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コンプライアンスは法令遵守(だけ)ではない

コンプライアンス(Compliance)を法令遵守と訳すのは誤訳!という見方があります。たしかにサラリーマンになってコンプライアンスときいて「ん?」と思った記憶があります。そんなコンプライアンスと出会った経緯からデメリット、そして今後について考えてみます。

コンプライアンスとの出会い 学生編

わたしは、学生時代にはじめてコンプライアンスという単語に出会いました。
機械工学、とりわけ材料力学を履修するとコンプライアンスがでててくるのです。ここでのコンプライアンスとは、物体の変形のしやすさを意味します。
「コンプライアンスとはばね定数の逆数」
と教わるのですが、なんのこっちゃというのがはじめての感想です。

のちに引張試験なるものを実習でやって、そこで教官から教えられます。
「コンプライアンスとは追従である!」
伸び計やひずみゲージを使わずに引張試験するとコンプライアンス補正を考えなければいけません。必ずしも荷重とひずみはリニアに追従しないからなんですが、
「なるほど、コンプライアンスは追従か!」
と思った記憶があります。追従という言葉をイメージできれば、コンプライアンスはばね定数の逆数と言われても理解できます。

コンプライアンスとの出会い サラリーマン編

清き正しいサラリーマンは、集合研修なるものを受けます。そこでいろいろ習いましたがいちいちよくわかりません。

CSR、ステークホルダー、マネジメント、etc

日本語でいうとなんなの?もうちょっとわかりやすく教えて!
とツッコミたくなりましたが、そこは気にしてはいけません。清き正しいサラリーマンは従順に覚えます、眠さと戦いながら・・・
なんとか研修を消化している最中にきいたことがある単語がひとつ。

「コンプライアンスとは法令遵守である!」

ん?なんで?
遵守は追従って感じがするのでいいとして、「法令」ってどこからでてきた?
ただもうめんどくさくなって、この時点で思考は停止しました。

コンプライアンスの英語での意味

英語の概念から日本語に訳すとおかしなことになることが往々にしてあります。
例えば「マネジメント」に関してドラッカーさんは

「マネジメントとは、事業に命を吹き込むダイナミックな存在である!」

P. F. ドラッカー 現代の経営(上) 

と言っていますが、
マネジメント=管理
とは言っていません。ダイナミックな存在!と言われてもよくわからないのですが、著書を拝読するとなんとなく言わんとしていることが理解できますので、おすすめです。

さて同様に
コンプライアンス=法令遵守
は正しいのかネットの英英辞典で調べてみました。
「ルール、合意、要求に従う」
なんとなく追従という意味がしっくりきます。例文を読んでも法令という単語が見つかりませんでした。英訳する際にわかりやすくするために法令遵守と意訳したのかもしれません。

https://www.ldoceonline.com

コンプライアンスを法令遵守と訳した罪

マネジメントしかりコンプライアンスしかり、英語と日本語のニュアンスの違いはたしかに存在します。マネジャー層が日本的な管理のみをすると効果があがらないように、コンプライアンスを法令遵守のみと考えるとおかしなことになります。極端な例は以下となります。

「コンプライアンスは法令遵守って意味だから、法律さえ守っておけばOK!」

そんなわけありません。そもそも法律は人間がつくったものであって、時代時代によって変わっていくものです。でないと法律の改正なんてありませんよね。ですので、時代に追従していない法律を守っておけばOKなんて考えてはダメだと思います。
法律は当然守ります。それは最低限度のやることで、コンプライアンスの本来の意味は、

「コンプライアンスとは社会変化に追従すること」

これが私はしっくりきます。みなさんのお考えはいかがでしょうか。


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