XR領域×コマースで新たな購入体験を提供する X,inc代表 米倉暁氏へインタビュー
こんにちは、MatchXRs 小磯です。
今回はVR技術を活用し、拡大するコマース領域で事業を展開されている、株式会社X代表の米倉さんにインタビューをしました。
リクルート在籍時代に立ち上げたドローンのレンタル事業(株式会社drone supply&control)を売却し、現在2社目の起業をされているシリアルアントレプレナーでもいらっしゃいます。
エンジニアからキャリアをスタートし、現在、数年先の未来を見据えてXR領域に参入されたお話は、既に業界にいらっしゃる方はもちろん、新しくXR領域に参入しようとされている方のキャリア選択にも参考にしていただけるお話が盛りだくさんです。
Xの事業内容
小磯:米倉さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、最初に事業のご紹介をお願いします。
米倉:『XR領域×コマース』をテーマに事業展開しています。
今までは、ゲームなどがVRの主力事業だったと思うんですけど、デバイスの普及なども考えると、今後はそれ以外の領域もマーケットとして成長していくと思います。
既存のゲームユーザー以外を取り込んでいくときに、実社会や実産業において役に立つようなコンテンツ制作を考え、その中で、もし実現できれば一番大きな市場になるのではと思ったのが、販売と販売促進の領域でした。
eコマースというと、実際のコマースのなかだと10%ほどしかシェアがなくて、それ以外は90%が現実世界での購買なんですね。
小磯:eコマースってそれだけしかないんですね。
米倉:日本だと8%、9%くらいのシェアで、eコマースの領域がすごい小さい。残りはほぼほぼ、現実世界で買われています。
かたや、グローバルになったときには、現実世界ではeコマースとは異なる購買体験もあると思っています。
現実世界にある体験というのは、ショールーミングといわれたりするものなんですが、フラッと歩いているときなどに、「あっ、こんなものがあったんだ」と手にとって、それをそのまま購入しているみたいな。
実はeコマースも、最終的に決済してたとしても、実は現実世界で何かこれいいなと思ってネットで検索して買っているというようなケースとかも多くあって
小磯:私もよくそうやって商品を購入します。
米倉:出口として、コマースやeコマースが使われてるっていうケースが多くありますよね、と。
そう考えると、ショールーミングのように現実世界と同じようなモノを探す、購入するなどのプロセスを経ることができれば、残りの90%の市場を狙っていけるんじゃないかと。
小磯:本当ですね。
米倉:ショールーミングをしてから、eコマースを行っているということを考えると、ショールーミングにふさわしいXR空間を作ることができれば、後続のコマース自体も抑えることができると考えています。
そしてそこを目指して、現在事業を展開しています。
小磯:ありがとうございます。
米倉:購入の定義は結構広いので、弊社ではこれを2軸に分けています。
一つは低単価・高単価という単価軸、もう一つは日用品・贅沢品という商品軸です。弊社が現在、メタコマースで提供しているのは日用品で最も低単価の本と、贅沢品で高単価の注文建築。
米倉:どっちがメタコマースで最適なのかっていうのを、別の角度でいろいろ検証しているというのが現状です。
デバイスの普及がいつになるかということ自体は外部要因なので、デバイス普及に依存しない形でゴーグルを店舗においたり貸出たりするビジネスモデルで注文住宅の方はビジネスを展開しています。
ゴーグル本当に普及していくフェーズ、要は波が来たときに我々は沖に行っておく必要があるので、今のうちからサーフィンのように、沖に行っていっているっていう感じですね。
小磯:わかりやすいです。
米倉:対照的な商材を扱っているので、視野が広くメタコマースを見ることができています。
小磯:そうなんですね。
確かに、VRって展開するときにコンテンツがハードに依存してしまう課題があるので、そこは今おっしゃってくださった内容やとっていらっしゃる対策は理にかなっているなと思いました。ありがとうございます。
XR領域で起業するまでのキャリア
小磯:前後しましたが、米倉さんの自己紹介もお願いします。
