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【美術展2024#34】名品ときたま迷品@サントリー美術館

会期:2024年4月17日(水)〜6月16日(日)

「メイヒン」と聞いてまず思い浮かべるのは、国宝や重要文化財に指定され、その芸術的な価値の高さを誰もが認めるような「名品」ではないでしょうか。しかし「メイヒン」とは、それだけにとどまりません。これまでほとんど注目されず、展覧会にもあまり出品されてこなかった、知られざる「迷品」の世界もまた、同時に広がっているのです。そしてたとえ「迷品」とされるようなものであっても、少し視点を変えるだけで、強く心を惹かれる可能性を秘めているかもしれません。そうした時、「名品」と「迷品」を分ける明確な基準はないといえるでしょう。

そこで本展では、「生活の中の美」を基本理念とするサントリー美術館コレクションの「メイヒン」たちを一堂に会し、さまざまな角度から多彩な魅力をご紹介します。作品にまつわる逸話や意外な一面を知れば、「迷品」が「名品」になることも、「名品」が「迷品」になることも——目の前にある作品がどちらであるのか、それを決めるのは「あなた次第」。自分だけの「メイヒン」をぜひ探してみてください。

サントリー美術館
入口


鞠・鞠鋏 一組

《鞠・鞠鋏》 江戸時代

入場して最初に出会う作品。
蹴鞠&ホルダー。
今回のキービジュアルにもなっている。
鞠なんてただのボールなのだから別にその辺に転がしといたってよいものを、恭しくホルダーを用いて貴重な工芸品のように扱っている。
なんでもない物の中に価値を見出し大切に扱う。
コレクター心をくすぐるそんな感覚が好きだ。
鞠鋏は各種家紋のデザインソースにもなっている。
脈々と続く日本人のデザインセンスや美的感覚は素晴らしい。


浮線綾螺鈿蒔絵手箱

国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 鎌倉時代
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サントリー美術館所蔵品唯一の国宝。
北条政子愛蔵の7つの手箱のうちの一つとのこと。
ルイ・ヴィトンのモノグラムの元ネタになっているとされる日本の工芸品のルーツを紐解くとこの辺りに辿り着くか。
ストーリーも深いが何よりも細かい螺鈿細工が施された「物」としての魅力が素晴らしい。


南蛮屏風

《南蛮屏風》 伝狩野山楽 桃山時代
史料的な価値も高い

この時代の外国人(特に欧米人)なんて今なら宇宙人のような存在だったろう。
なんの情報や知識もない状態での初期の異文化交流はどんなものだったのか現場でそのやりとりを見てみたい。


白綸子地花束立涌模様打掛


《白綸子地花束立涌模様打掛》 江戸時代

写真だとその魅力がいまいち伝わり難いが実物は相当に手が込んだ逸品だった。
光のあたり具合で見え隠れする地紋や紋様が美しい。


薩摩切子 藍色被船形鉢

《薩摩切子 藍色被船形鉢》 江戸時代

正面に翼を広げた蝙蝠が。
形のデフォルメセンスが素晴らしい。
日本古美術はジャンル問わず細部の徹底したこだわりの中に、愛嬌や遊びがある部分を感じられるのが楽しい。


飾枕(籠枕)

《飾枕》 江戸時代
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細部まで精巧な細工が施される。
しかし昔の人はこんな高くて硬そうな枕でよく寝れたな。
中年の私が使ったら一晩で首が逝きそう。


今展はサントリー美術館のいわゆるコレクション展なのだが、ただの「常設展」とか「コレクション展」などと終わらせずに、タイトルや企画の工夫次第で如何様にも魅力を作り出すことができるのはマーケティング力のなせる技か。
ある意味コレクション展こそ学芸員の腕の見せ所だ。


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