出る羽村先生.
首をかしげて職員室を出る宮原先生.
羽村先生:「はい,もしもし,お電話変わりました」

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羽村先生:「はい? あ,羽村はわたくしですけども」

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■国際館パミール

二宮耕介30周年記念パーティの会場.

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会場へエスカレーターで向かう羽村先生.

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会場の受付まわりでウロウロする羽村先生.

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耕介:「羽村先生」
呼びかけに振り返る羽村先生.

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耕介:「二宮です」

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会釈する羽村先生.

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■控室

別室に案内される羽村先生.
耕介:「いやあ,突然お呼び立てして」
羽村先生:「ああ,いえ」

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耕介:「どうぞ」

座敷のテーブルに向かい合って座る耕介と羽村先生.
耕介:「娘がこんなものを持ってましてね」
ツーショット写真を撮り出して羽村先生に見せる.
羽村先生:「ああ」

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裏面も見せる耕介.

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羽村先生:「いや,けどこれは」
取り返そうとする羽村先生.
引っ込める耕介.

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耕介:「年頃の娘を持つと,何かと心配でね」
羽村先生:「ええ,それはよく」
耕介:「ま,本来なら,母親が話し相手になってやらなきゃいけないところなんだが」

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羽村先生:「亡くなられたそうですね」

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耕介:「二年前,心臓でね」

耕介,タバコを手にする手が震えている.マッチを擦って火をつけようとするがうまくいかない.
耕介:「不摂生がたたりましてね」

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何とかマッチに火をつけてタバコを吸う耕介.
羽村先生:「あの,その写真に関しては,安心して下さい.僕は教師で,彼女は生徒だし,第一,恋愛関係になるには年の差があり過ぎて」

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耕介:「あはははは,モラリストなんだな」

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羽村先生:「ごく普通の考えだと思いますが」

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表情が一変する耕介.

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耕介:「普通ってのはなんだ! 普通ってのは!」
タバコを灰皿でもみ消す耕介.

虚を突かれた表情の羽村先生.

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我にかえる耕介.
耕介:「ああいや.母校の美大の生徒にも,あなたのような学生がいましてね.日常の中にある何気ない構図とか,そう,普通とか」
羽村先生:「僕は別に」
耕介:「私はね,そういう言葉を聞くと,妙にイライラするんだ」

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耕介:「普通っていうのは一体何なんだ」
テーブルを拳でたたく耕介.

耕介:「ふ,そんなものは何も起こさない」

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タバコを手に取る耕介.
耕介:「おこせないやつの逃避なんだってね」
マッチを擦るが手が震えてどうしようもない耕介.

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耕介:「ただ,長く生きて死ぬだけの」

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困った表情の羽村先生.

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手をたたく耕介.
耕介:「お帰りだ」

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一礼して立ち上がる羽村先生.
耕介:「あなたを」
耕介の方を向く羽村先生.

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耕介:「あなたを侮辱するようなことを言ってしまったかな」

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羽村先生:「いえ,別に気にしてませんから」

耕介:「それならいいんだが」
立ち上がる耕介.一礼する羽村先生.

羽村先生:「失礼します」

部屋を出る羽村先生.戸の閉められた部屋の方を振り返って軽く溜め息.

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部屋に残った耕介,ツーショット写真を燃やしてしまう.

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■千秋が入院する病院

羽村先生,帰りに千秋を見舞いに病院に寄る.

エレベーターを降りて病室に向かう羽村先生.何となく足取りが重い.

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受付の看護士:「もう面会時間は終わりますよ」

通り掛かりの看護士:「少しならいいですよ」
受付の看護士さんにこそっと伝える.
通り掛かりの看護士:「何たって新婚さんなんだから」
羽村先生:「まだ,結婚は」

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ドアが半開きの千秋の病室.

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ノックせずに病室に入った羽村先生.

だがしかし,千秋と樋口が抱擁中だった.

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ドアが閉まる音で振り向く二人.
樋口:「羽村」

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見ては行けないものを見た顔で,何も言わずに病室を出る羽村先生.

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千秋,悪びれた様子もなく,不敵な顔.

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■二宮家

アトリエで製作中の耕介.

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■下北沢駅踏切

心ここにあらずで踏み切りを渡る羽村先生.

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■二宮家

繭帰宅.
耕介:「あ,お帰り」

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無言で廊下を行き,部屋に向かう繭.

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■下北沢駅〜羽村先生のアパート

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羽村先生,途中の自販機でビールを三本購入.

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■二宮家

自室から廊下に走って来る繭.
繭:「部屋には入らない約束よ」
作業の手を止めない耕介.
耕介:「今日,彼と会ったよ」
繭:「え?」

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繭:「どうして?」

走ってアトリエの階段を下りてくる繭.

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繭:「どうしてそんなことするのよ」

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耕介の横で睨み付ける繭.
繭:「何を話したのよ?」

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耕介の腕をつかんで問い詰める繭.
繭:「何を話したのよ!」

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溜め息をつく耕介.
耕介:「そんなに怒ることはないだろう.ん,つまらん男じゃないか」

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作業の手を止めて踊り場の方にに歩き出す耕介.
耕介:「あんな男の一体どこがいいんだ? ああ?」

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立ち尽くす繭,
耕介:「もっとも,お前の一方的な片思いというところらしいな.彼は迷惑しているようだから」
踊り場のワゴンのウイスキーのボトルを手に取る耕介.