米倉:最初は4年半くらいエンジニアとして働いていて、その後、リクルートで営業・新規事業開発を行っていました。
小磯:そうなんそうなんですね。エンジニアだったのは知りませんでした。
米倉:そうそう。最初はコードを書いてて。ただ4年半やった結果、今でこそもしかすると一生エンジニアみたいな道もあると思うんですけど、当時は3、40代ぐらいになるとみんなマネージャーとかになって、管理職みたいな仕事してるなと。つまらなそうに見えたんですよね。
小磯:そうなんですね。
米倉:その時、人生やキャリアを考えた時に、やっぱり営業力が必要だねと思い「営業力っていえば、リクルートだ!」となって、安易な発想でリクルートに入ったんですよね。
小磯:最初にエンジニアのお仕事は別の会社にいらっしゃったってことなんですか。
米倉:はい、別の会社です。
小磯:そういうことなんですね。めっちゃ戦略的ですね。
米倉:戦略的なのかな、なんか行ったれ、って感じで(笑)。だから戦略的じゃないかな。
小磯:面白いです。最初はエンジニア、その後営業なんですよね、最強ですね。
米倉:そして営業を3年ぐらいやってたら、『New RING』という社内の新規事業開発コンテストで応募した事業案が採択されて、
「東京へ来い」っていう流れで、リクルートの新規事業開発室に行って、新規事業を作ることになりました。
小磯:元々東京にも違うとこにいらっしゃったんですか。
米倉:そうそう。転勤になって初めて東京に行きました。
東京へ来て、事業開発して新規事業を作るみたいな形でSUUMOの中で色々な業務をやっていました。
そして、新規事業やりながらなんですけど、あるとき、自分の力って何なんだろうって思うようになったんですよね。
小磯:ええ。
米倉:この事業が成長していってるのは自分の力なのか、会社の力なのかどっちなんだと。その時に働き方改革の一環で、副業もいいよみたいな感じの流れが来てて、副業なら100%自分でできるし、「やるか」っていう感じで副業を始めました。
副業で始めたドローンの事業を売却したハナシ
米倉:全て自分でやる新規事業を立ち上げられるかを検証しようと思いました。
当時のリクルートの副業禁止規定ってそこまで実は厳密じゃなかったんですけど、会社のやってる事業と関連するのは駄目だよっていうのがあったので、色々と調べてたら、ドローンの事業はリクルートがやっていないなって。
小磯:全体としてかぶってたら駄目なんですね。
米倉:そうそう。実際は少し違ったんですけど、そういう認識だろうなと思っていました。
ドローンはリクルートやってないしなってなって、これから成長しそうな分野を考えた時「ドローンやろう」って事業を始めました。
ドローンの事業で良いポジションを占めるのは何だろうと考えたときに、ドローン業界参入者が増えてくるので、じゃあその人たちに対して商売するっていうのが一番ビジネスとしてうまくいくなと考えました。
小磯:ゴールドラッシュのジーンズ売りみたいな感じですね。
米倉:そうですね。そこが商売の原則だと思っていて、そうなったときにやるのって3パターンしかない。
一つは機体を作る。でもこれ、本気でやらないと副業ではできないんですよ。もう一つが、機体を貸す。これが実際にやったビジネスです。そしてもう一つが、参入してくる人たちに対するコンサルティング(講習)をする。
私はオンラインレンタル×ドローンを選択したのですが、ドローンのレンタルってサービスとして使ってくれてたら多分、継続利用で何回か使ってくれるビジネスになるから、SaaSまで行かなくともある程度のストック型のビジネスになるよねっていうので、始めたのがドローンのレンタルビジネスだったんですね。
小磯:それが『ドロサツ!!』(株式会社drone supply & controlの提供サービス)やったんですね。
米倉:そうですね。労働集約型じゃなくて生産性が高く、副業でも成立するっていうところで。
小磯:すごい面白い。
米倉:そっから事業が成長して会社辞めて、事業が成長したから売ったみたいな感じですね。
小磯:だから、今の会社はもう2回目の起業ということですもんね。
米倉:そうです。
米倉:リクルートは外部株主が100%の労働者、次は100%自分が株主であるドロサツ。
小磯:100%自分が株式を持つのはどうでしたか。
米倉:レバレッジが効かないですよね(笑)。自分の資産が2倍、3倍に増えるだけ、みたいな。そう考えると、やっぱり外部の投資家を入れてレバレッジを効かせて、事業成長を加速させるっていうスタートアップを次はしたいなと思いました。
