#ジャック・オー・ランターンになって一言
愚痴をこぼす晋三の全身から、鬱屈したドス黒いオーラが発生していた。普段怒りを表現する事がほとんどないのか、彼の振る舞いはぎこちない感じがした。
「なんでそんなに怒っている?」
あえて私は歯を見せて、晋三に根本的な質問をした。怒る事に慣れていない彼は臆病な飼い犬のようで、何かに遠慮しているようにも見える。
「俺は最低だな」
そう言ってから晋三は、赤いキャップを脱ぎ、髪の毛をかきあげて、再びキャップをかぶり直した。私は彼をどう扱うべきか決めかねている。
「ジャックはどうなんだ? 何が目的なんだ?」晋三は右手をぐるっと回すように自分の顎を撫でた。余裕があると私にアピールするような仕草。私は死体を挟んで、晋三と向かい合っている。
「この死体は誰だ?」
「審議官だよ。決まっているだろう?」
考えただけでも、惨酷な事だと感じるぐらいの良識は私にもある。だからこそ、私はあえて晋三に尋ねようと思った。
「晋三がやったのか?」
「間接的にだ」
こんな刺戟の前では、晋三の怒りに何の価値などない。私の好奇心は段々冷えてどうでもよくなった。晋三の格好は、有名なゲームのキャラクターだった。鼻の下に付け髭をして、青色のオーバーオールを着ている。
「他にもいるのだろ?」
「あぁ」
「それで何人死んだ?」
私はもっと温かい心で見なければいけないと思ったが、どうでもよくなった。晋三が何かを隠しているのは明らかで、彼は一人相撲をしている。私の眼が晋三の瞳を掠めた時、私は彼が醜いと思って引き金を引いた。
「ハッピーハロウィン」
私は誰も来ない事を知っていて、何も感じずにその場を後にした。せめて彷徨う事が無いように、蝋燭に火を灯して。
一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!