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耕介の方を睨む繭.

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走って階段を上り,踊り場のソファーに座る耕介の肩をつかんでさらに問い詰める繭.

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繭:「返して.写真返して!」
耕介:「もうないよ」

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耕介:「燃やしてしまった」

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立ち上がり階段を下りかける耕介.
アトリエの階段で耕介の肩をつかんで大きく揺する繭.

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繭:「返してよ.返してよ!」

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バランスを崩してアトリエの床に倒れ込む耕介.

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驚いて階段を下りかける繭.

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繭の足下にすがりつく耕介.
耕介:「一体どうしたっていうんだ.前はこんなんじゃなかっただろ」

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状況が理解できない繭.
耕介:「二人で楽しくやって来たじゃないか」

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耕介:「私を,私を一人にしないでくれ.私は,お前がいないとダメなんだ」

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 もう父を受け入れられないといった感じの複雑な表情の繭.

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耕介:「繭,週末,伊豆にでも行かないか.久しぶりにゆっくりしよう」

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耕介:「なあ繭,そうしよう.二人だけで過ごすんだ」

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耕介:「私たちにはそういう時間が必要なんだよ」

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■下北沢駅〜羽村先生のアパート

羽村先生,缶ビールをあおりながら帰っている.

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羽村先生,酔っ払いのサラリーマンとぶつかってバランスを崩し……

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駐輪している自転車の列にダイブで自転車がドミノ倒しに.

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◻️羽村先生の倒れ方が素晴らしく上手いと思うのは私だけ?

起き上がろうとしない羽村先生.

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仰向けのまま千秋に貰ったネクタイを外す.

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羽村先生,倒れた自転車を見て,やけくそ笑い.

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■羽村先生のアパート

羽村先生,アパートに帰ると,ダイニングにへたり込む.

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電話が鳴るが,出たくなさそうな羽村先生.

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羽村先生,仕方なく電話を取る.
羽村先生:「もしもし.ああ,なんだ,母さん」

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羽村先生:「うん,別に変わりないよ.うん.うん.学校のみんなもね,よくしてくれて.え? いいよ,いちいち挨拶なんて.うん.え?」

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羽村先生:「ああ,式は予定通り挙げられるよ」

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羽村先生:「わかってるよ.オレには勿体ないっていうんだろ.わかってる,わかってるから.うん.ん? うん.うん.あの,みんなに,よろしくね」

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羽村先生:「うん.はい.うん.おやすみー」
電話を切る羽村先生.

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部屋の明かりをつける.

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貰ったネクタイを引っ張るように握りしめる羽村先生.

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やるせない表情の羽村先生.

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01月26日(火)

■放課後の学校の屋上

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白衣姿の羽村先生,気落ちした感じで学校屋上からチアリーダーの練習を見ている.

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反対側に移動して,遠くを眺める羽村先生.

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バスケットボールを持った繭がやって来る.

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繭に気付いた羽村先生.

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羽村先生にボールを投げる繭.
繭:「パス」

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よける羽村先生.

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◻️羽村先生のこのよけ方,上手いと思いませんか?

笑顔を見せる繭.

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表情が一瞬緩む羽村先生.

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羽村先生,ゆっくり歩いてボールを取りに行くが,繭が走って先にボールを拾う.

羽村先生:「昨日お父さんに会ったよ」
ボールを抱えたまま羽村先生に半分背を向けて答える繭.
繭:「うん」

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羽村先生:「キミのことをとても心配している.いいお父さんだね」
『それは違う』という顔で羽村先生の方を見る繭.

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羽村先生:「きっと,お母さんのことをとても思っていたんだね」

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羽村先生に背を向けて話す繭.
繭:「お母さんは,お母さんはあたしを嫌ってた」

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羽村先生:「そんなこと言うもんじゃないよ」

羽村先生の方に向き直る繭.
繭:「嫌ってたの!」

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繭:「ううん,憎んでたの」

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羽村先生:「僕にそんなこと言っても,僕は単なる臨時の教師だ.春には結婚して,研究室に戻る」

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行こうとする羽村先生.

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ボールを落とす繭.

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ボールが非常階段を落ちていき,踊り場のフェンスにぶつかる.

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ボールがぶつかる音で,思わず振り向く羽村先生.
繭:「いや……」

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繭:「行っちゃヤだ」

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羽村先生に駆け寄り……

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胸に飛び込む繭.
繭:「いなくなっちゃイヤ! あたし……」

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顔を上げる繭.
繭:「あたしがあの人突き飛ばしたの.デパートのエスカレーターであたしがあの人突き飛ばしたのよ!」

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驚いた表情で,繭の顔をのぞき込む羽村先生.

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羽村先生の顔を見据える繭.

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繭:「だって,見たんだもん……あの人,男の人と一緒に」

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羽村先生:「やめろ,言うな!」

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繭を突き放す羽村先生.

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羽村先生:「それ以上言うな」

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繭に背を向ける羽村先生.
羽村先生:「言わないでくれ.俺は何も聞かない.何も見なかったんだ」

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羽村先生:「なにも」

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羽村先生が一人うなずき,場を離れる.

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立ち尽くす繭.

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繭は涙を流しながら,立ち去る羽村先生をじっと見つめたまま.

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あのときの僕には,誰の声も届きはしなかった.キミの告げる言葉が,事実であれ,真実であれ,あのときの僕には.

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