【最終稿】舞台『幕が上がる』観了。
ついに幕を下ろしましたね。
日曜日に舞台をこの目で観て、昂った気持ちそのままに帰りの飛行機で原作を読み返し、前の記事を書くに至りました。
さて、無事に千穐楽も迎え、昂りも少し落ち着いたのでもう一度原作を読み直し、アーカイブもチェックしました。
すると不思議なもので、前の記事で書き起こした感情や所感とは少し違う感じ方をした部分もあったり、まだまだ書きたいことが浮かんできたり。
きっと帰りの飛行機で原作を読み直したときは、舞台でも採用されていたシーンを集中的に読んでいたのでしょう。
そんな訳で書きたいことを沢山詰め込んで、これを最終稿とするつもりです。前の記事で触れた部分も多く触れるので、そこは太字にします。
原作と舞台
両方を見(観)比べて改めて思ったことは、やっぱり原作と舞台は別物であるということです。
原作で描かれていた枝葉の日常シーンは舞台では結構ばっさりとカットされていたように思えます。
まだ原作を読まれていない方もいるかもしれませんが、原作では吉岡先生がご退任されたあとに後任の副顧問の先生が着任されたり、中西さんが以前いた高校の顧問、平塚との絡みもほーんの少しあったり。
その他各々の家族に関するエピソードなんかも結構描かれている印象です。
今、例に挙げたようなシーンがなぜカットされたのか。
もちろん上演時間の関係はあると思いますが、それはまた別の話だと思っていて、恐らく原作よりも『青春』の密度を濃くするためだと思いました。前述したように枝葉の日常シーンは家族絡みだったり、結構本筋のストーリーを前に進めるものではなかったりします。
これはあくまで『商業演劇』。しかも今回はアイドルが初舞台で初主演という看板付きです。舞台に触れたことがない人も観に来ることは容易に想像が付きます。
だからこそ演脚の久保田さんは、あえて言うのであれば余計な部分を落として『青春群像劇』でしかない舞台、それこそ誰にでも感動が伝わる舞台を作り上げたかったのではないかと思います。アイドル×感動なんてみんな好きでしょ。特に日向坂のヲタクは。僕も好き。
僕は前の記事で『ヒューマンドラマ仕立て』と書きましたが、もしかしたらこれはどこまでも『青春群像劇』なのかもしれないと、今は思っています。
欲を言えば、明美ちゃんがさおりと中西さんに意見をする場面は少し観てみたかったなという気持ちもあります。
キャスティングの妙
さて、前の記事ではあまり触れなかった(触れられなかった)キャスティングについて、今回はしっかり触れていきたいと思います。
ただ、主観がゴリゴリに入ってきますので悪しからず!
全体的な所感
原作と舞台に『ズレ』があると感じました。それと、キャラクターに役者のエッセンスが少しずつ落とし込まれてる感じ。
でもそれはきっと全て『青春群像劇』に集約させるためかもしれません。
全員書いてるとキリがないので特に『キャスティングの妙』を感じたキャストだけをピックアップします。
ユッコ(山口陽世)
ユッコは原作よりも『お姫様感』が強めで、陽世ちゃんの愛らしいビジュアルと幼さの残る声(少し普段より高め:本人談)にピッタリな『ユッコ』になっていたと思います。
僕は観られていないけど、千穐楽に対する反応を見る限り『脚本を超えた』んだろうなと思っています。
役者はセリフやト書きの範疇で動くことが前提となっているのだけど、人間が演じるものだから、どうしても感情の昂りってあって。
それは基本的に表に出ない方が良いとされているけど、本番、それも千穐楽となるとそのタブーをひっくり返してしまうくらいの爆発を生み出します。
観たかったなあああああああ。
中西さん(浜浦彩乃)
舞台の方では言及されてなかったような気もするけど、原作の中西さんは『演技が上手い』という特徴に加えて『引き込まれる』というような描写が数回出てきます。
ではなぜ舞台ではその特徴について言及しなかったのか。
する必要がなかったからだと思います。
浜浦さんが放つ圧倒的なオーラが中西さんに乗り移る。特に目力が圧倒的。
「あ、この人違うな。」って高校生の中に居たら思っちゃいそうな。
あとエース級の人ってあんな感じで難しい性格の人多かったりするんですよね。
ただミステリアスでとっつきにくい感じだけじゃなくて、どこか漂うメンヘラ感。浜浦さん演じる中西さんは「まさにそれ」でした。
桃木わび助(宮本龍之介)
(前の記事とほぼ変わりません)
『有望な演劇部男子』ってまさにこれ!!!って感じのものを表現してくれました。声色、好青年が滲み出る喋り方、どれを取っても僕が高校3年間で見てきた『有望な演劇部男子』です。初舞台とのことでしたがまだ信じていません。
溝口先生(なだぎ武)
真打登場。僕が観た公演でのベストキャスティング賞です。
『客席に媚びる力』がずば抜けていたと思います。主演2人のファンが多く観に来ることを踏んでか、日向坂に関するネタや2人に関するネタを仕込んだり、くどくならないように笑いどころを収める力。この舞台においてなだぎさんしか果たし得ない大きな役割を果たしていたはずです。
あと、溝口先生周りとの関係性が原作とは少し違っているように見えて、原作と比べて生徒からの信頼度が高く見えました。
些細な違いかもしれないけれど、結束が強く見えてより感動が深まったり、何より原作のような関係性のまま舞台のような笑いどころを作ると少し厳しいというか「笑っていいのか…?」という思案が生まれるタイミングが来そうだなとも思いました。
好きなシーン
そりゃ~~~~、たくさんありますよ。
河原で大道具を燃やしている時のなだぎさんのアドリブシーン、地区大会での鬼気迫るまりぃちゃんの状況説明、張り詰めた会場に響き渡るジョバンニの「カンパネルラ!」などなど…。
でも一番好きなシーンは、県大会に進んだ場面で、3年生女子がホテルの部屋に入って広縁で喋っているシーンです。
それまで役者と演出家という関係性が長くなっていた4人。
役者と演出家ってどうしてもぶつかり合うときも出てきます。特にあの年代だと。
だけどなんの躊躇いもなく並んで座り、部長をイジり倒す。
そして誰一人恥ずかしがることなく、星空を見上げエモーショナルな空間に身を置く。
4人の絆、そして出来すぎなまでに作られた綺麗な空間。
胸が張り裂けそうになる、と同時にこんな青春の一幕を覗かせてもらっている幸福感で満たされました。
本当に素晴らしいシーンでした。
最後に
もしかしたら、まだ書きたかったことがあったかもしれない。
だけどそれは
また、いつか、どこかでこの舞台を観られた時まで取っておこう。
そう思っています。
皆はどこまでも行ける切符を持ってるから。
焦らなくてもいいんじゃないかなって。
余韻に浸りまくりです。舞台観てこんなに余韻が長いのって初めてです。
こんな文章書くのも多分相当だし。
願わくば追加公演や地方公演なんてあってくれたら。
この素敵な舞台が沢山の人に届いてほしいし、僕もたくさん観たいし()
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