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放物線はどこにある?

 ほとんどの学校で高校1年生の1学期に学習する2次関数。そのグラフの形のことを放物線ということを中学校で聞いたことがある人も多いでしょう。実はこの放物線は、日常生活のいろいろなところに現れます。ここでは、思いつくまま日常生活に潜む放物線について述べてみます。

①物を投げたら放物線

 これは、その名のとおり放物線ですね。ボールを投げたときに,そのボールが描く軌跡が放物線です。右の写真のように,噴水における水の軌跡も放物線になります。このような線を描くのは,地球の重力に物が引っ張られているからだということはご存知ですよね。
 ちなみに,宇宙空間ではそうはいきません。宇宙空間では地球の重力の影響をほとんど受けませんので、物を投げるとまっすぐに飛んでいきます。そんな宇宙空間から帰還した宇宙飛行士が,投げた物が描く放物線を見て「放物線というのはこんなに美しい線だったのか」と述べています。数学や物理法則が描く放物線は,たいへん美しいものなのですね。

②光などを1点に集めるもの

 実は放物線には焦点というものがあり,右図のように,放物線の対称軸に平行にやってくる光や音は,放物線に反射して焦点に集まるという性質があります。それを利用したものが,パラボラアンテナです。パラボラアンテナは,放物線をその対称軸のまわりに1回転してできる立体(回転放物面)でできており,衛星などから送られてくる電波を焦点に集めて利用しています。写真にあるパラボラアンテナはたいへん大きなものですが,家庭のベランダ等についている衛星放送受信用のアンテナもパラボラアンテナです。そもそも「パラボラ」を日本語に訳すと「放物線」になるのですよ。

 他にも上図イラストのように,回転放物面に鏡を貼り,焦点の位置に鍋などをセットして太陽の方に向け,太陽光を焦点に集中させることで高熱を生み出して調理する「ソーラークッカー」というものもあります。野外で火を使わずに調理ができる優れものです。

③1点から光などを発して遠くに届かせるもの

 逆に焦点の位置に光源や音源などをおいて,遠くまで光や音などを届かせるものもあります。図のような懐中電灯や,自転車のライトなどがそれにあたります。焦点の位置に光源を置くと,光は回転放物面に反射して放物線の軸と平行に進んでいきます。特に,イベントや警備用に使用されるサーチライトは強力な光を同じ方向に発しており,回転放物面を利用していますね。

④他にもまだある放物線

 上の遊具はパラボラ集音器です。左の写真を見ると,写真の左端と右端にそれぞれ回転放物面があるのが分かります。これは,一方の放物面の焦点からその放物面に向かって話をすると,反射した音が反対側の放物面に届いて,反対側の放物面の焦点の位置にいる人に音声を伝えるものです。

 現在,この装置は公園にある大きな遊具や,博物館などにあることが多いです。普通に会話をしようとしても聞こえないくらい離れた位置にいても,この装置の両側にいる2人は普通に会話が可能です。2人とも放物面に向かって話をするので完全に反対側を向いたままの会話ですが、あまりにもはっきりと聞こえるので驚いてしまいます。

 上の写真は「イリュージョンセット」とか「マジックミラー」という名で販売されているものです。左の写真を見ると,小さなブタが器の上に乗っているように見えます。しかし,そのブタを触ろうとしても,そこにはブタはおらず,見えているのにつかめません。実は,見えているブタはホログラムであり,そこに本物はありません。

 この器具は,鏡を貼った放物面を2枚合わせたものになっており,本物のブタは下の放物面の底に置いてあります。そのブタから発せられた映像が上蓋の放物面の鏡に反射して真下に下がり,今度は底の放物面に反射して,その映像が上蓋の上の方に映る・・・というものです(右図参照)。ちなみに,下にいる本物のブタは上の放物線の焦点の位置にあり,上にいる映像のブタは下の放物線の焦点の位置にあります。インターネットで購入可能ですので,興味がある人は買ってみるのも面白いですし,ひょっとしたら数学の先生や物理の先生が持っているかもしれませんね。

 などなど,世の中には放物線があふれています。他にもまだまだ放物線が日常生活の中に潜んでいるはずですので,よかったら街を歩きながら探してみてください。
 なお,今回登場した放物線の「焦点」については,正式には数学Ⅲの教科書に載っています。数学Ⅲの教科書を持っている人はぜひそちらを見てみてください。

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