割り算にもある交換法則
掛け算にはA×B=B×Aが成り立つ交換法則がある。これは、割り算で成り立つことはない。つまり、A÷B=B÷Aということは成立しないのである。
しかし、もし交換法則があるとしたら、どういうことになるのだろうか。
下の式を見ていただくと分かるかもしれない。
24÷6=4
ここで交換できるのが、商の4と除数の6だ。
すると、
24÷4=6
つまり、 A÷B=C A÷C=B
これは意外と重要な法則なのだが、初等教育では表立っては扱われない。
この法則を見つめると、実は割り算における等分除・包含除の関係も明瞭に見えてくる。
初等教育で行われる言葉の式を段階ごとに整理してみると、
①包含除
全体 ÷ 1つ分 =いくつ分
比べる量 ÷ 1あたりの量 =何倍
比べる量 ÷ もとにする量=割合
②等分除
全体 ÷ いくつ分 = 1つ分
比べる量÷ 何倍 = 1あたりの量
比べる量÷ 割合 = もとにする量
このように、基準量で割るのか割合で割るのかで商の意味が基準量や割合に変わること、そして、商と除数がそのまま入れ替わり、それにより意味もそのまま入れ替わることになる。
また、この法則を活用する場面もある。例えば、割合や速さの公式を作るときや約数において。
速さの公式であれば、まず分かりやすい掛け算の公式から、
道のり = 速さ × 時間
比較量 基準量 割合
これが分かれば、先程の2種類の割り算に当てはめて、
道のり ÷ 時間 = 速さ
比較量 割合 基準量
時間と速さの部分に交換法則が適用され、
道のり ÷ 速さ = 時間
比較量 基準量 割合
であることを即座に見出だせる。
約数を見つける際にこの交換法則を用いると、最大と最小が同時に見つかる。これは、暗に理解できた子どもは自然と使い出すことも多い。また塾などでは先に教えてしまうこともあるかも知れない。
32の約数で実演すると、
32÷1 =32
だから交換法則を活用して、即座に
32÷32=1
が得られる。同じように順に数を増やして、
32÷2 =16
32÷16=2
と容易に見つけていくことができる。
こうして見ていくと、この割り算の交換法則は実際にさまざまな算数の世界で息づいているので、子どもたちと共にこの法則を発見して使っていけば、深化・発展していくはずである。