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対偶って面白いかも
高校数学では論理についてきちんと学ぶ機会があります。それが「論理と集合」という単元です。ここでは、命題やその真偽について学んだり、必要条件や十分条件についても学んだりします。また、命題の逆・裏・対偶についても学習します。
この辺は数学というより論理学という方が適切かもしれません。もちろん、数学という言語(自然科学の法則を正しく記述するための言語)をきちんと扱うためには、論理について正しく学ぶ必要があります。
今回はその中の一つである対偶についてお話しします。
ある命題「pならばq」について、その対偶は「qでないならばpでない」です。で、ある命題が真であれば、その対偶も真になることが分かっています。確かに、命題「人間は、動物である」が真であれば、その対偶「動物でないならば、人間でない」も真になることはわかりますよね。
高校の授業では、対偶は証明問題や真偽判定問題を楽に解くためのツールとして使われることが多いです。でも、これで終わるのはもったいない。実は「もとの命題が真ならば、その対偶も真である」を利用して、日常的に現れる文章の対偶をとってみるといろいろと面白いことが起こるのです。というわけで、今回は数学的でなく世の中でよく話されている命題?について、その対偶をとると面白くなる例についてシーン別にご紹介します。
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シーン①【対偶をとっても傲慢さが変わらない例】
命題「の○太のものは、俺のもの」
日本一有名なガキ大将のセリフです。対偶をとると・・・
対偶「俺のものじゃなければ、の○太のものでもない」
もとの命題もその対偶も傲慢さにあふれていますね。さすがは日本一のガキ大将。
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シーン②【対偶をとってもさわやかさが変わらない例】
命題「つまらねえ冒険なら、俺はしない」
海賊王を目指す麦わら帽子の若者が発言したセリフです。対偶をとると・・・
対偶「俺がやるのは、面白い冒険だ」
つまらないという言葉の否定については異論があるかもしれませんが、未来の海賊王のセリフとしてはこのくらいが妥当でしょう。自分の気持ちに正直な人のさわやかなセリフは、対偶をとってもさわやかですね。
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シーン③【対偶をとると,普通すぎて面白くなくなる例】
命題「楽しくなければ、テレビじゃない」
バラエティ番組に強い某テレビ局が1980年代に出したスローガンです。とんねるずやナインティナインなどの芸人さんが大活躍していた時代に、このテレビ局を支えたスローガンですが、対偶をとると・・・
対偶「テレビは、楽しい」
なんとも普通すぎて、味も素っ気もなくなってしまいますね。これではテレビ局のスローガンにはならないなあ。
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シーン④【対偶をとると,態度が変わる例】
命題「お客様は、神様です」
昔、有名な演歌歌手が連呼していたフレーズです。今でもいろいろなお店の店長さんが丁寧な言葉づかいで言ってたりしますね。しかし対偶をとると・・・
対偶「神様じゃなければ、客じゃない」
すごく上から目線の店長に豹変します。大ヒットしたジブリアニメの中で、神様のためのお店でうっかり食事をとってしまい、罰として豚にさせられたお父さんとお母さんがいましたね。あの店の店長さんのセリフと思えば納得ですね。
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シーン⑤【対偶をとると,意味がおかしくなるかもしれない例(その1)】
命題「やればできる!」
いつもオレンジ色の服を着た芸人さんが連呼しているパワーワードですが、対偶をとると・・・
対偶?「できないなら、やらない」
あれ? 何か変ですね。すごくやる気を失った人みたい。
実はこれは対偶の取り方を間違っています。正確には、
対偶「できなかったならば、やっていないのだ」
とするべきです。これは正しい対偶の取り方なのですが、もともとは「やればできる!」という全力で励ましている言葉だったのに、対偶をとると、急に宿題ができなくて職員室で叱られている生徒のような気になって悲しい気持ちになりますね。
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シーン⑥【対偶をとると,意味がおかしくなるかもしれない例(その2)】
命題「叱られないと、勉強しない」
中高生にありがちなやつですね。ぼんやりしている子どもと、イライラしている保護者の姿が目に浮かぶようです。これも対偶をとるとおかしくなる可能性を秘めています。
対偶?「勉強すれば、叱られる」
そんなバカな。叱られないと勉強しない人が、勉強したら叱られるなんて救われない。もちろん、これも対偶の取り方、特に時系列を間違えています。正しくは、
対偶「勉強したのは、(過去に)叱られたからだ」
となります。これなら納得いきますね。
ああよかった。勉強したのに叱られずに済みそう。
いかがでしたか?
皆さんも、日常生活のいろいろな文章の対偶をとってみませんか? 想像以上に面白いことが起こるかもしれませんよ。