ハンド数によるプレイヤー分類

ハンド数によるプレイヤー分類と戦略の使い分け

はじめに

 皆さんはプレイ中、プレイヤー毎にタグ付けを行っていると思います。例えばリンプしたら、もしくはスタックが100bb以下ならタグをつける、相手のHUDを見て異常値があればアグレッシブ/パッシブのタグをつける等です。そして、その分類によってプレイを変えていることが多いでしょう。

 しかし、HUDの信頼性で述べたように、6maxZoomにおいて500hand程度のハンドヒストリーではHUDは信用できません。なのでほとんどのプレイヤーはアンノウンと、明らかに変なプレイをする弱いプレイヤーに大別してプレイを分けているのではないでしょうか。
 これ自体は特に悪いことではないのですが、実はもう一つ重要な分類方法があります。それはHUDに溜まったハンド数です。本記事ではこれについて4つに分けて説明します。

・ハンド数と上手さには強い関係がある
・ハンド数で分類した成績
・ハンド数で分類したアクション
・私のプレイヤー分類法と戦略の使い分け(Spin&Go)



ハンド数と上手さには強い関係がある

 私がSpin&Goに挑んでいる際、色々なスタッツを分析することでプレイヤーを分類し、分類したそれぞれのプレイヤーに対する適切な戦略を導き出せないかと考えていました。そして大量のハンドを用いてspinにおけるVPIP、リンプの有無、Cbet率等で相手を分類し、グループ毎のアクション差について調べました。

 結論からいうと、ほとんどの分類に関してはハンド数が溜まらないために、戦略の変更が有効になる場面が限られ、分類は無駄であるという結論に至りました。しかし、唯一ハンド数による分類だけは、ハンドがそれほど多くなくても有効に相手を分類できるということを見つけました。
 また、分類後のそれぞれのプレイヤーに対する搾取戦略を導くことも現実的でした。(これはspinの話ですが、友人と話した結果zoomでも同じ傾向があることを確認しています)

 冗長になりましたが、結局何が言いたいかと言うと、HUDに溜まっているハンド数が多いほど相手は強い傾向があり、ハンドが溜まっているプレイヤーとそうでないプレイヤーでは違う戦略を使ったほうが良いということです。
 (※通常、zoomにおいて500hand程度のヒストリーは戦略を変えるほどの情報量を持ちませんが、この事実を知っていれば数ハンドしか情報がないプレイヤーと数百ハンドの情報があるプレイヤーそれぞれに対してより適切な戦略を用いることが出来、より高い期待値が望めます。)

 まず本当にハンド数の違いによって上手さ、アクションが異なるのか?ということについて述べるために、調べたデータを載せます。



ハンド数で分類した成績

 200NLzoomの約20万ハンドのプレイデータにおいて、ハンド数が多いプレイヤーから順に並べ、100人ずつ順番にとってグループにした場合のグループの平均成績(bb/100hand)を友人に計算してもらいました。その結果を下に示します。(数年前のデータですが、今でも同じ傾向を示すと思います。)

画像5

 これから綺麗にハンド数が多いほど成績が良いということがわかります(ほぼ全員負けプレイヤーですが)。ちなみにspinの場合もチップ収支で同様の処理を行うと下記のようになります。

画像6

 このようにHUDに溜まったハンド数と相手の成績には強い相関があります。VPIPがおかしかったり、リンプ等を行うプレイヤーは他プレイヤーと分けて分類することが出来ますが、それ以外のプレイヤーに関しても、ハンド数という指標である程度の上手さを推測することが出来るのです。



ハンド数で分類したアクション

 ハンド数と成績に相関があるということはわかりました。しかし、異なるプレイレンジをとっているとは限りません。そこでプレイレンジが大きく違うということも示しておきます。

 説明のために、ハンド数が少ないプレイヤーをA、ハンド数の多いプレイヤーをBとします。そして$100spinでHUになった際に、エフェクティブスタック25bb付近と10bb付近で相手がSBからオープンオールインするレンジをA,Bそれぞれのプレイヤーに対して調べた結果を下記に示します。
 各ハンドの下に書かれているのが、そのハンドがオールインされた回数です。(ショウダウンハンドを調べれば相手のオールインレンジがそのまま分かります。)


