ニンプ無責任記録 ~もういくつ寝ると予定日~
産休に入って4週間が経った。
それはつまり、予定日まで2週間を切ったことを意味する。
今回わたしは無痛分娩を予定している。
それも完全計画分娩。
産院の先生があらかじめ分娩の日を決めて、それに合わせて入院日も決まる。
予定日より早くなにかが起こらないかぎりは、計画的に入院→分娩と進められる方法だ。
産院からの事前の説明では、予定日のひと月前くらいを目安に分娩日を決めると聞いていた。
が、2週間を切ったいまもまだ、分娩の日は決まっていない。
健診(すでに隔週から毎週になっている)で胎児の状況や子宮口の開き具合などを見ながら決めるのだが、先生曰く「ぜーんぜん降りてくる気配ないね」とのことである。
「いつ産まれるかぜーんぜん分かんない」、と。
ここにきて停滞である。
なんだいなんだい、なにをもったいぶっているんだい。
あれか、「分娩やだなーこわいなー会陰切開とかしたくないなー」とかグチグチ言ってたのが聞こえてたか?
己の言動を反省し、慌てて「あー早く会いたいなァ出てきてくれないかなァ」などとわざとらしく話しかけてみたりしている。
まったくゲンキンな親である。
経過自体はいたって順調だ。
胎児の推定体重は3,000gを超え、いつ出てきても問題ないサイズに育っている。
最後の採血だったB群溶連菌検査も終え、すべての検査を無事クリアした。
血圧・体重も日によって増えたり減ったりしつつ、許容範囲内で推移している。
余談だが、妊娠初期にあれだけ体重増加に厳しかった先生(※以前の記事参照)は、予定日に近づくにつれ少しずつ甘くなり、最近ではちょっと体重が増えても「気をつけなね」くらいですまされている。
健診中の様子にしても、前はぶっきらぼうで不愛想な物言いだったのが、胎児が大きくなるにつれ雰囲気がやわらかくなり、エコーを見ながら「ほーらかわいいでしょ」などと言うようになった。
このひとは本当に心の底から赤ちゃんが好きなんだろうな、と思った次第である。
さて、話を戻してお腹の子がなかなか出てきてくれない件について。
心当たりがひとつあるとすれば、近頃はお腹がますます重くなり、肺が圧迫されているのか呼吸も浅くなりがちで、ソファでごろごろ横になって過ごすことが増えていた。
ところが、陣痛を促すためには適度な運動が必要なのだ。
妊娠37週以降の正期産では、お腹の張りや子宮収縮は(適切な形であれば)望ましいもの。
己を甘やかしてはいけなかったかと反省し、今週からは毎日ウォーキングや家事で積極的に身体を動かすことにした。
猛暑の合間をぬって外を散歩し、お腹の子にも外界の気配を感じさせてみたりしている。
振り返ってみると産休ももう1ヶ月経ったのか。
前半の2,3週間ほどは、今しかできないからと言い訳してあちこち遊びまわっていた。
美術展に行ったり、映画館に行ったり、積ん読をどんどこ消化したり、友人とごはんに行ったり。
幼馴染がお祝いとしてプレゼントしてくれたので、マタニティフォトも撮ったりした。
先々週は、見たい展示があったので一人新幹線に飛び乗って日帰りで軽井沢まで行った。
絵本作家かこさとしさんの展示だ。
帰りに「からすのパンやさん」と、もう一冊、展示の中で知って印象的だった作品「かわ」を買って、産まれてくる子へのお土産もできた。
マタ旅の是非についてSNSで議論が紛糾したりもしていたが、さくっと新幹線で行って帰ってくるくらいは許されるだろう。
ついでに近くにあった軽井沢タリアセンに寄って、『思い出のマーニー』のモデルになったというヴォーリズ建築「睡鳩荘」を眺めたりして。
山の涼やかな空気を感じてたいへんリフレッシュになりました。
3週目くらいから、さすがにそろそろやらねばと出産準備も進めた。
入院グッズを買いそろえて入院バッグの準備。
ベビーベッドのレンタル、設置。
それからベビーグッズの購入。
アカチャンホンポに行って当座必要そうなベビー用品を一通り買いそろえたのだが、あまりに未知の世界すぎてびっくりした。
新生児に必要なグッズ一覧!みたいなメモを片手に臨んだのだが、当然のことながら店舗には様々な商品が並んでいるわけで、たとえば「肌着」だとか「おむつ」だとか「沐浴用ソープ」だとかのひとつひとつの項目に対して、数ある商品の中から「どれを買ったらいいのか?」がいちいち発生する。
そして、その比較検討に対してまったく手がかりがないのだ。
「これはなに?」
「メモにある〇〇ってのはここに置いてあるこれのこと?」
「調べてみないと分からんな」
「これとこれはなにが違う?」
「こっちには〇〇が入っててこっちには△△が入ってる。どっちがいいの?」
「これとこれで微妙に名称が違うのだけど同じもの?」
「なにが…なに……?」
ひたすらハテナの連続である。
こんなに正解の分からない買い物をすることなど、大人になってそうそうない。
たとえば何か新しいものを買うにしても、自分のことであればなんとなく感覚で判断したり、推測できることもあるだろう。
仮に判断を間違えたところで、我慢して使い続けることも、ちょっと失敗しちゃったねと言って買い直すことも大人であればいくらでもできる。
それが子のこととなると、なにが本人にとって最適解なのかまっっったく分からない。といって適当に買うわけにもいかない。
結果、グッズひとつ買うにもめちゃくちゃ考え込むハメになり、何度となく思考停止に陥る。
店舗を一周するだけでもえらく時間がかかって、疲れ果ててしまった。
これから先、こんな手探りと試行錯誤がひたすら続いていくのだろうな、と痛感した。
そうして苦労して買ったベビー服を、家に帰って水通ししたのだが、洗濯機から引っぱり出して干そうとしたところで、そのあまりの小ささにまた驚いた。
ふだん使っているハンガーで吊るそうとしたら、服が小さすぎてぱつんぱつんなのだ。
こんな小さい服を着る生き物がこれから生まれてくるのか、と思ったらめちゃくちゃ笑けてきた。
部屋の中にベビーベッドを設置してふとんを敷いたら、いよいよ家に新生児が来るという実感がじわじわわいてきた。
あと2週間、どんな気持ちで過ごすだろうか。
楽しみ半分、不安半分。
いずれにしても、自分の人生でまったく未知の経験になることは間違いない。
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