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行こうよ、いや。行ったよ、池袋!

結論、ボロ泣きしてしまいました。
「はるよちゃん、まりぃちゃんすごいなぁ、相当稽古重ねたんだろうなぁ。」という親心的(いいえ)な見方になるのかなと思ってた自分が愚かでした。
タイトルは吉岡大先生のキーセリフをお借りしました。ぼくも学生時代に行きたかったよ、全国!

前提

まず前提として、僕は身をやつしたと言って良いくらい高校3年間を『高校演劇』に打ち込んだ自信がある人間です。なので当然『幕が上がる』は履修済みでしたが、大学入学以降は舞台とはめっきり縁が無くなった(というか僕が離れた)ため、作品自体はもちろん、3年間を過ごした演劇部での仔細な記憶も薄れていました。だから割と今回は全てにおいて新鮮な気持ちで観られました。

舞台そのものの感想

まず、舞台全体の感想としては、原作よりヒューマンドラマ仕立てになっていたように思えました。
当たり前ではありますけど、原作よりもキャラクター同士のセリフ間や感情間での絡みが増えていて。
劇中のさおりの言葉を借りるなら「台詞が声になる」ことによって、観ている側に関係性が伝わりやすくなるし、説明が視覚に起こされることでイメージしやすくなる部分もあります。
そして何より大きく立ち現れていたと個人的に感じたのは、原作と舞台におけるキャラクターの『ズレ』です。
帰りの飛行機で改めて原作を読んで、そう思いました。
個人にフォーカスを当てますが、例えば陽世ちゃん演じるユッコは、原作での配役欄には『お姫様キャラ』とあてられていますが、作中では男性っぽい言葉を使ったりと、どちらかと言えば『ガサツ』『男勝り』というイメージが色濃く出ているように思えます。
しかし今回は『ワガママな女の子』という印象を前面に足出していた印象で、よりJKっぽく見えました。あとは溝口先生と吉岡先生。この2人については言語化が難しいけど、溝口先生は舞台の方が生徒たちに寄り添ってるような印象で、吉岡先生はその逆。
原作では吉岡先生が豪快に笑うシーンがあるけど、今回はそういったシーンはなく、あくまでクールで居続けた。
元々のキャラクターに固執するのではなく、そこに役者自身のエッセンスを加える。これらが演出家さんの意図したものかどうか、そして僕自身がこう感じたことが正解なのかどうかは分かりません。
あとは原作で描かれていた、枝葉の日常シーンが少なく『演劇部の物語』というところを吸い上げていたようにも感じました。
もしかしたらこれは全部不正解かもしれないけれど、僕は色々受け止めた上でそれが作用して『ヒューマンドラマ』と強く感じた気もします。

ヒューマンドラマで良かったのか

じゃあ僕がどこまでも原作になぞらえた形で観たかったかというと、決してそうではなく、これが『商業演劇』ということなんだろうなと思いました。
今回はアイドルが主演を務めたので「原作はよく知らないけど推しが出てるし!」「初舞台で初主演だし!」ってなって観に行かれた方も一定数いるでしょう。
いくら名作の舞台化とはいえ、実際僕も陽世ちゃん出てなかったら観に行ってないだろうし。
恐らく演出家の久保田さんはこういった層がいることも加味して、脚本も演出も味付けしたんじゃないかなあと勝手に思っています。
まず、溝口先生役になだぎさんをキャスティングしたのが本当に大正解だと思っていて、今回初めてなだぎさんの演技を拝見しましたが、悪い意味ではなく、今回顕著だったアドリブに加えて、細かい動きや言い回しで「客席に媚びる」のが本当にお上手で、これは長年の経験がなせる業なんだろうなぁと感服していました。「これ以上やるとくどくなる」というタイミングで笑いどころを収めるのが上手い。客席の機微な反応の揺れを感じ取っていらっしゃる証拠だと思います。
なにせ客席を掴まないと舞台がどれだけ感動するものだろうと意味がないと思っているので、今回のなだぎさんはそういう面でも大きな役割を果たしてくださっていたように感じました。
それでいて、今回の舞台はいやらしくないのが凄いところで、それはそもそもの「解像度の高さ」で中和していたからじゃないかなと。
原作の解像度の高さはここでは語るまでもなく、まず真っ先に思いつくのは、わび助役の宮本さん。本当に役に対する解像度が高くて、実際『地方の演劇部にいる有望なルーキー男子』って本当にあんな感じで。声色とか特に。あとやっぱり背が高いと舞台映えする側面はあるから、それも加わってガチの『地方の演劇部にいる有望なルーキー男子』に見えまくってました。あと宮本さんご自身は舞台のご出演が初ということでしたが、まだ信じていません(?)
次に中西さん役の浜浦さん。今回演じられた中西さんのようにエース級とされる子って難しい性格だったりするよなあとは思いながら観てたんですけど、宮本さん同様に「まさにそれ!」を演じてらっしゃって…。ただ難しい、触れづらいだけじゃなくて、何だかメンヘラ感漂う感じというか、まさに『あれ』なんですよ。
そもそも『高校演劇』に対する解像度が高い原作をさらに深く落とし込める役者陣がいればそら強いわなあ…。と思った次第です。

