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A denial!×9 grungy 新・世界秩序2(シン・セカイ)

前回のお話

サリランカーというのは、治安部隊の事。彼らが活躍する舞台は失われていた筈だったが、ペルディドスの顕在化により、生き残っている人々に知られる存在となった。
基本的には、ドロイドやドローンが実働しており、オペレーションもビハーバーが行っている。
それでも、人間が全く関与していない訳ではない。

ミフネ・レイこそが、サリランカーであり、ペルディドスに希望を託すビハーバーの裏切り者でもあるのだ。

「ティオーネ様が現れるのが現れるのが1週間後というのはどういう事だ?」

ジョセフ・カレハの額にはうっすらと汗が浮かんでいるのがミフネにはわかった。

「その帽子を脱いだらどうなんだ?暑いだろ?」

蕎麦を途中まで食べたミフネは煙草に火をつけた。

「食事中に煙草を吸うのはマナー違反だぞ」

「帽子を脱がないの事のほうが罪だ。あんたの住んでるところじゃ、タール羽の刑だろうよ」

破れたジーンズ、足元はジャックパーセル。そして長い髪。色あせるよりも燃え尽きる方がいいと思っているミフネは、ボロボロの服をわざわざ選んで着用しているわけではない。

「こういうやり取りは嫌いだ」

ジョセフが無益な会話を遮ろうとしたところ、ミフネは再び脳内へメッセージを送ってきた。

「ティオーネはサリランカーの目の前から消えた。恐らく、ハザマ時間に飛んだんだよ。お前達ならわかるだろ?同じ場所に戻るのは、7年後か7日後かのどちらかなんだよ。それで、必ず7日後の方をティオーネは選ぶはずだ」

人生とは今日一日のことだ。そして、疎かにした日々の瞬間の積み重ねは、禍という報いになる。誰かになりたいと思うことは、自分自身を浪費すること。それは、ジョセフ・カレハにもミフネにも当てはまる。

ティオーネが元に戻ったからとしても、ビハーバーには関係のない事。人間が出来事に意味を見出すには、人が創り出したビハーバーというマスターピースを超えなければならない。

ミフネはあからさまにビハーバーを裏切りながらも罰せられない立場にいる。すべてを知るようなビハーバーであるが、ミフネの事を誤認識している。それも『氣』の力なのである。『氣』とは想像を現実にする事。モニトレオがなくとも、イソラ・二ホン地区のごく少数の人間に伝えられてきた術。
時間に関する術をティオーネに教えたのはミフネであり、ミフネの祖父がモニトレオを開発し、父が普及させたのだ。

そして、孫であり、息子であるミフネ・レイは、ビハーバーを欺きながら、ペルディドスに情報を与えている。
そんな立場にいる彼であるが、サン・ジェルマンに疑念を抱いている。それは、ジョセフには勿論、誰にも言っていない。
最も重い罪は偽る事だ。楽しいかのように振る舞っていながら、本当のところ、恨みや嫉妬、復讐を考えて、人々を騙すことだ。
そう思い続けているが、証拠もなく、自分が確信していない事を言葉にするほど愚かな事はないとミフネは考えている。

「7日後か。わかった。これで、ザ・マンが実現できるだろうよ」

ジョセフは慣れない手つきで箸で蕎麦を持ち上げた。

続く

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!