リーグオブ情シス 第四回の出場振り返り
リーグオブ情シス 第四回に出場したので、今後出場を考える方のためにどういう風に考えて提案を作ったのかを記録しておきます。
今回2位という結果に終わりましたが、資料を作る過程と当日の登壇で2段階スキルが高まったと感じます。必ず得るものがあると思うので、少しでも興味がある人は是非次回登壇に申し込んでみてください。
資料は下記にアップしました。
リーグオブ情シスとは
イベント概要としては以下です。また、今回は初めてイベントにスポンサーがつきました。スポンサーになっていただいた株式会社アカツキ様ありがとうございました。出場商品嬉しかったです!
仮想の企業、必須システム、一人あたり月額予算の条件のもとで、様々なサービスを組み合わせて「僕がかんがえたさいつよの情報システム」を各チーム25分(質問込)の持ち時間でプレゼンするイベントです。
仮想企業のプロフィール及び課題は以下です。
社名:株式会社セキデザイン
オフィス:調布本社
沿革:1980年創業
業種:オフィス用品およびオフィス家具などの卸売を行う会社
社員数:80名
売上高:約28億
これまでオフィスに出社して打刻専用PCで打刻を行っていたが、リモートワークに移行した為システムが追いついていない。(出社した人だけが打刻している)
リモートワーク中の従業員が所定の労働時間ちゃんと働いてるのかどうか、きちんと休息を取れているのかどうかが把握できておらず、有給消化率も正しくモニタリングできていない。
私生活と仕事の環境が同じになることによるパフォーマンス低下があるのかどうか、自宅が職場になることにより従業員のプライバシーを守れているかが課題となっている。
また、出社している従業員が適度に存在するが、無駄な出社を強要していないか。会社は従業員に業務環境を提供する必要がああるが、リモートワークにおける個人の労働環境の課題を拾えているか。拾ったとして解決できているか。
果たしてリモートワーク環境下において、従業員の体調管理やストレス管理などをやるべきか?やるとしたらどのようにやるべきか?
出場のきっかけ
自分はITベンダーでセキュリティ製品を企画しています。普段からもっと情シスの立場に立った企画や提案をしたいと考えており、リーグオブ情シスにはいつか出場したいと考えていました。
今回は情シスではない自分でも親しみやすい勤怠管理というテーマであったため、思い切って出場することにしました。
過去の振り返り
まず最初に行ったのは、過去のリーグオブ情シスのYoutubeアーカイブを見ることです。第一回、第二回はあどみんちゃんによる解説動画もありましたので、そちらも確認しました。以下を特に注意しながら見ました。
・過去にどのようなポイントを評価されていたり、わかりやすいと言われているか
・逆に優勝者がどのようなポイントでアドバイスを受けているか
動画を見て得た学びは以下です。()内は学びを得た回です。
・シンプルなスライドにするのがよい(第一回)
・ビジネスに貢献できる提案になっているかが見られている(第二回)
・仮想企業の現在の業務の流れと改善後の業務の流れを書くと伝わりやすい(第二回)
・仮想企業のロゴやパワポフォーマットを作ると、なりきり度があがってよい(第三回)
以上の学びから以下の方針でいくことにしました。
方針① ロゴを作る
最初の方にロゴを作ってテンションを上げました。ロゴの下のスローガンは長寿企業ということでダサめなのがこだわりです。
当日あどみんちゃんに「これを待ってたのよ~」といってもらえて嬉しかったです。ロゴはDesignEvoというサイトで作りました。
方針② シンプルなフォーマットにする
白を基調として、できるだけシンプルなスライドフォーマットを作成しました。下部に社名とスローガンを入れて、それっぽさを出せるようにしました。
方針③ 業務の流れを整理する
まず小売店やメーカーとの関係を整理し、その上で各従業員の仕事の流れを整理しました。卸売業の仕事を理解するために、作成前に『ビジュアル 流通の基本<第5版> (日経文庫)』を読んで大枠を把握しました。
方針④ 事業に貢献できる提案をする
リーグオブ情シス 第二回の友岡社長の最後の講評を聞いて、もっと自社の事業に繋げられるような提案ができないかと考えました。今回は勤怠管理やリモートワークがテーマでしたが、リモートワークを行うことで空いた執務スペースを新事業に活用できないかと考え、営業部からの提案という形で資料に入れました。
上記の方針1~4でお見せしたスライドは出来上がったものを見せていますが、以下では作成過程含めてお見せしていきます。
