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【青年海外協力隊ベトナム日記 2006〜08】 第24話 黒船がやってきた

私の住む町にコープマートが開店した。

コープマートは主にベトナム都心部をターゲットにしたチェーン店の大衆向け大型スーパーマーケットだ。

約1年前に市場の隣にコープマート建設予定地の看板が立ったとき、こんな田舎町にコープマートが進出してくるなんて冗談だと思った。
それからしばらくは取り壊し予定の建物も残ったまま放置状態が続き、やはり冗談だったのだと思っていたら、数ヶ月前から凄まじい勢いで取り壊し→更地→建設と工事が瞬く間に進んで先日ようやく開店した。

まさか自分がこの町にいる間に本当に開店するとは思っていなかった。

早速開店初日の夕方に行ってみた。

…革命が起こった。 

きれいな野菜やパックされた肉が売っている!(ハエがたかっていない!)
ケロッグのシリアルが売っている!!(以後毎朝の朝食となる)
マルボロが売っている!!!(残念ながら当時愛飲していたメンソールは無し)
ベーコンが売っている!!!!(ベーコンがこんなにおいしいものだったとは!)
出前一丁が売っている!!!!!(タイ製日清)
カップ焼きそばが売っている!!!!!!(ベトナム製エースコック)
グリコのコロンが売っている!!!!!!!(懐かしい日本のお菓子)

などなど、上記以外にもこの町では今まで売られていなかったものがたくさん陳列棚に並んでおり、さらに、本屋、ゲームセンター、カラオケ、軽食レストラン、服屋、時計屋などの店舗も入っており、まるで一大テーマパークの様相だ。

週末は家族みんなでコープマートだ!みたいな感じの古きよき昭和の香り漂う家族連れもたくさんいる。
おじいさんと孫が手をつないで、初めて接する都会の香りに戸惑いながらもわくわくしている様子などが伝わってきて実にほほえましい。

ついにこの町も都会に片足踏み込んだかと感慨に耽りつつ、ベトナム人の行動をよくよく観察してみると…

  • 前の人を押しのけて割り込み

  • ゴミをその辺にポイ捨て

  • レジの脇から逆流で入る

  • 店内なのに普通に喫煙

  • せっかくのきれいな陳列をぐちゃぐちゃにする

  • マネキンを倒してそのまま放置

  • 大声でケンカ

  • Etc…

阿鼻叫喚。
ここは動物園…?
やはりぜんぜん都会ではなかった。
中身は何も変わっていない。
まずはルールとモラルから学習しないと…。

面白いのでしばらく店内を見回る。

時計店でなんと神々しく輝くロレックスを発見。
こんな田舎のスーパーでロレックス!!??お値段750,000ドン。
やはりロレックスは高い。
…ん?ちょっと待て、一、十、百…75万ドン???
…ということは5,000円ちょっと!!??
…やはりニセモノだった。
路上の屋台(それも違法だが)とは違って、一応ここはしっかりとした企業なのだが、こんなにも堂々とニセモノを売ってしまっていいのだろうか?

本屋では昨年卒業した学生が店員をしていた。
先生になれなかったのでこの本屋に就職したとのこと。
忙しそうだったので少しだけ話してからその場を移動する。

その他にも学生や先生や知り合いなど多くの人に会った。相変わらず狭い町だ。

和気藹々(元気すぎる)とした雰囲気の中、みすぼらしい格好をした人たちがちらほらと目に付いたのが気になった。
煌びやかに並んだ商品や高級酒をしばらく眺めて、そして何も買わずに(買えずに?)去っていく。
今まではこの町には薄暗い市場しかなく、町中の人がそこを利用せざるを得なかったが、これからは多少金がある人はこちらのきれいなスーパーを利用することになるだろう。

今まで企業らしい企業など一切存在しないで、個人商売が中心だったこの町。
市場のおばさんたちや町中の商店などは、今まで大した営業努力もせずに適当な殿様商売をしていたけれど、ある意味それはそれで調和が取れていた。
けれどもこれからはそんな姿勢ではやっていけなくなるはず。
それに危機感を感じてサービス精神や、工夫、努力を学んでいってほしいが、この町の様子を見ているとそんなことはまだ望めそうにない。

どれくらいの個人商店が店をたたむことになるのだろう。
こうしてじわじわと持つ者と持たざる者の格差は広がっていくのだろうか。

将来的にどうなっていくにせよ、やはりコープマートの開店はこの町の歴史の中で大きなターニングポイントになることは間違いないだろう。

たかだか田舎町に大衆スーパーが開店しただけなのに、近代化の良い面、悪い面を垣間見た気がしていろいろと考えてしまった。

続く ↓

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