【実録】事件のあらまし8月6日【備忘録】
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泣いても笑っても明日が拘留期限の7日。今日は消化日という事で取り調べもなく、本を読んで過ごす。
私より先輩になる他の房に入っている人は起訴が決まっていて、裁判までここに拘留されるらしい。通常のフローでは拘置所だが、満員だとこういった処置になるそうだ。法務省管轄の拘置所にはエアコンがないので、ここの方がマシかもしれない。
普段からエアコンを使用しなくて、汗をかきたい私にとって、ここはただただ寒かった…これは何の罰ですかっ!
今日はここに入っている他の人たちについて話したい。ここでは時間が過ぎるのは遅く感じるものの、思い返せば早いもので2週間が過ぎだ。最初に入っていたイビキのおじさんが卒業して、随分と寝やすくなった。
イビキのおやじさんは、房の中を起きている間はウロウロして、ギシギシ音を立てている。何週間もいるみたいなので不安で落ち着かないのではなくて、運動不足解消のためなのかもしれない。
もう一人の先輩は先ほど紹介したように起訴されて裁判待ちのため、房の中でする事もなく過ごしている感じだ。漫画とかが好きなようで自弁購入しているようだ。官本には漫画は少ない。
年齢的には若い様で暴行事件を起こしたようだ。本人は無罪を訴えているが本当のところは何もわからない。私だってそうだ。刑事に無罪を訴えているが信じてくれるわけもなく、絶対に起訴ありきで取り調べは進む。
私が留置場に入ってからの入居者は2名で一人は恐らく女性、目に見えないところに隔離されるので声しか聞こえない。入ってきたときにはとにかく罵詈雑言で「薬でもやってるの?」ってくらいに怖かった。
数日後には落ち着いてきたけど、拘留延長の決定が出たときはキレルキレル!笑 そんなの既定路線なんだから弁護士と歩調合せて、自分の気持ちとは切り離して折り合いをつけていくしかないよ。
そして次の人は割と高齢なのかな?この人は明らかに問題がある感じ!だけど留置場の管理も酷い。この方は高齢のためか尿漏れをされる。もちろん差し入れでオムツを所望されているけれど、息子さんは休みが土日で差し入れはできない。
そこで国選弁護人に頼むけど、弁護士の仕事じゃないと断られ、留置場としては決まり通り差し入れを要求する。でもないものはない。だから、毎朝布団を汚して怒られている。
なんかおかしくはないかね?自弁購入でオムツを買えるようにしてあげて欲しい。大の大人がおねしょで迷惑を掛けて怒られるって最悪の侮辱だよ。人の子ならそれくらいわかりそうなんもんだけど、ルール順守はいいけれど悪いルールなら、すぐに変えなよね。問題あるのかね?
家族の写真も持ち込み禁止。なぜ被疑者の立場でそこまで自由が奪われ人権が著しく侵害されるかははなはだ疑問。目を閉じて家族の顔を思い浮かべようとしても写真に写った顔が思う浮かんでしまう。
それに写真って怖い。写真ってみんな笑顔を作るよね。反射的にそうする。
その瞬間楽しかったと刻みたいのかな。ただそういった写真ばかりを見ているとだんだんと記憶が改ざんされていく。その当時、その場が本当に和気あいあいとしていたかのような錯覚に陥っていく。
実際にはぎくしゃくしたり、いじめられていたり、愛憎渦巻いているかもしれないのにと。
それでも私はカメラを向けられたら笑うんだろうな。だけど将来のためにカメラに向かって笑う。未来の自分のために。
そして私は今この瞬間の絶望も愛憎も恐怖も諦めも笑顔の後ろに捨てて忘れていく。歳月というフィルターが全てを甘美な過去になるように。すべてが幸せだった記憶になるように。