発表までの流れ① 骨子の作成及びbarusuさん、Tringさんへの相談
まずは文章で提案内容の方向性を書き出していきました。いきなりスライドを作成すると方向性が迷子になる可能性があると考えたためです。文章の一部を下記に抜粋します。
最終的な提案とはかなり変わっていますが、まずは考えていることをガーッと書き出すことを優先しました。自身の経験として、考えながら調べるよりは今考えていることを文章に書き出してから読み返して考え直すほうがアウトプットのスピードが早いためです。
文章の内容を元に、スライドを起こしていきました。他の方にコメントをもらうことを考えていたため、詳細を作り切るのではなく大まかなコンセプトを共有するのに最低限必要なスライドをまとめた形です。
以下では作成途中のスライドを掲載しているため、最終的な資料とは一部違っている部分があります。下記のスライドの作成後にbarusuさん、Tringさんから頂いたアドバイスも併記します。
骨子① 社員構成
会社のプロフィールをイベントページから転載し、情シスSlackのイベントチャンネルで質疑応答されていた内容を追記しました。
また、PCのOS構成は卸という業種から考えてMacは無いだろうと考えてWindows100%にしました。
このスライドの目的は右側の社員構成を説明することです。各職種ごとに必要な対応が変わってくるので、どのような職種が何人程度居るのかは押さえておきたいポイントでした。
ここは特にbarusuさん、Tringさんの両名とも違和感ないとのことでした。
骨子② 現状の社内IT環境
イベントチャンネルの質疑応答で、特にクラウドサービスは使われていないと回答がありました。そのため、紙及びOfficeで業務が行われていると仮定しました。
■修正前
Tringさんより小売業相手の商売であればEDIもあるのではないかとコメントをもらい、EDIを加えました。EDIに関しては下記のページをご参照ください。
■修正後
骨子③ セキデザインが抱える課題
イベントページに記載されていた課題を1つずつ列挙していきました。
加えて、リモートワークを見据えた労働環境整備もテーマであったため、従業員に対するヒアリングという体で労働環境の仮定を置きました。
以下はその内の1枚を抜粋したものです。
ヒアリング内容は完全に想像で書いています。今から考えると、卸の会社の採用ページなどを見て実際の1日の仕事の流れを参考にしても良かったかなと思いました。
■修正前
barusuさんより、従業員の労働環境に関するヒアリングを入れるのであれば、もう少し実態に近い方が良いというコメントをもらいました。
例えば、上記のスライドでは管理職の方が「売上が低迷している今だからこそ、対面での綿密なコミュニケーションで打ち手を検討することが重要です」と言っていますが、実際には顧客側も嫌がると思うのでなにか別の課題を捉えたほうが良いということでした。
そのため、リモートワークにおける管理職の一般的な悩みとして体調を心配する内容としました。
■修正後
骨子④ 提案内容
課題に対して対応するための提案内容を列挙しました。
メインテーマである勤怠管理及びリモート環境整備に加えて前述のビジネスに貢献できる提案をするという方針から、提案内容に売上向上を入れていました。
この段階ではbarusuさんやTringさんからコメントをもらうために作成したため、詳細までは作りきっていません。
以下は売上向上に関する提案内容のスライドの抜粋です。
■修正前
barusuさんからテーマからぶれすぎると提案が受け入れらない可能性があるため、勤怠管理・リモートワークに絞ったほうがよいというコメントを頂きました。
そのため売上向上は提案から外し、最後に営業部からの提案という形で売上提案を入れることにしました。代わりに、他の項目の中に含めていた「リモートワーク対象者以外も安心して働けるようにする」という内容を独立した項目して書きました。
■修正後
骨子⑤ 提案構成
コミュニケーションのハブを将来的にSlackに集約したいと考えたためチャットはSlackとしていました。また、グループウェアはリモートワークでも共同で資料編集が行えるようにGoogle Workspaceを選びました。
勤怠管理システムはSlackから打刻が行える点と価格からジョブカンとしました。
FAXは下記の記事を参考にして、GAS+複合機にしようと考えていましたが記事の中にも記載がある通り、リモートワークでFAXの送信を行うためにはVPNなどが必要になります。
