どちらのアクションでも

どちらのアクションでも良い場合に考えること

はじめに

 こちらの記事で述べているように、ソルバーによって戦略を計算した結果、あるハンドについては〇%チェック、〇%ベットが良いという結果になることがあります。この場合、相手が完璧なGTO戦略をとってくるプレイヤーなら基本的にはどちらの戦略をとっても期待値が同じになります。

 それならば〇%チェック、〇%ベットという頻度を再現してバランスのとれたプレイをしようと考える方がいると思います。しかし、通常のプレイではバランスをとるということより、優先して考えるべきことが4つあります(うち1つは前述した記事で説明していますが、もう一度書きます)。本記事ではこれについて述べさせていただきます。


 結論からいうと次の4つについて考える必要があります。

・相手を搾取できるアクションを選ぶ
・計算上、頻度が高いアクションを選ぶ
・後のストリートで自分がミスしにくいアクションを選ぶ
・分散の低いアクションを選ぶ

 上の2つに関してはソルバーを使っている方はほとんど意識していると思いますが、下の2つに関してはあまり意識されていない方が多い印象です。以下でそれぞれについて説明します。



相手を搾取できるアクションを選ぶ

 基本中の基本です。前記事の②でも述べたので同じ説明は行いませんが、相手が降りやすいことが確定しているなら、混合戦略上のブラフハンドは全てベットしてしまっていいでしょう。また、リバーのブラフキャッチに関しても乱数を使うより、自分で考えたほうが期待値は高いでしょう。

 説明としてはとりえあずこれで十分だと思いますが、1つここに追加しておくと、この考えの先に"相手が慣れていないサイズを使う"という考え方があります。基本的にはよく使われる50%~100%Pot程度のベットサイズに対して慣れているプレイヤーは多く、適切なアクションが返されます。しかし30%以下のベットや、ポットオバーのベットに対してはミスが増える人が多いため、選べるならばこれらのサイズを選ぶべきということです。

 もちろん適切サイズからかなり離れたサイズを使うと損ですが(100bbのオープンオールインを行えば、相手がミスしたとしても大損です笑)、シチュエーションによってはかなり極端なベットサイズを使い、たとえカウンターされたとしても期待値をあまり失わないこともあります。また、少し期待値を失ったとしてもその分相手がミスしてくれれば良いと考えることも出来ます。ハイレートで意味不明なベットサイズが飛び交っているのはこういうメタ要素もあるのでしょう。

 なお、具体的にどうやって相手を搾取するアクションを知ればいいのか、という話については具体的な搾取戦略の求め方で述べたいと思います。



計算上、頻度が高いアクションを選ぶ

 これもなんとなく分かっている方が多いと思います。例えば計算結果で1%コール、99%フォールドが推奨されていれば

・計算誤差の可能性
・相手がGTOと少しずれたラインをとった場合、1%がミスとなる可能性の方が99%側がミスとなる可能性よりも高い

 という2つの理由で、大きく頻度が偏っていた場合は頻度が高い戦略を選んだほうが無難です。(私は5%以下の頻度のアクションに関しては、特に理由がない限りは選択しないようにしています。)

 ※レンジ全体で〇%コールすればいいというな場合、各々のハンドにおける頻度は重要ではなく、1%の方を選んでも問題ないことも勿論あります。



後のストリートで自分がプレイしやすいアクションを選ぶ

相手に関して搾取可能な情報が全くない場合、相手をGTO戦略をとるプレイ ヤーと想定して問題ないでしょう(現実には全く情報がないことは稀ですが、搾取戦略がわからないことは多いです)。そしてこの記事で書いたように、通常の相手はこちらに対してカウンターを行わないため、ここで考えるべきなのはいかにGTO戦略から外れないアクションを選び続けるかということです。そのため後のストリートのことを考えて、プレイしやすい、自信のあるアクションを選ぶことが重要になります。

 わかりやすく説明するために、具体的な状況を2つほど挙げてみます。
(※相手に関して搾取可能な情報がないという前提です)

