著作権法とブロッキング問題
著作権法に違反した海賊版サイトに端を発し、その問題解決方法のブロッキング(通信の遮断)が問題となっている。そもそもの問題は、著作権者の売り上げが落ちることである。その背景には紙媒体から電子媒体への変化がある。ここでは、問題から生じた解決方法(ブロッキング)に焦点を当てるのではなく、当初の問題の発生原因とその対策について考えたい。
仮にもしも、出版企業の売り上げが上がるか、あるいは変化がなければ、政府が有識者会議を立ち上げることはない。現に電子媒体に適応している事例もある。海賊版も違法ではあるが、適応例の一つとみなすことができる。
(参考:政府の審議会等一覧 http://www.cao.go.jp/council.html 注:「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」は知的財産戦略本部(首相官邸)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ の中にある。)
検討会議の議事録は8回分あり、その他にも「知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会」などもあり、具体策なども書かれている。
しかし結局は、国会討論と同様に有識者以外の無識者である傍観者には無力感が残る。結論を急ぐと、有識者と無識者の架け橋こそが重要で、残念ながらその架け橋は「ブロック(遮断)」されている。通信(コミュニケーション)のブロッキングのように。
有識者と無識者では、明確な脳内構造の差がある(ある知識体系の有る無し)が、基準となり文化や産業の発展のインフラ的土台(リテラシー)は無識者の方にある。つまり、有識者が無識者を意識することこそが、架け橋の一つである。この観点から安倍総理の「あのような人達に負ける訳にいかないのです」という発言やホリエモンこと堀江氏の著作「バカは相手にするな」(未読)は、感情的であって理性的ではないと表現したい。
自己責任には「知らねぇよ」という無関心と、不快な刺激に対する排除的攻撃性が見られる。今回の著作権問題は、出版社の売り上げ下がったときに、海賊に盗まれて「知らねぇよ」という自己責任ではなく、政府を動かして利益を確保しようとし、首相官邸の主導する会議がそれに加担しているロビー活動が見られる。
問題の発端は、出版関連企業の売り上げ低下による出版業界の生存危機であるが、一方でその背景にはインターネットという環境変化がある。
何万年前に火を使うことで、世界が激変したであろう。農業として植物を利用することでも生活も激変した。力の発見から蒸気、化石燃料を利用する工業化でも仕事は激変した。そして、プログラミングすることで電子を利用するようになっている。
あらゆる問題は社会の一部であり、様々な問題から社会は構成されていると表現できる。社会全体を維持しているのは、政府なのか、それとも国民なのか。企業を維持しているのは、経営者なのか会社員なのか。政府や経営者は国民のためにあるときに最大に効率化されるが、政府や経営者は短期的には自身のために存続することができる。しかし、それは全体の崩壊の兆候である。
著作権や特許権などを含む知的財産権は、権利を保護することで文化や産業の発達を名目としている。ここには、文化や産業が発達すれば自ずと一般生活も豊かになる前提があったが、その前提が崩壊してしまった。生活が成り立たなくなることを権利を行使することで守ろうとするが、文化や産業と一般生活に架け橋をかけることこそが有識者に意識して欲しい点である。
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