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ギターの神はかく語りき (6)
果たしてツンツンとモミアゲは俺の曲を気に入ったようで、即興でドラムとベースを合わせてくれた。
ツンツンはバスドラを激しく踏みながら高速ドラミングを行い、モミアゲは低音のボリュームを上げてうねるようなベースを披露してみせた。
そういやこいつらのこんな音、あんまり聴いたことないな。
3人で盛り上がっていたら、それまでいやに静かだったイケメンがキレた。
「やめろ!!」
突然の大声を叩き込まれ、電源の入ったマイクスピーカーが盛大にハウリングした。
俺たちはその場に固まった。
イケメンは、眉間に深い皺を作り、切れ長の目を血走らせていた。
整った、ひたすら涼しげな顔はそこにはなかった。
「だからそれをやめろって言ってんだ!オレが目指す音楽はそんなのじゃない!
スタイリッシュでクールでポップ!それでこそみんなを喜ばせられるんだ!
綺麗さの欠片もない蛮族みたいな音楽がやりたいなら余所でやれ!」
「ご、ごめんよー…」
ツンツンは今にも泣きそうな表情。
モミアゲもすっかりでかい図体を丸めている。
俺は呆然としてしまった。
…まあ確かに調子に乗りすぎたとは思う。
だが、楽しくやって悪いことなんてあるのか?
音楽が特別好きなわけでもない俺が言うのも変だけど。
そんなようなことを言おうとしたが、なんだかもう面倒になってしまった。
「あー、期待に添えなくて悪かったな。もっと綺麗に弾けるギタリストを見つけろよ」
淡々とギターを片付け、俺は防音室を出た。
退室間際、視界の隅をツンツンとモミアゲの悲しそうな顔がよぎっていった。
虚無的な気持ちのまま、俺はスタジオを出ようとした。
その時だった。
「ねえ」
突然、女の子に呼び止められた。
俺が女の子に声をかけられた?
長い黒髪に混ざる赤いエクステが綺麗な、見知らぬ女の子に?
もしかして俺のファンか!?でもギターケースを背負ってる…?
「アタシとバンドやろ!」
突然のスカウトに、俺はフリーズした。
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