マルチタスクはダメなのか?
【答え】
●ダメじゃない(というか不可避)
●シングルタスクではなくシングルフォーカスを
マルチタスクという言葉は、ネガティブな意味で使われることが圧倒的に多いですが、果たして本当にそうなのでしょうか?というのが今回のテーマです。
結論的には先に書いたように、「ダメじゃない」のですが、マルチタスクをうまく管理し、効率的に処理していく必要はあります。
今回は、マルチタスクの再定義から、マルチタスクの弊害、その管理方法や処理方法を個人レベルと組織レベルに分けてお伝えしていきます。
マルチタスクとは
マルチタスクを検索してみると、Wikipedeiaでは、複数の作業を同時もしくは短時間に並行して切り替えながら実行することとされています。(参照:Wikipedia-マルチタスク(心理学))
これが一般的に理解されている定義だと思いますが、個人的には違う定義でマルチタスクを理解しています。
その定義は、「大量もしくは短期間で処理するべき複数のタスクを抱えていること」です。
仕事ができる人は、常に僕の個人的な定義の状態であると思いますし、マルチタスクは不可避だと考えています。
ただ、一般的な定義と個人的な定義は微妙なニュアンスの違いなので、その部分を少し説明していきましょう。
マルチタスクは「無意識」がやってくれる
一般的なマルチタスクの定義は実際に「同時進行で処理すること」であり、僕の定義はマルチタスクを「抱えている状態」です。
タスクの量や期日感は同じですが、実行してるかどうか、状態を表しているかどうかの違いがあります。
マルチタスクを、一般的な定義である「同時進行で処理すること」しない理そもそも意識的なマルチタスクは不可能だからです。
人は、今この瞬間には1つのことしかできません。
というとウソになるので厳密に言うと、"意識的に行うことは"今この瞬間に1つしかできないということです。
今僕は意識的にこのブログを書いていますが、その間に呼吸を行い、瞬きをし、かゆみを感じた手をかき、(無意識に)コーヒーを飲むなど、ここには書ききれないくらいたくさんのことをしています。
「呼吸なんて当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、このように人が生きるためのタスクを勝手に「無意識」が実行してくれていています。
実は、人は常にマルチタスク状態なんです。
ただ、先に書いたように、今僕が意識的にブログを書くという1つのことをしているように、意識的には1つのことしかできません。
あくまでマルチタスクを実行してくれているのは無意識です。
これが、マルチタスクを「同時進行で処理すること」という定義にしていな理由です。
また、不可能でありながら同時にタスク処理しようとすると、脳の処理能力が低下することがスタンフォード大学のクリフォード・ナス教授の研究で明らかになっています。(参照:innova-マルチタスクが脳や仕事の効率に悪影響を与えている)
複数のタスクを頭で抱えるのはやばい
では、僕のマルチタスクの定義である「大量もしくは短期間で処理するべき複数のタスクを抱えている状態」を、どのように管理し、処理していけばいいのでしょうか?
