独りで山
3連休などの、まとまった休みになると山へ出かける。そしてテントで夜を過ごす。
一人。虫の音。漆黒。
この時間が続く程、無心になれる気がする。
夏の終わりでも突然静寂が訪れることがある。
鳴いていた虫が一斉に眠りにつくように、ツッーと静まりかえるのだ。
耳が痛い。そんな感覚だ。
一種、神秘体験に近い。現に不可解な事が起きた。
ある夜。静寂の中、テントの周りを歩く音がした。動物だろうと思い、息を殺してやり過ごそうとした。
だが、それは1時間程、周りを歩き続けた。
そして
「アス カエレ」
と掠れた声を残して消えて行った。
その山は昔、女人禁制だった。
その後私は、山の謂れなどを調べてから入る事にしている。
一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!