ちなみに、原作の時点で解像度高いなあと個人的に思っているのは
・役者をやる男子が少ない(ていうかそもそも男子が少ない)
・顧問が演劇素人の場合の部活の雰囲気
・吉岡先生が言い放った「高校演劇出身者は頭も身体も固い」
・2人上手い子がいればどうにかなる
・大会と入試が被っていたりすると考慮されたりする(実際僕もユッコと同じ状況で恩師K先生が熱弁振るってくれて大会も入試も参加できた)
などなど。

ヲタク的観点から。

ヲタクなので主演二人にフォーカスしたヲタク的な感想も書いておきます。
まず茉莉ちゃん。圧倒的なセリフ量と圧倒的な板付き時間。ぼくの記憶が正しければ高校演劇の大会用(1時間)の舞台で使う台本はA4用紙30枚くらい。単純に考えてその倍、商業演劇用の台本を見たことがないから分からないけれど。
それを集中切らさずに最後まで走り抜ける姿は感動の一言でした。どうしても途中噛んだりとかはあったけど、持ち直すとか以前にペースが全く崩れなかったのが本当に凄かった(本人的には崩れていたかもしれないけど)。
どうしても噛んだりするとペースが崩れて、早口になったり、酷い時にはセリフ飛んだりするけど、そこはさすがプロだなぁ。説明セリフと現実との切り替えもスムーズであの舞台における『髙橋さおり』を完璧に演じ上げていた。
そして陽世ちゃん、声に芯が通ってて本当に聞きやすかった。ただ通ってるだけじゃなくて「綺麗な通り方」でした。多分あの通り方ならマイクなしでもいけそうでした。あと記憶の中だと1回も噛んでない。
何よりジョバンニを演じる時の『ジョバンニを演じているユッコ』を届ける力が凄かった。劇中劇って個人的な感覚だと難しくて、今回を例に出すと『ジョバンニを演じる山口陽世』ではなくて『ジョバンニを演じるユッコを演じる山口陽世』にならないといけないので、段階が1個多くなるんですよ。だけどあそこまで落とし込まれた上で、カンパネルラとのラストシーン…。全僕が涙しました。
何よりカーテンコールでの大きく温かい握手を受けている座長2人と座組の皆さんを見て、めちゃくちゃ胸がいっぱいになっていました。本当に素晴らしかった!!!!!

最後に

舞台の感想や茉莉ちゃん、陽世ちゃん2人に対する感想を雑~に並べ立ててきましたが、ここまで読んでくださった方ありがとうございます。
物語序盤の吉岡先生からは酷く避けられそうなほどに、高校演劇至上主義な側面がある僕は、高校演劇を取り扱ったこの名作の主演に推しが抜擢されたことが嬉しかったけど、正直不安な面もありました。どの立場だよってなるけど。やっぱり高校演劇出身者って頭固いから()
しかしそんなの杞憂に終わりました。ヲタク的な視点を捨てて観ることができたくらい、素晴らしい演技を披露してくれて主演の2人、そしてそれを支える座組の皆様には感謝と尊敬の念でいっぱいです。あとこれで高校演劇について若干触れた人が多い気がするのも嬉しいんです。3年生は予選勝っても全国出られないなんて知られてないだろうし、ありえないもん普通。
この文章の9割5分は千穐楽前に書き終えましたが、温かく素敵な座組の皆様が、最後までやり遂げられ、この舞台が大団円で幕を下ろすことを祈るばかりです。
個人的には追加公演なんて決まって欲しいなあと思っていたり。だけど体調は崩してほしくなかったり。
何にせよこの感想は23日のリアミで直接伝えられたらいいな。
そして何より、推しメンがこれで舞台を好きになって、たくさん舞台に出てくれたらいいな。
やっぱり舞台っていいな!!また観に行きたいよ!

おわり

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