小磯:すごいですね、全部経験されてらっしゃる。
米倉:ドロサツはM&Aを出口戦略として最初から描いていて、IPOを目指してなかったので、完全に業務フローを決めて型化して、事業を安定して伸ばして売却するっていうストーリーラインでした。
小磯:そうなんですね。
米倉:戦い方が全然違うじゃないですか。
小磯:めちゃくちゃ勉強になります。米倉さんのインタビューされた記事は一応、2回ぐらい読んだんですけど、知らなかった話などもあって面白いです。
そして、今の会社はIPOを目指してらっしゃるんですね。
米倉:そうですね。
小磯:これは個人的な質問になるんですけど、やっぱり寝ても覚めても仕事のことを考えいらっしゃるのですか。
フェーズによってって感じですかね。そういう瞬間もあるし、そうじゃない瞬間もあるしって感じですね。
今はそういう瞬間が続いてる。でも休んでいる期間もありますね。
やっぱり、ある程度整理をするみたいな時間が必要になると思うんですね。ずっと考えて考えて考え続けるとゴールが出る時もあるしんで、ちょっと寝かして、というときもあります。そういうメリハリは意識してます。
XR×コマースで起業しようと思ったきっかけ
小磯:逆にXR×コマースにしようと思ったきっかけはなんだったんですか。
米倉:最初から産業系に行こうというのは考えていました。
本という商材を選んだ理由は、全く違う業界をすることで新たな発見があると考えたからです。注文住宅は前にやった経験があるので選びました。
取り扱う商材に関しては、本の場合、見てもらってから買うかを選べるものなので、最初からシンプルにコマースでした。ただ、注文住宅は「XR×注文住宅って何だろうね」という話をずっとしていて、最初はコマースじゃなくて、業務支援系のサービスだったんですよね。
そして、注文住宅に関しては、やり続けた結果、行き着いたのがまたコマースというか販売促進になったって感じなんですけど。
だから、偶然にも両方コマースに行き着いたっていう感じかな。
XR業界の今後について
小磯:XR業界の今と今後についてどう思いますか。
米倉:将来はすごいXRが使われるようになっていると思っています。
現状、ここ1年ぐらいの話でいくと、世間的に間違ったメタバースの認識がされているなと思います。
おそらく1年か1年半ぐらい経つと、80%以上の会社が間違ったメタバースに対する幻想というか、間違った経営判断をするんじゃないかな。
小磯:世間のメタバースに対する認識については、私も共感します。
米倉:実際にそこにマーケットはあるので、すごく難しいんですけど、とにかくユーザーによりそって正しくたどり着いた人だけが勝つっていうWinner takes All.の世界になる気がします。
小磯:そうかもしれませんね。でも、なぜARではなくVRを選んだんですか。
米倉:ARもVRもデバイス的に一緒。VR用で作っても、ARに応用できると考えています。
小磯:別にそこの所はこだわっていない感じなんですね。
米倉:そうですね。たまたま、現在はベースをVRで作っていますけど、ARグラスが普及したらARグラスにのせようと考えています。
小磯:その時にちょうどいいハードウェアがあれば、それを使うかもしれないって感じですね。
米倉:そうですね。
小磯:ありがとうございます。これも個人的に気になる質問なんですけど、NFTやCryptoなどとの親和性はどのように思ってらっしゃいますか。
米倉:親和性は高いですよね。そして、実在の電子データを扱うっていう文脈で考えると成長する領域だと思います。
小磯:私も同じ意見ですね。
米倉:ただ、何というか、今の発展の仕方としては、投機筋がすごい入っていて、投資ではなく投機になっているように感じます。
そこが投機ではなく、健全に投資になる世界って、どういう世界かっていうのはわかってない。まだ見えてないので、そこがメタコマースで作れたら面白いなと思ってますね。幻滅期に2022年に一旦入ってからが本当のビジネスですね。
小磯:やるとしてももう少し先の話かな、ということですね。
これからXR業界を目指す方へ
小磯:これからXR業界へを目指す方へのアドバイスをお願いします。
米倉:Unityを勉強したらいいんじゃないですかね。
小磯:エンジニアの話ですか?
