創作:生まれて何日目でしょうか。
「俺、褒められたんや」
カネやんは、嬉しそうに言っていた。
どんなに年を取っても、褒められることは嬉しいんやろなと思いながらも、俺は蔑みの目で見ていた。
カネやんの声は、低くて小さい。俺は「はい?」と大袈裟な声を出して聞き直す事が多かった。
それも、カネやんの事を心の中でバカにしているから、俺はそんな態度をしていたんやと思う。
カネやんは帰ってくるのが一番遅い。
配達件数が一番多いわけでも、一番遠いところに行っているわけとちゃうのに、俺が戻ってくる時間に、カネやんがまだ会社にいる事が多い。
俺のシフトは午後便やから、俺達が一番最後になる筈。それやのに、朝4時出勤のカネやんが夕方まで会社にいるのはおかしい。
「いつも遅くまで大変ですね」
俺が戻ってきた時に、カネやんに声をかけた。
カネやんは、空になったダンボールを潰して、片づけをしているところやった。
俺は嫌味で言ったのかもしれへんし、カネやんに同情して言ったのかもしれん。
どっちでもええけど、俺はカネやんの事を舐め切っていた。そういう俺やって、若い奴にはそう思われているかもしれへんのに、年長者をバカにすることで自分がマシだと思いたかった。
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