組織開発、はじめの一歩 「教科書」を定めて学ぼう(2)
なぜ、今、組織開発なのか?
教科書は「組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす」(ダイヤモンド社、2018年、中原 淳×中村 和彦共著)です。
40年前にもあった組織開発ブーム
人事の業界では、組織開発が一大ブームとなっています。多文化共生のアメリカでは当たり前の組織開発、日本は大きく遅れて取り組み始めた感があります。
ところが、1960年代から70年代に掛けて日本でも空前のブームがあったそうで、実は今は二度目のブームとのこと。
そうなると、なぜブームは去ったのか?組織開発が日本に定着しなかったのか?
が気になるところです。
組織開発を正しい歴史の文脈で捉え直す
第一次ブームは、組織開発の全体像を理解しないまま、手法に走ったことで効果が上がらず、立ち消えになったようです。
現在の組織開発ブームにおいても、学問的裏付けを持たない断片的な手法を含めて組織開発といわれている現状があるようです。確かにSNSから垂れ流される広告にも組織開発の手法を紹介するものが沢山あります。その多くが学問的根拠を持たない聞きかじりの根無し草的手法だとすると、第2次ブームの行く末も見えてくる気がします。
しかしながら、高度成長時代の第1次ブームと違い、低成長・少子化時代の今、組織開発の価値は飛躍的に高まっており、この機会を逸することは比較にならないダメージを日本にもたらすでしょう。
今こそ、組織開発の源流であるジョン・デューイやフッサールの思想に遡り、その文脈の中で研究業績を相互に関係づけ学問の体系として正しく理解することが求められています。この教科書では、このことを「組織開発の正史を編み上げる」と表現されています。
少子高齢化という国難
日本の少子高齢化が、多の先進国を上回るスピードで進むことは、知識としてだけではなく、採用難など職場でも実感されるようになってきたと思います。残念ながら人口予測は半世紀ぐらいの間は的中してしまいます。人口減に負けず、経済成長するには、個人の能力伸長だけでは足りず、組織効率を高めることが必須となります。
少数派が多数派になる職場
ダイバーシティやインクルージョンが喧伝されています。
今まで日本の職場では少数派だった育児や介護しながら働く人、病気を抱えながら働く人、定年後も生涯現役を目指す人、外国人などが多数派になる時代がやってきます。
一見、良いことのようですが、価値観や生活文化の多様化は職場に遠心力として働き、まとまりを欠き力が分散して生産性を低下させる恐れがあります。いわゆるプロセス・ロスが増大し、ますます個人の能力開発だけでは対処できなくなります。
遠心力の処方箋としての組織開発
日本の企業にとって、多様な人材を取り込んで、事業を発展、継続させることは大切なことですが、多様化は職場には遠心力として働くことを自覚し、その対抗策を立てねばなりません。職場の遠心力を弱め、求心力を高めるには?組織開発の出番です。
本教科書では、組織開発を「遠心力によって分散していく組織メンバーの諸力を集め、workさせていくための求心力」と定義しています。
さぁ、学んで参りましょう。