オンラインツアー企画/造成の背景
当店では、2020年6月より地域に先駆けてオンラインツアーへの取り組みを開始しました。
オンラインツアーを企画した背景としては、やはり新型コロナウイルス蔓延とそれが長期化するであろうという予測によるものでした。
世界中の人々が、それまで自由に旅をするという当たり前の事が当たり前ではなくなってしまった情勢下で私共が観光事業者として提供できるサービスはないだろうか?と考えた結果、バーチャルで北海道/知床を体感してもらう「オンラインツアー」に行き着きました。
本来、旅の醍醐味は五感を使って楽しむものと考えており私共の既存リアルツアーでは、その五感を意識した各種ガイドツアー/アクティビティを提供しております。
しかしながら、オンラインツアーではバーチャルである以上その五感がスポイルされてしまいます。
私共は、それぞれのツアーに事前送付品を設定することで「触れる」「味わう」「創る」といった感覚を補完する工夫をしています。
例えば、冬季オンラインツアー「オンライン/流氷オンザロック」では、知床の海岸に流れ着いた本物の流氷(鑑賞用)と、知床斜里/来運神社湧水の氷(飲料用)を事前に送付して実物の流氷を鑑賞しながら知床の名水の氷でオンザロックを味わいつつガイドツアーを楽しむという流れを作り出しました。
また、現在は夏季のオンラインツアーとして「オンライン知床旅」を、催行しており網走の珈琲店ドリップバックと斜里岳の名水を事前に送付して珈琲をお客様ご自身で淹れてオンラインツアーにご参加いただいています。
その他、北海道の先住民族アイヌにスポットを当てた「オンライン知床とアイヌ文化」では、お子様から大人まで楽しめるアイテムとしてアイヌ紋様モチーフの野生動物塗り絵を送付しています。この塗り絵に色を付けて北海道の野生動物に命を吹き込む事で身近に感じてもらい北海道/知床への興味を引き立てる事を目的として企画したものになります。
こうした事前送付品による高揚感やわくわく感を、私共は大切にしたいと考えておりこれからも四季折々の企画を生み出していきたいと考えています。
オンラインツアーそのものは、私共にとって初めての取り組みであり身近なところに先駆者がいなかった事もありましたので当初は手探りで作り込んでいきました。
当初は、リアリティを追求しようとするあまり、リアルツアーの行程に沿った企画/進行を考えていましたがテスト段階でのトライアンドエラーの結果、通り一遍の所謂、「旅番組」になってしまう事に気がつきました。
そこで思い切ってリアルの行程を一旦度外視した上で私共の得意とする「ヒストリー」を中心に「野生動植物」「アイヌ文化」「季節」「産業」などを肉付けしていきそこに「各種観光スポット」や「グルメ」などの情報を添えていくという手法をとっています。
特に意識している事として「一方的な情報伝達」にならないようにしており双方向コミニュケーションツールzoomを使用すると共にその季節やお客様の年代などに合わせて知床や北海道、アイヌ文化にまつわるクイズを導入している他、北海道/知床にまつわる楽曲のピアノ生演奏などをツアーに盛り込む事で飽きのないメリハリの効いたオンラインツアーを作り上げています。
また、一体感へのこだわりとして「バーチャル記念撮影」や「バーチャル乾杯」などを通じて「ウエネウサル=アイヌ語で人が集まり楽しむ」な空間を作り出しています。
これらの取り組みによっておかげさまで個人様、企業団体様、学校団体様など多くのお客様をご案内させていただきました。
この状況下で修学旅行へ行けなくなった学生団体様、社員旅行へ行けなくなった企業団体様、知床への旅を断念された個人様、いづれもネガティブな気分をいかに楽しんでもらえるかという点にフォーカスしてご案内させていただいた結果、オンラインツアーご参加者様の実に38%もの方に実際にお越しいただきリアルツアーにご参加いただきました。
ガイドという仕事は、お客様に「無形」のサービスをホスピタリティ精神を持って提供し最高の「思い出」や「記憶」を残す事で対価を頂戴しています。そのプライドを持って取り組む限りオンラインであってもクオリティの高い企画を作り出す責任があります。
その為には、オンラインツアーとリアルツアーを比較するのではなく、オンラインでしか出せない世界観や価値を付与してサービスを提供していく事が必要になります。
例えば、リアルツアーでは当然、「そのフィールドを楽しんでもらう」事が前提となりますが、オンラインツアーでは「このフィールドに行ってみたいと感じてもらう」事が目的となります。
今は、情報過多の時代と言われておりネットや書籍で調べればありとあらゆる情報が手に入ります。だからこそ情報を伝える手段としてではなくあくまでも人基軸でコミニュケーションを重視したオンラインツアーを企画/催行する事にこだわっています。
そのこだわりを持ち続けてこれからも魅力あるオンラインツアーを作り出す事でファン化を目指し最終的な着地点としてリアルでお越しいただけたらこの上ない幸せに存じます。
知床清里町ウエネウサルみどり
菅野又康彦