香りと紐づく記憶
例えば、仕事中に無理なことがあるとたっぷりつける。
理不尽な本社の連中や上司に対して、絶対この仕事を片付けてお前らを殺す、と思えるだけの余裕ができる。プレッシャーを緩めてくれて、前向きになれる。
好きな人に会うときにつける。
今夜はご飯を食べに行くから、腰と足首にそっとつけよう。今日観る映画には、きっとこれが合うな。場面や相手の顔を思い浮かべながら香りを選ぶ。
自分の気分も上がるし、「いい匂いだね」と言われた日には、もう無敵だ。
香りは力だ。
といっても、意識して香水を使うようになったのはここ1年ぐらい。持っている数もそんなに多くないし、蒐集家の人たちがするような耽美な説明はできないけど、私に寄り添ってくれる香りたち。長いです。
左から
1.Diptyque ドソン
一番好き。ここに写っているのはパルファンだけど、ロールオンフレグランスと練り香水も持っている。いつでもどこでもつけたい。
トワレとパルファンでは微妙に香りが違う。チュベローズ、ローズ、オレンジの葉、ピンクペッパー、ムスクが共通していて、パルファンにはオレンジの花とジャスミンが追加されている。私は、ジャスミンによってオリエンタル寄りになっているパルファンがより好きだ。
ベトナムの湾岸にある小さな塔に吹く風をイメージしているらしく、爽やかさの中に湿気を含んだようなクリーミーさがある。ちょっと気怠い夏の午後にぴったりだと思う。
2.同 フローラベリオ
初めて自分で買った香水。私をDiptyque好きにした1本。
つけたてはリンゴの花がメインで可愛い雰囲気。徐々に金木犀の柔らかい香りが漂って、これが本当に金木犀だからすごい。そしてほろ苦いコーヒーで落ち着いたあとは、華やかなフローラル。
リアルな金木犀と、コーヒーのアクセントがたまらない。金木犀だからやっぱり秋につけたいかな。けど春にもいける可愛らしさ。香りが飛ぶのが少し早いけど、そんなことは全く気にならない素敵な香り。
3.同 オーデサンス
今年の夏の暑さ、湿度を乗り切るために買ったもの。
つけたてはシトラス。オレンジの皮みたいな、少し苦味のある瑞々しさ。ラストはウッドとスパイスで少しお香っぽく、あたたかみのある香りになる。最初は「夏に向かないかな」とも思ったけど、このお香っぽさが、じりじり照りつける太陽のもとだとだんだん癖になってくる。あと気温と湿度によるのか?甘みを感じるときもある。
これはつけるときの状況でころころ香りの出方が変わるし、夏にも冬にもいける不思議な香り。飽きが来ない。
4.同 オレーヌ
大好きなジャスミンがメインで香る。
ジャスミンってそれだけだとあまりにも青臭いというか、ジャスミン茶を思い出してしまうけど、これはスイセンが入っているから、洗練されている。というか、花畑に頭突っ込んでるのか、というぐらい。最後はスイカズラの甘い香り。
ドソンもジャスミン系だけど、もっとどっしりと派手で、色とりどりの花が咲き乱れているような。オレーヌは白い花で、少しひんやりしている。
5.同 ゼラニウムオドラタ(手前の赤い瓶)
これはもう本当にゼラニウム。人によってはローズっぽいと感じるかもしれないけど、つけたところからゼラニウムが咲くような香り。そしてだんだんとピンクペッパーやシダーウッドが香って森の奥に入ったような感じがする。
少し男性的でつけたての香りが強いから、戦闘モードのときに力を借りる。
6.同 オーローズ(手前奥)
これは本当にローズ。
さっきから同じことばっかり言ってるじゃんと思われるかもしれないけど、ディプティックの植物の香りは本当にその植物そのもの。だからどんな香りも嫌味がない。バラの香りが苦手という人でも使えると思う。媚びないバラ。
これはあんまり香りが変わってる感じがしない。いくつかのローズを混ぜているらしいので、実は変わってるんだと思うけど。
中性的な香りが好きな私が持っている香水の中で一番女性らしい。
7.L'artisan parfume パッサージュダンフェ
かつてラルチザン〜の本社があったパリの「地獄通り」の名前を冠する香り。
つけたてはローズとジンジャーらしいけど、正直そんなに分からない。最初は「ん?」と思ったけど、次第に香るユリとインセンスが、凛としていて、静謐で、ここでやられた。名前とは裏腹に天国のよう。最後はウッドやムスクが香り、少しセクシーな印象になる。
冬の寒空に映えそう、と思って買った新入り。つけると背筋が伸びるような感じがする。
8.Penhaligon's エンディミオンコンサントレ
こちらも冬用に買った新入り。メンズだけど、苦さと甘さのバランスが取れた重めの香りがたまらない。
つけたてはラベンダーが穏やかに香る。セージやベルガモットのアロマっぽい青さも感じる。少しずつスエードとゼラニウムの強さが出てくる。最後はレザーでしっかり重いんだけど、インセンスやナツメグで少しまろやかな、甘さのある香りに。ほどよくオリエンタル調。
しっかりおしゃれやお化粧をしたときにつけたい。食事には向かなさそう。
はぁ〜さすがに疲れた。香水の世界は奥が深いよね。まだまだハマりそう。
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