非常に個人的な「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」の感想
WOWOWで放送された?ている?スピッツの映像作品「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」を観ました。(以下いわゆるネタバレがありますので、気にされる方はここでストップしてくださいませ。)
「優しいあの子」の舞台になった土地であること、歴史的建造物での演奏、それだけで期待値が上がるというか、どういう映像になるんだろう?どういうライブになるんだろう?というドキドキしちゃうわけですが、いざ蓋を開けてみたらレア&スペシャルのオンパレード。
ビジュアル部分に関して言えば、事前に告知用の写真やティザーなどで少し予習できていたのだけど、いきなりビビるのは音の鳴り方。いわゆる大きな音で演奏されることを想定されてない造りになっているので、すべての楽器(特にドラム)がグワングワン鳴る。
おそらく教科書的な良い音か悪い音かで言えば、あまりよろしくない音と言ってもいいかもしれないけど、それがとても新鮮。楽器の音が吸音、整理されず跳ね返りながら爆発してる感じ。
言葉で表現するのが難しいんだけど、僕の経験値で行くと十三ファンダンゴでライブ観てる感覚に近いというか。あの「・・・なんかこれヤバいもの観てるぞ」とゾクゾクする感じ、、、伝わりにくいぜ、、、。
とにかく今まで聴いたことないスピッツの音が鳴り出したことに感激。「つぐみ」をこんな音で聴けるなんて生きててよかったよ。そして「つぐみ」自体が久しぶりにライブで聴けて幸せだ。何回でも観てられる。
さらに新鮮なのは特に前半、昼間の自然光だけで演奏されているので、照明効果のない中で展開されていくライブシーンでのメンバーの演奏している素朴な姿が最高。画面を通してでも伝わってくる4人+クージーの人としての魅力。顔がかっこいいとかそういう意味合いではなく、人間力がすっと伝わってくる感じ。あと言うまでもないけど改めて演奏が素晴らしい。技術も素晴らしいんだけど、それぞれにクセがあってそれが有機的に混じって生まれてるこのバンドだからこそのグルーヴ。一生観てられる。
構成も同様にレア。1曲1曲終わるごとにメンバーで会話をしてくれる。リハーサル風景を覗き見させてもらっているようなくすぐったい感じもあるし、なんというかこう、、、素敵な人間性がこぼれ出ちゃってるというか。脈絡がない会話だったり、曲名間違えたり、急に話が変わったりしてるんだけど、それがスピッツだって伝わってくるし、観てるとずっと楽しんでいられるという不思議な時間。来世まで観てられる。
極め付けは、この場所でやるというイメージで作られてるセットリストの妙。レア曲多めで、観てて心臓麻痺起こすんじゃないかってくらいドキドキしっぱなし。レアじゃない曲だって大好きで嬉しいってのに。
なかでも僕が嬉しすぎたのは、まず「今」。ライブでは一度も観た事がなくて、いつだったかテレビのライブ映像を一度だけ観た記憶があるんだどその時に強烈に思ったのが「三輪さんのギターソロがめっちゃかっこいい!」という事。今回のセッションでもギターソロがまさに炸裂していました。他の曲ではないようなハイボルテージなプレイに感動でございます。いつの日にかライブハウスで観たいです。
さらに「優しいあの子」の次にここで鳴らされることに大きな意味があるでしょう1曲「雪風」。きっとやってくれると思ってた!キャー!、、、おっと急に興奮しちゃった。でもそのくらい大好きな曲。
ただ、イントロのアルペジオが鳴り出した瞬間に違和感が??CD音源とはキーが違いました。この曲もライブではいつだったかのARABAKIにスピッツが出演した時にとおーくから観ただけだったので、ライブでキーを変えてるのわかってなかった。この辺もライブの醍醐味。ある意味CDと違うからこそライブだとも言えるのかも。
この曲の冷たい雰囲気というか僕の中で勝手にスピッツの中の「コンクリートソング」と呼んでるんだけど、このシーンに似合ってました。(ちなみに他のコンクリートソングは「夜を駆ける」とか「新月」とかです。)