・自分がOOPでフロップCbetを打ったところ、レイズされた
・ソルバーによる計算では、このレイズに対してコールしてもフォールドしてもいい(=期待値が同じである)ことが分かっている
・レイズにコールした後はどうプレイしていいか自信がない
・自分がIPでフロップCbetを打つか迷っている(中くらいのショウダウンバリューがあるハンドを想定)
・ソルバーによる計算では、Cbetは打っても打たなくてもいいことは分かっている
・Cbet後、チェックレイズに対してコールしていいかどうか自信がない。また、Cbetをコールされてラグが落ちた場合にターンはチェックするが、リバーはどうプレイすれば良いか自信がない
・Cbetを打たなければ、ラグが落ちた場合にターンもしくはリバーで1回コールできると分かっている。また、リバーまでチェックで回った場合には一回バリューベット出来ることが分かっている。

 少し都合がいい例を出しましたが、このように書けばどちらのアクションを選ぶべきかわかると思います。上の例ではフォールドし、下の例ではフロップCbetを打たず、チェックすべきです。

 GTOによって計算されたアクションの期待値には、その後のストリートもミスなくプレイするという前提があります。プレイに自信がない場合、多かれ少なかれミスをしてしまうでしょうから、期待値が下がります。なので自信があるプレイラインを選ぶべきです。

※上記のような状況で自信のある方を選んでも相手のベットサイズやターン、リバーカードによっては正しいプレイがわからなくなることもありますが、あくまでどちらの方がミスしやすいかを軸に考えます。



分散の低いアクションを選ぶ

 これは特にHUSNG(Heads Up Sit&Go)のようにハンドではなく、1gameあたりにレーキが定められている場合に特に重要です。しかし、キャッシュゲームでも似たことが言えます。

 StarsのHUSNGを例に説明します。前提条件を以下に示します。

・PokerStarsのHUSNGはお互い初期チップ500chipから開始する
・レーキは約2%のため、プラス収支には51%のITM率が必要
=プラス収支のためには1gameあたり平均510chipをもって終えることが必要
=プラス収支のためには1gameで10chip稼ぐことが必要
・私はアンノウンに対して1gameで平均30chip稼げるスキルを持っている

 ここで、私が1ハンド目でアンノウンに、コールすれば期待値で5chip稼げるようなオールインをされたとします。1ハンド目のオールインなのでコールすればどちらが勝ってもゲームは終了します。降りたら最初から仕切り直しです。我々はこれをコールすべきでしょうか?
(※チョップやブラインドをとられる等の話は考慮しないことにします)

 お分かりのとおり、この場面では、たとえコールの方がチップ期待値が高いとしてもフォールドが正解です。このオールインに対してコールを繰り返すとレーキに負けてお金が減っていきますが、降りれば平均30chip勝て、平均的にはプラス収支で終えられます。

 これは言い換えると、その瞬間の期待値を下げたとしても分散を下げて1gameあたりのハンド数を増やすことで、1gameあたりのchipEVを増やし、最終的な収入も増やすことが可能であるということです。同じ事はポストフロップのアクションにも言えます。分散をいたずらに増やすプレイはgameあたりのハンド数を減らすために、相対的なレーキが増え、好ましくないのです。

※なお、キャッシュゲームでは期待値を捨てる必要はありませんが、それでも分散を下げる意味はあります。分散が低くなれば成績の収束が早くなり収支が安定しますし、レートを上げるのに必要なバンクロールも減らせます。

 あなたがお金の変動による快感のためにポーカーをプレイしているのでなければ、期待値が変わらない状況でわざわざ分散が大きいプレイを選んではいけないのです。



注意点

・上記のことを意識した結果、戦略がかなり歪む場合(例えばチェックレイズ頻度が異常に高くなる場合等)は必ず、ハンドのたまっている相手が搾取してきていないかを定期的に確認しておきましょう。相手がどういうアクションをとってきたら搾取されている可能性があるのか、そして相手の搾取に対して逆にカウンターする戦略についてもあらかじめ用意しておくと安心です。

・ここでは省略しましたが、弱い相手に対してはあえてポットを含まらせることで期待値を上げる戦略も存在します。これは分散を下げることとトレードオフであることが多いです。



最後に

 私はこれらの4点を考慮して、それでもどちらでもいいとなった場合のみバランスを取れた(ようにみえる)プレイをするということにしています。

 また、紹介した4つのうち何か1つだけを重視するのではなく、それぞれの要素を総合的に考慮してアクションを決める必要があります。ほとんどの状況で分散は最後に考えることになりますが、私の場合、分散が小さいという理由が最終的なアクションの決め手となることは多いです。

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