 25bb付近のオープンオールインレンジ(上がA,下がB)

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 10bb付近のオープンオールインレンジ(上がA,下がB)

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 どちらのスタックでも、オールインされるレンジはかなり異なることがわかります。10bbのものは一見近いように見えるかもしれませんが、Bのプレイヤーが77-TTをオールインすることはほぼないのに対し、Aのプレイヤーはかなりオールインしてくることがわかります。
 また、Aの方が明らかにミスプレイが多いです。そしてこの結果を計算機に入れれば、この状況でどのハンドでコールするのが最適化かもわかります(A,Bに対する搾取戦略がわかる)。
 初めて対戦するプレイヤー(A)と、ハンドが多いがリークが分からないプレイヤー(B)に対して同じプレイをすることの勿体なさがわかります。

 以上でハンド数を考慮してプレイすることの重要性を理解していただけたと思います。最後にこれらを踏まえて、私がメインゲームであるspinでどのようにタグ付けを行い、戦略を使い分けていたかを説明します。



私のプレイヤー分類法と戦略の使い分け(Spin&Go)

 私はプレイヤーを主に以下の5つに分類してプレイしていました。

①タグ無し(ハンド数が少ないプレイヤー)
②ミスプレイが目立つプレイヤー(ハンド数は問わない)
③かなり目立ったミスプレイをするプレイヤー(ハンド数は問わない)
④ハンド数がそこそこ多いレギュラープレイヤー
⑤ハンド数が非常に多いレギュラープレイヤー

 そして、前述のハンド数によるアクション差を踏まえて、ハンド数の少ないプレイヤー用に対する搾取戦略、多いプレイヤー用に対する搾取戦略2つを用意していました。これをそれぞれ戦略Xと戦略Yとすると、この二つを以下のように使い分けていました。

・①と②のプレイヤーには戦略Xを使う
・④のプレイヤーには戦略Xと戦略Yの中間の戦略を使う
・⑤のプレイヤーには戦略Yを使う

 なお、③のかなり目立ったミスプレイをするプレイヤーやハンドが十分溜まってリークが見えるレギュラーに関しては特徴をメモしておき、個々にアジャストしていました。

 このように、二つの戦略を用意しておき、それに濃度をかけて使い分けることで情報が少ない相手に対しても適切に搾取を行えます。搾取戦略を二つ準備するためにはかなりの分析が必要で、非常に手間がかかりますが、プレイヤーA,Bのアクションの違いを考えると行う価値は十分あると考えられます。なお、具体的にどう搾取戦略を求めるのかということについては、近日に公開する予定の具体的な搾取戦略の求め方及び相手が搾取可能であるかの調べ方という2つの記事で詳しいことを述べようと思います。

 ※ちなみにこれらを踏まえて作成したHeadsUpのプリフロップチャートを、こちらの記事(GTO版は無料)で紹介しています。搾取版は有料ですが、無料版を見るだけでも相当HeadsUpの成績は上がると思うので、興味がある方はぜひ見て見てください。
 (PioSoverがなくても、GTOについて詳しくなくても使えるチャートです。搾取版は前述したような相手のオープンオールインレンジや、プレイヤーA,Bそれぞれの平均アクション頻度を考慮して自作したものです。)



最後に

 欲を言えば更に詳しく相手を分類したいのですが、残念ながら良い分類方法が見つからなかったのと、3つ以上のチャートを使い分けるのは流石に面倒なので私は前述した2つのレンジを使っていました。余裕がある方は更に何かで分類してもいいかもしれません。(弱レグと明らかにGTOを勉強している強レグ等。)

 私はspinにおける、A,Bに対するプリフロップの搾取戦略についてはかなり詳しく調べましたが、手間の関係からポストフロップの分析は途中で諦めました。しかし、時間が無限にあればやったほうが良いのは確かです。このように、実はポーカーには手間さえかければいくらでも成績を向上させるチャンスがあります。

 ただ、このように書いても、じゃあ自分で分析してみようと思われる方は少ないと思います。そこで相手のハンド数によってアクションが具体的にどう異なるかについて私が調べた結果を、また別記事で書けたらと思っています。(この記事の公開には時間がかかると思うので、noteをフォローして気長にお待ちいただければ幸いです。)

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