見出し画像

人助け:頭ン中シリーズ

人助けいうのは、あんまり、せえへんねんけど、目の前で人が倒れよったら、まぁ、声ぐらいはかけるわ。
「大丈夫ですか?」
そう言うたんや。自分のことながら、感心したわ。こういう時って、体が動かへんもんやんか。あたしって、案外、お人好しやねんなって思ったわ。

せやけど、おばさんやな。倒れたん、おばさんやねんけど、意識無くなっとたんや。これは、「あかん」思たから、すぐに救急車呼んだった。

救急車呼んだ時に、ついでに「どおすればいいですか?」って聞いたんや。こん時も、自分が冷静なんにビックリしたわ。普通は、何も思う浮かばへんで。電話で、そんなん聞かへんって。非日常やんか。目の前で人が倒れてるって。

顔色が、悪いんやんか。ああいうのなんて言うんかな。黒っぽいねん。これは、死相いうやつちゃうんかな?って思ったんや。それに、意識ないやろ?心臓は動いてる感じやったけど。そんな事言うたわ。

「そのままにしてください。すぐに、救急車着きますから!」

正直、ほっとしたわ。人工呼吸とかすんの嫌やったし。
んで、ホンマ、すぐに救急車来たわ。

まぁ、それで、あたしの役目は終わりやと思うやろ?それが、ちゃうねん。

あたしもな、実は期待はしたんやんか。おばさんが、めっちゃ金持ちとかで、「命の恩人やぁ!」言うて、お礼とかもらえるんちゃうんかな?って思うやん?そういうの、普通やんか。
救急車に乗ってた、にぃちゃんに一応連絡先教えたんや。まぁ、半分以上は下心や。

んでな、次の日、病院から連絡あったんや。「昨日、搬送された患者さん、意識戻りました。容体は安定しています。つきましては、ご家族が、お話したい事があると、仰っているんですけど……」
あたしは、心の中で、ガッツポーズや。「ほな、一度、寄りますわ」言うたんや。

まぁ、あれや。「あたしは当たり前の事をしただけです」とか言うて、封筒を受け取らへん芝居とかも練習したわ。「いや。困ります」とか言うたりな。でも、渋々、「そこまで仰るなら、有難くお受けいたします」とかを言う流れを考えとったんや。

せやけど、ビックリしたわ。

「あんた。うちのおかぁちゃんに、怪我させたそうやな?」
やて。

これ、ややこしい奴やと思ったわ。関わったらあかん奴等っておるやん。理屈が通じへん人達や。

もうな、説明すんのめんどくさなったから、警察呼んだったわ。こん時も、「あたしって冷静や」って思ったわ。
まぁ、あれやな。人助けっちゅうのも、考えもんやで。



おわり

いいなと思ったら応援しよう!

中島亮
一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!