電話に関しては、スマホを新規に払い出すのはコスト観点から厳しいと考えたためモバイルチョイスを選んで社員自身のスマホから電話できるようにしています。
■修正前
barusuさんと相談して、業態からしてFAXの送受信は多いと考えられ、FAXのためだけにVPNは引きたくないのでeFAXを活用することとしました。
また、セキデザインの文化にSlackが合うか?という指摘があり、確かにそうだなと考え見直すこととしました。
チャットに関しては、barusuさんからは文化に合わせるならChatworkが良いのではとアドバイス頂き、TringさんからはLINE WORKSで勤怠打刻までできるサービスを探せばよいのではとアドバイスを頂いていました。最終的には費用を抑えるという観点でGoogle Workspaceのチャットを活用する方針としています。
提案構成に関しては、後ほどまた変わるのでもう一度取り上げます。
■修正後
発表までの流れ② 業務の流れを予想
次に業務の流れを洗い出すことにしました。
提案範囲が広いため業務の流れ全体を整理しないと効果が見えにくいことと、どの職種のどの業務をリモートワークとするかを決めるためです。
小売店や家具メーカといった会社間の仕事の流れと、会社内の従業員同士の仕事の流れの2点を用意しました。前者をあえて用意したのは、卸という業態の仕事の流れが視聴者の方にイメージが付きづらいのではないかと考えたためです。
後者の従業員同士の仕事の流れは、前述の『ビジュアル 流通の基本<第5版> (日経文庫)』も一部参考にして記載しています。
流れを整理するにあたって気をつけたのは、具体的にどのツールを使っているのかをしっかりと考えることです。例えば、「営業部から物流部に受注情報を渡す」という粒度で書くのではなく「営業部が受注情報をエクセルファイルに記入してファイルサーバに格納し、格納した旨を物流部にメールで伝える」という風に具体的に書くといったことです。
できるだけ具体的に書くことで、あとから文章を見たときに後続の工程にうまくつながっていない箇所を自分で発見できますし、他人からも指摘してもらいやすくなります。
上記の内容を元にbarusuさんに説明を行い、あまり勤怠管理などのメインテーマから離れすぎないよう見せ方を注意しようということになりました。
あまり受注・請求業務に深入りしすぎると、受注・請求業務自体を改善しようとしているように見えてしまってテーマからブレるためです。
そのため最終的には下記のように現状の業務がどうなっていて、どこに課題があるのかを説明するための参考情報として見せることとしました。
発表までの流れ③ 提案製品・スケジュールの最終決定
業務の流れを可視化してどの部分に対策を行っていくかを決定した後は、下記の提案構成から最終的な構成への詰めを行っていきました。
barusuさんからは、セキデザインではおそらくエクセルマクロが散在していてGoogle Workspaceに移行すると業務に支障が出るため、移行するならMicrosoft 365がよいのではというコメントをもらいました。
実際のオフィスファイルの利用実態までは考えられていなかったのですが、たしかにそうだなと考えてMicrosoft 365に変更しています。
予算案を作成した結果、予算に空きがあるとわかったため勤怠管理をTeamSpiritに変更しました。ジョブカンよりコストがかかりますがTeamSpiritでは経費精算も行えるので、利用者の負荷を軽減できると考えたためです。
また、リモートワークによる体調・ストレスの悪化のケアも課題に含まれているためリモートで産業医と面談が行えるfirst callというサービスを入れています。
最後にEDIは物理専用端末からしかアクセスできない想定であったため、リモートで接続できるようにsplashtopを入れています。
諸々を半年程度で済ませる想定でスケジュールを引きました。今回は勤怠管理も含むため、人事担当がいつ・どのようなことをしなければならないかも含めています。
また、自社の家具を社員に使ってもらうという施策もあるため家具の搬入のための営業・物流担当の作業も記載しています。
発表当日も指摘を受けましたが、諸々の社内調整などを踏まえると勤務管理/コミュニケーション基盤導入を3ヶ月程度で終わらせるのは難しいかなと今は思います。
内容が決まったので当日までに発表練習兼リハーサルを行いました。個人的な感覚ですが他人の発表を聞く際はスライドがどんどん変わったほうが興味を維持しやすいため、1スライド30秒の説明を目安に作成しています。ストップウォッチで発表時間内に収まるかを確認しながら行いました。