米倉:はい。まずはUnityを勉強してみると、できることが広がると思います。
小磯:例えば、XRの業界に入りたいけど、私は別にエンジニアになるつもりではなくて、マーケティングとかセールスで関わりたいみたいな人とかは、どうしたらいいと思いますか。
米倉:それは誰でもなれるんじゃないですか。
小磯:そういうことですね。
米倉:構造的には何も変わらなくて、昔本の商材売ってましたって人はネットの商材売れるだろうし、その人たちがXRでその商材を扱ったとしても同じ。
商材に関してはその売り方自体の進化っていうのはあるとしても、業界にいる人で進化についていける人、というかそうしたい人が強い。
XR空間でも、マーケティング担当だったら、そこにも新しい配信するシステムができるわけだから、XRが特殊って思ってる時点で間違ってる。
小磯:ありがとうございます。
米倉:難しく考えすぎてるだけだと思います。要は、スマホをこう横にして持ってください。はい、XRですってだけなんで。
小磯:えっ、今どうやったんですか。
米倉:スマホのモニターみんなこうやって縦にして持ってるじゃないすか。これを目の前に横向けて見てくださいと。
小磯:こういうことですか。
米倉:そう、これがXRです。だから、モニターの見方が変わっただけだっていう話なんですよ。
iPhoneがiPadになりましたよっていうぐらい。そしたらiPad向けのアプリって言われますよねってくらいな感じ。そこに会話できて臨場感がすごくて体験価値が変わっていても、本質的には人×デジタルの延長線上にすぎない。
小磯:だから実はそんなに大差はないですよっていうことですね。特に何か別にこの業界に向いてる向いてないとかっていうのも、米倉さん的にはない。
米倉:全くないです。ただデバイスが進化しただけ。一緒です。
小磯:そうなんですね。
米倉:営業でもその業界で働いてたんだったら、使い方の提案がXRになるだけで、一緒です。業界知識をベースにして、使い方提案ができれば売れるねっていうような話だし、特殊なことは何もない。
小磯:業界を目指す人はとにかくUnityを触ろう、ということですね。
米倉:エンジンの場合はね。
小磯:要は今の話だったらむしろ、エンジニアしか、もしくはどの言語を使うかでしか変わりがないってことですよね。
米倉:そうです。エンジニアの場合は、ただ新しい言語を勉強しましょう。というだけです。
小磯:なんといいますか、自分の中でも新しい何か新しい気づきがありました。ありがとうございます。
米倉さんからメッセージ
小磯:最後に米倉さんからメッセージをお願いします。
米倉:弊社はXR以外の領域からみんな集まってきてるので、まだ少ししかUnityを触ったことがない方や、エンジニア志望ではなくてXRの勉強はこれからです、みたいな人もメンバーとして歓迎しております。
ゲームオタクみたいな人がいないんで、これまで業務系システムののエンジニアやっていました、という人でもぜひ来てください。
小磯:逆にVRによくあるゲームオタクみたいな人以外なんですね!
米倉:今までXRはそういう人しかいなかったんでね。ほぼほぼみんなゲームの世界に行っちゃってるんで。
うちはそうじゃない領域で挑戦してる数少ないスタートアップなので。もっと現実世界に即したビジネスをしています。XR技術を活用して、供にDXを実現します。という意味をこめて、X,incという会社名にしていますしね。
小磯:うちはビジネスするんや!ということですね、ありがとうございます。
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