言わずもがなですが、これらのタスクを頭の中だけで処理しようとするのは無理があります。
人間の脳は忘れる天才です。
ドイツの心理学者エビングハウスが、時間の経過と人間の記憶の関係を調べ提唱した「エビングハウスの忘却曲線」という研究があります。
その結果、1時間後には56%、1日後には67%もの記憶を失ってしまうことがわかっています。(参照:留こみ-エビングハウスの忘却曲線で分かる、最適な復習のタイミング)
個人的にはもっと短時間に多くのことを忘れているという感覚がありますが、いずれにしても言いたいことは、人間は忘れるということです。
だから、大量のタスクを頭の中だけで処理するのは不可能であり、必ず抜け漏れがでてしまいます。
では、どうするかというと、外部の記憶装置を使うということです。
ややこしい言い方をしましたが、
・スケジュール帳に手書きをする
・スマホのスケジュールアプリやタスク管理アプリを使う
など、ツールはなんでもいいので、とにかく自分の脳以外に「記録」することが必要です。
記録する際には、タスクの納期と、それを見ただけですぐに実行できるレベルに細分化することがポイントです。
ただ、タスク管理に時間をかけすぎることもよくないので、立て込んでいる場合はとにかく記録することだけはするということでもいいでしょう。
シングルタスクよりシングルフォーカス
先ほども書きましたが、人間は今この瞬間に1つのことしか意識を集中できません。
なので、実際にタスクを実行する際には「シングルフォーカス」が重要です。
今この瞬間は、1つのタスクを処理することに集中するということです。
次のタスクは記録をしているはずなので、気にする必要はありません。
そうすることで、生産性を上げることができます。
仕事ができる人は、同時進行で複数のことを処理しているように見えて、実は1つ1つ集中的に早く処理しているため、同時進行しているように錯覚してしまっている場合が多いはずです。
僕自身も、マルチタスクをはき違えていた時期があり、仕事が立て込んでいるときは家で食事をしながらパソコンを開いて情報収集したり仕事を進めていた時がありました。
しかし、仕事が立て込んでいるときこと食事に集中し、食べ終わってから仕事を進めると、とても仕事が捗り驚いたことを覚えています。
このように、仕事でもそれ以外でも「ながら〇〇」は生産性を下げてしまいます。
シングルフォーカスということを意識するだけで、「今この瞬間はこれに集中しよう」と考えやすくなります。
組織としてシングルフォーカスを推進した事例
最後に、僕が務めている会社でシングルフォーカスができる環境を整えた例を紹介します。
ただし、はじめに断っておくきますが、完ぺきなシングルフォーカスの事例ではありません。
ですが、初期投資をかけずにやり方を工夫することで改善できた事例なので、参考にしてみてください。
僕が務めている会社は商社で、未だに電話注文が多いです。
電話以外のメール、FAX、チャットツールなどでの注文を案内はしていますが、なかなか切り替わらない顧客も多いのが実情です。
電話は、いつどのタイミングでかかってくるかわからず、受注対応をしている内勤の社員は、電話が来るたびに今行っている仕事がとまってしまいます。
まさに、シングルフォーカスを邪魔する存在が電話なんです。
じゃあ電話注文を受け付けないようにするかというと、顧客が離れるリスクがあるため、一切やめるという選択はできません。
そこで考えたのが、電話に出る人を当番制にするという方法です。
優先的に出る人と、その人が出られなかった場合に出る人を決め、その役割を時間帯で区切って回すようにしました。
電話番ではない人は、集中して作業ができるようになり、データは取っていませんが、体感として処理が捗るようになったと実感されています。
発注システムなどの導入によって電話注文を減らすといった、設備投資によって環境整備はできるかもしれませんが、お金をかけなくてもこのような工夫で改善できることもあります。
なので、シングルフォーカスによって生産性が向上するという概念を理解し、どうすれば社員がその環境を手に入れられるかを考え、工夫すること自体が重要なことです。
ぜひ、参考にしてみてください。
まとめ
●マルチタスクとは
「複数の作業を同時もしくは短時間に並行して切り替えながら実行すること」が一般的な定義ですが、個人的には「大量もしくは短期間で処理するべき複数のタスクを抱えていること」と定義しています。
●ダメじゃない(というか不可避)
個人的な定義のマルチタスクは、ダメじゃないというより不可避です。
ただ、今この瞬間にタスクを複数実行することは、無意識の力を使わない限り不可能です。
また、頭の中だけでのマルチタスクを抱えることは人間の記憶力を考えると無理があるため、外部にタスクを「記録」することが重要です。
●シングルタスクではなくシングルフォーカスを
今この瞬間は、1つのことにしか意識を集中させることができません。
だから、記録されたタスクを頼り、今この瞬間は1つのタスクに集中して取り組むことが重要です。
それをシングルフォーカスと言います。
組織としても、シングルフォーカスの邪魔が入らないような環境を整備することで、組織的な生産性向上が見込めます。
シングルフォーカスという概念を理解することで、仕事への取り組み方や組織作りのヒントになるはずです。
ぜひ、参考にしてみてください。