そういえば「つぐみ」の歌詞が一部変わっていたんだけど、ドキっとしたなぁ。理由わからないけど、むしろ知らないままであれこれ勝手に想像させてもらえるのも嬉しい。
そして最新曲の「大好物」。これは皆さん異論がないと思うんですが、現在発表されているスピッツの曲の中で一番良い曲。というか宇宙で一番良い曲、間違いない。
映画タイアップで色々キーワードというか、ある意味制約がある中での曲だと思うんだけど、以前にも書いたけどマサムネさんはそういう方が曲が書きやすいとおっしゃってて、今回も映画のテーマとしてもバッチリだけど、スピッツの新曲としても抜群に機能している。歌詞もいいし、メロディーもいいし、コード使いもいいし、キーボードアレンジ&音色も素敵。これでまた新たな扉を開けてる感じビシビシ感じてる。今作のポイントは明るくてポップでキャッチーという事だと思う。こんなご時世だけどワクワクしてていいよって言ってもらえてる気がする。
「見っけ」以降の新曲がことごとく最高なので、アルバム期待しすぎてます。前作出てから3年目だし。(僕はこれまた勝手に「約束の3年」と呼んでいます。)
そして「ガーベラ」。この曲はライブで何度か遭遇しているんだけども、何回聴いても飽きがこない名曲中の名曲。マサムネさんの声って年々少しずつ変わっていってると思うのですが、この曲は年を重ねるにつれ歌の強さが増している気がする。昔よりハスキーな要素がとても曲に似合ってる。
そしてこの曲の三輪さんのギター。ギターソロから使われるE-BOWのプレイ。E-BOWって「ギターの音(サステイン)が永遠に続いて出せる」という嘘みたいな道具なんだけど、実際使うのは難しい。それをさらっと使いこなし、曲のエモさを倍増させてくれる。今回座って演奏されていたのも新鮮かつグッと来たなぁ。
ツイッターでも書いたけど、この映像で改めて感じたのは三輪さんの凄さ。ご本人も「アルペジオの曲が多いんだよ」っておっしゃってたけどアルペジオって例えるなら、歩くのを普通の道じゃなくて、一人だけずっと平均台の上を歩いていくみたいなくらい難しい事だと思うんだけど、平気な顔してあの美しいアルペジオを奏でられるって演奏技術レベルの高さはもちろんの事、一音一音の音の綺麗さがすごい。あんなにちゃんとひとつひとつの音をハイレベルで出せる人って他にいるのかね?うっとり。
スピッツの本で元々アルペジオが好きじゃなかったって書いてあったけど、スピッツのためにアルペジオを奏でて、それがバンドの大きな武器になっていったという、これもバンドストーリーのエモポイント。
それ以外にも「未来コオロギ」とか「Holiday」とかレア曲満載でありつつ、随所に組み込まれるシングル曲もストーリーの芯を作ってくれてるからトータルパッケージとしてまとまっている。宇宙が終わるまで観ていられる。
やばい、ここから以上の点を含めてこの映像作品全体をまとめての素晴らしさを書こうと思ってたんだけど、もうとてもとても長い。僕ですら読み返す気にならないのでやめておきます。誰かと今度直接お酒でも飲みながら語り合いたいです。
そのくらい素敵な映像作品でした。僕が言うまでもなくおすすめでございます。
あ、どうしても一点だけ。今日1日中仕事中にBGM的に音だけ聴きまくってて気づいたんだけど、もしかして意図的に最初はホールの鳴りを強調したような音になっていて、次第にその辺のミックスを変えて少しずつ聴きやすい音になっているような気がする。もしそれが本当だとしたらその辺のスタッフワークも最高でございます、、、スピッツって取り巻くスタッフも含めて最高なんですよねぇ。違ったらごめんなさい。あくまで個人の感想ということでご勘弁あれ。
以上です。
優しいスピッツ a secret session in Obihiro
https://www.wowow.co.jp/detail/174745
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