どうにも救えなかった人の話
彼とは10年来の旧知の友であった
去年に罪を償って刑務所を出てきて、僕が保護することになった
いわゆる娑婆にかなり恐怖心を持って出てきた彼に対して、家賃も取らずに仕事と給料用意して社会復帰するきっかけを作った
はずだった
僕の本業の夜のお店が、店長のモチベーションがすごく下がっていてかなり売上が落ちていたので、経験者でもある彼を現場に一時的に入れた
あくまで利用するという観点と、社会復帰を含めての意味合いでだ
お店は売上が上がって数字上ではかなり満足のいく状態だった、しかしながら現場を見に行くとスタッフやキャストお店に感じる雰囲気はとてもネガティブなもので、すごく空気の重たいをお店になっていた
そのこともあって3ヶ月ほどで彼を現場から外し、僕の家に招き入れた
コロナということもあるが、彼は人と一緒に仕事ができるタイプではなく他人に対してかなり攻撃的な一面を持つ人間のため、他の現場に入れることも考えることができなかった
そのため彼は2ヶ月ほどニートの引きこもり状態を家ですることになっていた
僕は自分がその状態を作ったにも関わらず、何も変わろうとしない彼の姿に苛立ちを覚えていた
そして口を開けば入っていたお店の店長の愚痴や、自分がいないとあの店は潰れるなどと聞くに堪えない台詞を毎日聞いていた
にしても、身分証もなく住所不定の人間に仕事のあてが見つかるわけはなく、本当にずっと家にいた
市役所では何の身分証もないため、僕が代理人として保険証の送付先を、僕の住所にして送ってもらう手続きを取った
そして僕は東北の免許合宿の費用を払い、彼を参加させたのだ
無事免許合宿を終えて免許を手に入れて帰ってきた
のなら本当に良かったのだが
実際のところは入校してすぐの、仮免許に3回落ちて僕に報告もなく、東京に帰ってきていたのである
3回落ちて東京に帰らされることは、仕方のないことなのかもしれないが
実際は3回落ちてから自ら合宿所のスタッフに退学する旨を伝え、残りの合宿費用を返金してもらい東京に帰ってきていたのだ
これは彼から直接聞いた話ではなく、合宿所のスタッフが教えてくれたことである
なぜなら、そこからほぼ音信不通の状態が続いていて
俺はあなたのおもちゃじゃない感情だってある
やりたくないことばかりやらされて うんぬん
そんな LINE で終わったのだ
自分の関わり方があまり良くなく、否定的になっていたのも原因だと思うが、こんなに付き合いの長い人間に、音信不通や逃げられたのは初めてだった
けど謝りのメッセージを入れた思いっきり
また支払ってきた金額も大きかった
おそらく金額でいえば、今年に入ってから彼のために開店したお店があって3ヶ月でコロナもあって閉店
そこで600万円ぐらい突っ込んだ
生活費も家賃もとらず、給料は生活できる程度渡していたがいつも文無しだった
それが苦痛でもあったが、昔からの縁でやってやるのが当たり前と言い聞かせてきた
僕が世話をしてきた人間はほどほどに成功して、基本的にはお互い良い関係でいると思う
今回こういったケースは初めてだった
しかも最終的には噛みつかれたのだ
怒りを通り越してとても情けない気持ちになり、会わす顔はもう無いなという風に思った
本当に彼を保護してから、こういうゴールにするために頑張ってきたのかと思うととても悲しい気持ちにも思った
こういう感じで人は大事なものを失い、人の事を信じられなくなっていくのかなと
彼が、ダメ人間すぎて馬鹿にしまくっていた自分もいたので悪いとこはあるのだが、もう会いたくないと言うか自分の肩の荷物が一つ降りた気がして、楽になった
最後に言いたいのが彼は
前歯が虫歯でほとんどなかった
クレジットカードや携帯、すべてがブラックだった
たぶん自分で家を借りることもできない 家族とも絶縁
これを書いていて、救おうと思っていたのがおこがましいことだなと再認識できた
家族のつもりだったので自分に損があっても、我慢してきたが、去るもの追わず
このコロナで得たものも、失ったものも全て経験
いつもより少し貴重に思えるタイミング