また、妻に発表を聞いてもらい発表に違和感がないかを指摘してもらいました。最初はかなり堅い感じで仕事のプレゼンのようになってしまっていたため、もう少し砕けた感じで発表するとよいのではとアドバイスをもらいました。
発表までの流れ④ 当日ルールへの対応
ここから発表当日の話になります。
以下の当日発表ルールが発表されました。
・コロナ前は長時間残業・休日出勤が当たり前
・コロナ前に辞めた元従業員が労働基準監督署に通報しており、立ち入り調査が行われていた
・調査の結果、リモートワークを開始してから是正勧告が届いた
- 是正報告書提出義務がある
「是正勧告とは???」と用語の意味から分からず混乱していたため、barusuさんに急遽ヘルプを求めて会議を開催しました。まず是正勧告に関してbarusuさんからレクチャーを受け、その後に対応方針を協議しました。
まず、是正勧告がどういうもので何をしなければならないかを視聴者の方に説明するために下記のスライドを入れました。今回は法令違反があったために是正勧告につながっており、是正が行われないと司法処分になるため是正が必要であることをこのスライドで説明します。
また、どの業務が長時間労働につながっていたのかをこちらで仮定を置くことにしました。営業職・物流職が長時間残業の対象候補でしたが、物流職の方が倉庫作業もあるため長時間残業を行っている可能性が高いと考えました。
仮定を置いたことで、勤務管理システムで長時間残業のアラームを設定することで必要十分な対策が打てることを説明できました。
最後に、スケジュールに是正関連の作業を追記しました。まず方針の概要を監督省庁に概要説明し、システムの導入が完了したタイミングで本説明を行う2段階としました。
発表中
リハーサルを行っていたのと当日発表ルールに関しても事前にbarusuさんと話し合えていたため、あまり緊張せずに発表することができました。
当日の発表を聞き直すと音が少し小さいかなと感じたので、音声環境をもう少ししっかり整備してから望むべきだったかと考えています。
当日Twitterで頂いていたコメントを抜粋して掲載します。
反省点
当初からbarusuさんよりもう少し提案範囲を絞った方がよいのではというアドバイスを貰っており、まさにそこが今回の提案で足りていなかったポイントだと考えています。Twitterのコメントでもその辺りは多く上がっていますね。
「会社の労働状況がかなり悪いのではないか」という仮定を置けておらず、提案を絞る必要性について考慮できていなかったのが今回の反省点です。
提案範囲を絞れていなかったことからスケジュールにも無理が発生しています。
振り返って考えるとイベントページや情シスSlackでの質疑応答の中で、労働環境が悪いのではないかというヒントは出ていたと思っており、そのヒントを読み取れなかったことも大きな反省点です。状況が不透明な中では大胆な仮定を置くことも重要だということを学びました。
もし資料を作り直すとしたら、グループウェアと勤怠管理及び体調・ストレス管理のみに提案範囲を絞るかと思います。
まとめ
情シスではない身でリーグオブ情シスの出場に申し込んだのは、今から考えると勢いでしかなかったと思います。
出場の最大のメリットは、おかしん社長やあどみんちゃんだけでなくTwitterなどからも多くのフィードバックを得られることだったと思います。
手を広げたくなるという自身の思考のクセが浮き彫りになり、逆に良いと感じてもらえるポイントも明快になりました。
もちろん発表内容が至らずに恥をかいてしまうのではないかという恐怖はありましたが、barusuさんやTringさんの助言をいただくことで徐々に自信をつけていきました。
もし次回のリーグオブ情シスの出場に悩まれる方がこれを読んでいたら、まずは申込みを行うことをオススメします。自分では実力が足りないのではないかと思っても、情シスSlackなどでアドバイザーを募集して意見をもらうこともできます。
また、barusuさんから「ひとりじゃ不安!って人はbarusuが相談乗りますよー」とコメント頂いております。とても親身にアドバイスをしてくれたので、出場したいけど自信がないという人は是非声をかけてみてください。
そしてもし出場されたら、自分がどんなことを考えて発表を行ったかを是非アウトプットしてください。後に出場される方の背中を押すことができるはずです。まだ見ぬ皆さんの発表を心から楽しみにしています。