令和5年度東大数理修士課程専門科目Aを解いての感想
令和5年度東大数理の院試問題が公開されたので、早速専門科目Aをざっと解いてみました。
専門科目Aはこちらから入手できます。
https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/kyoumu/cc78b459c04d37ba400587ef8917cc027a42a756.pdf
例年通り第1問の線形代数と第2問の微分積分が必答、第3問から第7問の中から2問選択して3時間以内で解答するという形式でした。
A第1問(線形代数) 行列の階数と固有値0に属する固有空間の基底、および特性多項式を求める問題
これは行列Aを具体的に書いてみれば良いだけで比較的簡単かなぁと思います。ただし $${x,y}$$ の関係による場合わけが必要であることに注意。あと(3)の特性多項式の問題は(2)から形がわかることに注意してから計算する方が効率的です。
A第2問(微分積分) $${\mathbf{R}^2}$$ 上の扇形閉領域での重積分の極限の問題
1.は高校微分積分の基本問題
2.と3.は勿論1.を利用して挟み撃ちの原理
というのは予想出来ますが、計算は結構ハードです。
2.の重積分は極座標を利用、3.は普通に逐次積分して出来ます。
A第3問(線形代数) 有限次元複素ベクトル空間 $${V}$$ 上の線形変換 $${f}$$ が誘導する $${\wedge^rf:\wedge^rV\rightarrow\wedge^rV}$$ についての証明問題。実は平成16年度A第6問に殆ど同じ問題が出題されています。(2. $${r=2}$$ の場合を一般化したものが本問) 1.と2.どちらも対偶を示すのが良いと思いますが、2.は正直解答が書きにくいです。
A第4問(位相空間論) $${\mathbf{R}^n}$$ の等長変換についての証明問題。
(1)は簡単。(2)はまずアスコリ-アルツェラの定理から有界閉集合上では一様収束する部分列がとれるので、可算個の有界閉集合の上昇列をとって対角線論法によって部分列が取れることを示すのが良いかと思います。
A第5問(微分積分) 周期関数 $${f_t}$$ を用いた広義積分が収束することの証明と極限の計算問題。
(1)は比較的容易であるが、(2),(3)の証明がやや難しく私もかなり時間がかかりました。部分積分を用いて(1)の関数の積分に持ち込んで評価することがポイント。
A第6問(関数論) 有理型関数の極とそこでの留数を求める。そしてそれを使って級数の和を求める。
関数論としては標準的な問題でありこれは落とせない。
A第7問(微分方程式) 連立微分方程式の境界値問題。
こちらもよくある典型問題であり落とせません。
個人的な感想としては 第1問、第6問、第7問が比較的解きやすい問題であり、第2問と第5問の微分積分の計算問題がややハードかなと思いました。
専門科目Bで点を取れる自信がない人はここである程度点が取れないとキツいと思います。今回は第3問で過去の類題も出題されました。しっかりと過去問で対策すれば合格点を取るのはそれほど難しくはないと思います。
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